18 あらゆる概念の掛け算を可能にする存在。腐女子

「ん! 美味しい!」


「良かったー」


 ――数十分後。


 夕陽の得意料理であるハンバーグが完成。

 ローテーブルを3人で囲んで昼食を摂る。



 ――ぽわぽわ。



 まだ箸の使い方に馴れていないルカは、スプーンでハンバーグを頬張ると、淡く発光している。

 どうやら夕陽のハンバーグはお気に召してくれたようだ。


 魔力を制限する例の手錠は、今は片腕に2つの輪を通してブレスレットのようにしているので、両手は自由だ。

 片手でも機能するなら最初からそう言って欲しかった……。


「いやー、未成年だから赤ワイン買えなくて困ったけど、お兄ちゃんの家にあってよかったよー」


 赤ワイン入れるだけでソースのコクが全然違うんだよね! ――と言いながら、夕陽も自分の分のハンバーグに舌鼓を打っている。


 毎日自分の弁当を作っているだけあり、夕陽の料理の腕は、会うたびにレベルアップしている。

 もう店出せるんじゃねーか? と思ってしまうのは俺が子煩悩ならぬ妹煩悩だからだろうか?


「ん。あれ……漏斗?」


「あっ! ルカちゃんも呪術廻戦知ってるの!?」


 ルカは夕陽が持ってきたカバンに、アクリルキーホルダーがついているのを発見する。

 にしてもアクスタのチョイス渋いな……。

 普通女子は五条とか伏黒とかだろ……。


「ちょっとお兄ちゃんに似てる所が好きなんだ~」


「似てねぇよ!」


 少なくとも髪の毛は生えている。


「ルカちゃんは五条×漏斗派? 漏斗×五条派?」


「……?」


「おいやめろ。ルカをそっちの道に引きずり込むな」


「いやいやお兄ちゃん、女子なんて潜在的に全員腐ってるんだから、早いか遅いかの違いでしかないよ」


「偏見すぎんだろ……」


 いや、俺は男だから真偽のほどは定かではないが。

 今晩銭湯行くときに番台ギャルに聞いてみるか?


 ていうかなんだよ五条×漏斗のカップリングは。

 あの2人敵同士だろ。

 存在するのかよ(※存在します)


「地下鉄の『五条悟! こっちを見ろ!』ってセリフ、絶対五条のこと好きになってるよね!! ね!!」


 なってないと思うよ。


 ガヤガヤと雑談を交わしながら、3人で楽しい食卓を囲んだのであった。



***



「ん。ごちそうさま……美味しかった」


「お粗末様でした」


 空になった食器をまとめ、台所へ持っていく夕陽。


「ん。洗い物手伝う。毎日やってるから」


「えー? 本当? 助かるなあ。じゃあ一緒にやろっか♪」


「ん。台持ってくる」


 共通の話題で打ち解け、ルカも完全に夕陽への警戒を解いていた。

 やはりアニメは偉大だ。

 外国人のみならず、異世界人とのコミュニケーションツールにもなるのだから。


「っていうかルカちゃん髪の毛すっごいサラサラで綺麗だね。羨ましいな」


「ん。毎日たいようがドライヤーしてくれる」


「…………。いいなー。でも私も小6までお兄ちゃんに乾かして貰ってたんだよ」


「ん。たいようはブラッシングもしてくれる」


「お兄ちゃんブラッシングうまいでしょ。私で練習したからなんだよー。それに学校行くときは毎日ツインテールに結んでくれたんだ。ルカちゃんは結んでもらってるの?」


「…………ん。結んでもらって、ない」


 張り合うな。


 おかしいな……。

 2人とも表情は穏やかだが、背中からにじみ出るオーラのようなものに不穏さを感じてしまうのは……気のせいだろうか?


***


 無事洗い物が完了し、その後はたわいのない会話をしたり、アマプラで呪術廻戦の鑑賞会などをして、ルカと夕陽の親睦会は続いていく。


「っていうかなんでルカちゃん、お兄ちゃんの膝の上に乗ってるの?」


「ん。アニメ見る時の定位置」


「えーズル。ズルじゃん。ズルの呼吸じゃん。ズル柱じゃん」


「ん。どこもズルくない」


「ちょっと詰めてよ。私も乗っちゃお♪」


「ぐえー」


「ちょ!? なんでそんな声出すの!? 昔は乗せてくれたじゃん!?」


「んなこと言ってもよ……お前もう高校生だろ……流石に重量が……」


「重くないんですけど!? ノンデリ男子とか今の時勢マジでナシだから気を付けてよね!」


 多分夕陽1人ならギリギリ支えられそうだが、ルカと2人まとめてだと、俺の膝がミシミシと悲鳴をあげてしまう。

 いつもより2倍騒がしい時間を過ごし、あっという間に夕方になった。


 楽しい時間は過ぎるのが早い。


「それじゃあ私、そろそろ帰るね。あっ、心配しなくても、叔父さん達にはルカちゃんのこと黙っとくから」


「ん。もう帰っちゃうの? 泊まれば?」


 帰りの支度をする夕陽のシャツを掴んで引き留めるルカ。


「あーもうルカちゃん可愛いなぁ! 妹が出来たみたい! 連れて帰っちゃおうかなぁ?」


「ん。夕陽の料理、美味しかった。もっと食べたい。毎日来てほしい」


「ちょっとルカちゃん、そんな顔するの反則なんですけど……ガチで連れて帰っちゃうけどいいカナ!?」


 夕陽はルカの上目遣いでメロメロになってしまい、ルカの華奢な体を抱きしめる。

 ルカの魔性によるものか、血が争えないのか、夕陽も完全にルカに堕ちていた。


「ルカちゃん、ウチくる!?」


「…………ん。それは、ムリ」


 ルカは夕陽の抱擁を引き剥がすと、テトテトと俺の膝に手を置く。


「夕陽のごはん、たいようより美味しい。でも、たいようと一緒がいい」


「…………そか。じゃあ、また遊びに来るから」


「駅まで見送るぞ」


「へーきへーき。まだ外明るいから! 冷蔵庫に煮込みハンバーグ作っておいたから、明日食べてね!」


 夕陽はそう言うと、ボロアパートを後にする。

 とても些細な変化だが、玄関を出る直前――夕陽の表情が少しだけ寂しそうに見えた。


 それは、ルカと離れることが名残惜しかったのか……それとも……。


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【あとがき】

今回のおまけAIイラストは、日常4コマ漫画です。


https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139841881220786

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