第六章 夜明けの責任

――もう、戻さない。自分自身で後悔しない選択をする。


夜が明け始めていた。

胸の奥が重く痛んだ。

それは、世界を動かしてきた自分自身に対する罪の意識かもしれない。



遠くで光が生まれ、朱莉の声が風に混じる。

「あなたの願いは、世界の可能性を一つ増やした。

そして、その可能性が、ようやく形になり始めた。」



透香は静かに目を閉じた。

彼や朱莉と意見を交わし、時に衝突したが、

確かに未来を変えつつある。

眠気が波のように押し寄せ、

彼女はそのまま夢に落ちていった。



――白い海。

その中央に、朱莉が立っていた。

その輪郭はまだ人のかたちを保っている。

命と機械の記憶が混ざり合う、

そんな境界線上に朱莉は存在していた。



「私は……あの時、世界を戻した。

それが正しかったのか、今でも分からない。

あの選択が、誰かを救ったのか、

それとも、別の痛みを生んだだけなのか。」



朱莉は静かに首を振った。

「あの時、あなたが選んだから、この世界は今ここにある。

戻すことも、動かすことも、“生きる”の一部よ。

その選択があったから、私たちはこの場所に辿り着けた。」


朱莉は穏やかに微笑む。

「世界は、あなたの選択で完成する。

戻すことはもう必要ない。」



透香は静かに頷いた。

彼女は夢の中で、朱莉が光になっていくのを見届けた。

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