40 両手をあげて腰を振れ!

【前回のあらすじ】

ルカが誤って酒を飲んでしまったことにより、魔法が暴発。太陽とルカの魂が入れ替わってしまう。

太陽はルカに元に戻すように言いつけるも、「発動から24時間経つまで絶対に戻らない」という、絶望的な事実を突きつけられるのであった。

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「ん。この魔法は、発動から24時間で元に戻る。けれど――24時間経つまでは、絶対に戻らない」


「はあああああ~~~~~!?!? 困るぞソレ!? じゃあ仕事どうすんだよ!?」


 発動者なのに、元に戻せないとか不便過ぎるだろ!?


「ん。時間経過で、元に戻るという〝制約〟をつけることで、それ以外の方法で、解除することが出来ない。それによって、術者以外の者が、強引に魔法を解除するの、防ぐ役割、果たしている」


「なるほど……ハンターハンターの〝制約と誓約〟みたいなものか」


「ん。呪術廻戦の〝縛り〟みたいなもん」


「どっちも一緒だろ」


 ルカの世代だと呪術の方がしっくり来るんだろうけど。

 面白いからルカにもアマプラでハンターハンターを履修して欲しいものだ。

 完結するまで作者の寿命が持つかは定かではないが……。


 しかし今心配すべきは、富樫の腰よりも俺達の肉体だ。


「それじゃあ今日1日、入れ替わったまま過ごさないといけない……ってコト!?」


「ん」


「仕事どうすんだよ!?」


 しゃーねぇ……体調不良ってことにして上司に謝罪するか。

 こんなのもう実質、体調の不良みたいなもんじゃんね。


「ん。たいように、これ以上、迷惑かけられない。自分のお尻は、自分で拭く」


「俺に毎日物理的にケツ拭いて貰ってる癖に何言ってんだ」


「ん! 最近は、1人でも、トイレ行けるようになったもん! ん! ん!」


 ――ポコポコ。


「分かった分かった! 分かったから――ごふっ!? ちょ、マジで待ってくれ!? この体格差で殴られるとマジで死ぬっ!?」


 普段は可愛らしいルカのポコポコパンチも、俺の肉体でやられると、ルカの肉体が脆弱なのも相まって、一撃一撃がボクサーのストレートのように重い。


 もはやポコポコじゃすまない。

 ズドンズドンって響いてるから。

 家庭内暴力DVになっちゃうから。


「はぁはぁ……死にかけた……で、それじゃあどうすんだよ?」


「ん。今日1日、たいようの振りをして、仕事する」


「ふ、不安しかない……!」


「たいようの仕事、毎日後ろで見てる、だから、大丈夫」


 確かに日頃からルカには仕事を手伝って貰っている。

 それに俺の仕事は、直行直帰の現場仕事。

 同僚に姿を見られることもない。


 なんとかなる……か?


「ん。そうと決まれば、仕事の準備、する」


「仕方ねぇ……背に腹は代えられない。頼むぞルカ!」


 かくして、俺達は明日の糧を稼ぐべく、朝の支度を始めるのであった。



***



「にしても下半身がすーすーと寒くてたまらん。よし、ルカの体にパンツの感触を慣れさせる丁度いい機会だ」


 朝食を食べ終えた俺達は、出勤の支度を進める。

 ルカは職場のユニフォームを羽織り、電動シェーバーでヒゲを剃っている。


 ヒゲ所か毛穴すら見つからないのルカにとって、電動シェーバーは新鮮な体験なのだろう。

 ルカは楽しそうにヒゲを剃っている。


 一方俺は、ルカの肉体にパンツの感覚を慣れさせるべく、押入れの奥に封印していたキッズ用パンツを取り出した。

 パンツの穴につま先を通そうとした、その瞬間――


「な、なに……!? 体が……動かん……!?」


 ――まるで金縛りに遭ったかのように、体が動かなくなった。


 ま、まさか……!?


「ルカの肉体の細胞の1つ1つが、パンツを履くのを拒絶しているというのか!?!?」


 くそう!

