第35話 アーマリッシュ社

「アーマリッシュ、D-MALu支社にようこそ」

「ライバー、ハル&アキの秋津です。13:30の約束で、FTA部門の錦織さんとアポイントメントを取っています」

「確認しました。3番応接室にどうぞ。ご案内は必要ですか?」

「いえ、大丈夫です」


 ホログラムの受付嬢とアキ君が2,3やり取りをしてすぐに応接室に通される。何度か足を運んでるみたいでアキ君の応対は手慣れて落ち着いてる。君、本当に17歳?

 ほらぁ……ハルちゃんがキラキラした目してるよ?

 あ、だから頑張ってるのか!


 来客用スペースっていうのかな? 勝手に移動していい通路には学生服や、警察の制服を着たマネキンや会社の概要なんかが掲示されている。

 アーマリッシュ社は公務員や学生服の防具化を手掛けていて、着こなし着心地を維持したままダイブや万が一のダンジョン災に備えることが出来る衣服の開発製造、素材開発、技術開発をしている会社……ってことらしい。


「へ~学生服かぁ。縁が無かったんだよねぇ」

「言われてみればそうね……買う?」

「え~ただのコスプレじゃん」

「ポチさんは制服着られたことないんですか? 外国は制服が無いって聞いたことがありますけど」

「ん? あー、まー、そんな感じ?」


 アキ君の疑問に曖昧に返しておく。

 学校行ったこと無いっていうとまたややこしくなりそうだし日本には最近来たってことにしとけばいいよね。


 通路を進み指定された応接室で待っていればすぐに担当らしい2人の男女がやって来た。


「ハル&アキのお二人はお久しぶりですね。それとポチさんとヨウさんははじめまして。アーマリッシュ、フルタイムアーマー部門の錦織といいます」

「皆さんはじめまして! 開発・デザインの吉川といいます!」


 錦織と名乗ったのがいかにも「仕事? できますけど? できますけど?」なキリっパリっとしたスーツの男性。

 高身長、顔良、30代前半くらいでシゴデキというのが見た目から発せられている。

 

 吉川と名乗ったのはゆるいパーカー姿だけれどゲンキ溌剌とした若い女性。

 テンション高くキラキラとした目で、なぜかアタシをガン見している。


「早速ですが、今日はハル&アキのお二人はFTAブレザータイプのアップデート。ポチさんとヨウさんは防具の相談といった用件でよろしかったでしょうか?」

「はい。僕らもトーキョーダンジョンの30層を攻略したので、難易度を考えたらそろそろと思いまして」


 へぇ~ハル&アキはもう30層クリアかぁ。や、アタシはほぼ踏破したんだけどさ。ヨウも特に難易度はいじってないから10層ボスでくすぶっていたにしてはかなり早いんじゃない?

 元々実力はあったけど、初挑戦からイレギュラー続きで足止めされてただけだもんね。

 おまけに覚醒スキルに恵まれてトントン拍子。

 ライバーにしては慎重派過ぎとヨウは言ってたけど。


「君達は安全マージンをとるし、実力も申し分ない。被弾もほとんどしないから今の防御性能でも大丈夫だとは思うけど、やはりイレギュラーが心配かい?」

「そうですね。万が一に備えれたらと」

「では、そうだね……アラミドコートからのグレードアップとなるとミスリル糸を使った対物対魔両方に対応したミスリルコートになるね」

「アラミド? っていうと防弾チョッキとかの?」


 ポソっと漏らしたアタシの小声に錦織さんがすかさず反応する。


「えぇ、うちは元々防弾チョッキ用の素材なんかを手掛けていた会社なんです。ダンジョン時代に合わせて防具そのものも開発するようになりました」

「へぇ~、あ! じゃあアレはあるの? 防弾傘にマシンガンが付いてて防ぎながら撃てるやつ!」

「銃は付属していませんが防弾傘は製品としてはありますよ」

「お~!」


 スッゴいスッゴい! スパイ映画のロマンが現実に!

 密かに興奮しているアタシを尻目にパンフレットに目を通していたヨウが錦織さんに質問を投げ掛けた。


「こんなに薄っぺらくて防具として成り立つの? そりゃ破れにくい素材なんだろうけど」

「えぇ、企業秘密ではありますが、衝撃を受けた際部分的に硬化する機能があります。勿論分厚いプレートを用いた防具より幾らかは防具としての性能は落ちることは間違いありません。そうですね……金属鎧と皮鎧といって分かりますか?」

「えぇ、分かるわよ」

「我が社のフルタイムアーマーシリーズはどちらかというと皮鎧のように万が一の被弾に備えた防御性能と機動力を削がない軽量化を進めた防具になります」

「ふ~ん。見た目は? どんな風にもできるの?」

「はい、基本的には通常の縫製製品と同様に加工できます。またオプションとして、内側に着けるチョッキ型の薄型防具や外見を損なわない外観に外付けプレートを取り付け防御力を補強することもできます」

「私達もダイブ中はチョッキ型の防具も併用しているんですよ」

「なるほどね~」


 ハルちゃんが付け足したりしてヨウはまたパンフレットに目を通しながら「へぇ~」とか言ってる。その顔は上機嫌だ。


「ハル&アキの二人にはこれまで通り外観はブレザータイプ。素材はアラミドからミスリルコートにグレードアップ。インナーアーマーも同様に。それと反応硬化を強化することを提案したいが、大丈夫かい? 企業案件の報酬を差し引いてもかなり高額になるが……」

「あぁ、値段は気にしなくていいわよ。私が出すから」

「貴女が……ですか?」

「そ、まぁ心配しなくてもお金はあるから」

「ヨウさん……すいません」

「本当に良かったんですか?」

「先行投資ってやつよ。アンタ達なら配信でも稼げるし、あと数年して成人したら素材だって売れるんだし。今のうちに恩を売っておこうと思ってね~」 

 

 まぁ今のヨウは世界最強の資金力を手に入れたといっても過言じゃないからね。

 そんなわけでハル&アキのスポンサーとしてヨウが名乗りを上げたってわけ。

 アタシの友達だし、こうしてアーマリッシュ社に紹介もしてもらったしね。ヨウにはまだ思惑がありそうだけど。


「詳細はまた詰めておいてね。じゃあうちのポチの防具なんだけど……」

「ハイ! それは私から提案させていただきます!」


 ヨウが話をアタシ用の防具っていうかダンジョン服に切り替えた途端、静かにしていた吉川さんが食い気味に机に乗りだしパパパっと資料を手渡してきた。



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