 股がすーすーして寒いのに!

 頭ではパンツを履きたいと思っているのに!


 肉体が、それを拒絶している!


「俺は今日……ノーパンで外出しなくてならないのか……!?」


 なんという辱めだ……。

 とはいえ、パンツを拒絶する行為が、魂ではなく肉体の方に宿っているのは――結果的に幸いと言えた。


 なぜなら――もし魂の方に宿っていれば、ノーパンになっていたのは日比野太陽のボディの方だからだ。

 ケツ毛を露出しながらトイレ掃除中をしている所を、駆け付けた警察官によって射殺されていただろう。


 俺(の魂)は無実なのに……。


「(なるほど……精神を入れ替え、入れ替え先の肉体で罪を犯すことで、対象に無実の罪を着せることも出来るのか……これは恐ろしい魔法だ……)」


 牢屋に投獄されようと、24時間後には元に戻るのだから――術者はノーリスクで政敵などを排除できるという寸法だ。


「ん。準備完了。たいようは、準備できた?」


「パンツを履いてないという点を除けばな」


「じゃあ、完璧」


「下半身丸出しが完璧であってたまるかよ……!」


 しかし今の俺は非力な子供。

 ルカの太い腕に引っ張られ、強引に外に連れ出されてしまうのであった……。



***



「しまった……足が……フットペダルに届かない……!?」


 現在時刻7時半。

 今から車を出せば、始業開始前に最初の現場に到着できる時間帯。


 車を出せれば――だが。


「ん。ぼくが運転、する」


「無理だろ!」


「ん。ぼくの身体からだで、運転するのも、無謀」


 愛車スズキエブリィの運転席に座った俺は、いつものようにアクセルを踏もうとしたものの……。

 小学生中学年程度の背丈しかないルカの短い足では、フットペダルに足が届かないことに気付いてしまった!


「っていうかそもそも、ルカの体で運転したら無免許運転になっちまうじゃねぇか!」


 まずい……!

 これでは仕事に間に合わないぞ!?


「ん。だから、ぼくが運転する。宇佐美ラビィのグラセフ配信で、車の運転、覚えたから、大丈夫」


「車の運転覚えるのに1番参考にしちゃいけねぇゲームじゃねぇか!!」


「ん。ぽりすが見てなければ、2人までは轢いても、おーけー」


「現実世界は1人でアウトなんだわ」


「大丈夫。星2までは、逃げ切れる」


「だから星1でアウトなんだよ!」


 ゲームと現実の区別がついていないルカに、運転を任せられるはずがない。

 しかしルカは強情に「できるもん!」と言い、俺の脇の下に手を入れ――ひょいっと持ち上げられてしまう。


 そのまま助手席へ座らされ、あっという間に運転席を奪われてしまった。


「そもそも運転方法分かるのか!?」


「ん。分からない。だから、魔法を使う」


「魔法?」


「ん。車をちょっとだけ浮かせて、そのまま水平に移動させる。たいようの世界でいう、念動力サイコキネシスみたいな感じ」


「ウィンカーとかテールランプはどうするんだ?」


「それも発光魔法で誤魔化す」


「ぐううう……く、くそぉ……それしか手はないのか……!?」


 未成年飲酒の次は無免許運転。

 もはやアニメ化は諦める他ないだろう。


「ん。出発前に、YouTubeで、だんさ・くどぅーろ、流す」


「せめてもっと大人しい曲にしてくれ~~~~!!」


「ら・まーの・ありーば!」



https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139843306571652



 かくして――スズキエブリィは加速もなしに、いきなり時速80キロ(!)で水平移動を始める。

 華奢なショタボディは慣性でシートに押し付けられ、俺の絶叫を置き去りにするように、スズキエブリイはアパートの駐車場からワイルドスピードで飛び出すのであった。





 果たして太陽達は無事現場にたどり着くことが出来るのか!?

 ドタバタ入れ替わり編――次回へ続く!!


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【あとがき】

ちなみに作者が1番好きな曲は、映画ポケモンの「ひとりぼっちじゃない」です。


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