15 一周回って魔王がラスボスの作品って斬新だよな
【まえがき】
今回はギャグ回です。
ずっとしょうもない会話ばかりします。
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『魔王様~~♪』
甘ったるい女性声優の声が、スマホのスピーカーから流れてくる。
現在時刻は夜の7時。
銭湯で汗を流して、夕飯も済ませ、あとは寝る時間までダラダラとする時間帯だ。
ルカは俺の膝の上でスマホを凝視していた。
開けた窓から流れる夜風が、夏の匂いと共にルカの頭皮の香りを運んでくる。
同じシャンプー使ってるはずなのに、子供ってなぜか良い匂いするんだよな……。
スマホ画面を覗き込むと、アマゾンプライムビデオでアニメを視聴していた。
日本人の主人公が異世界の魔王に転生し、様々なヒロインとイチャイチャしながらチート無双する作品だ。
「面白いか?」
「ん」
この〝ん〟は肯定の意だな。
ルカは最近異世界アニメにハマっている。
俺達日本人が、ゲームや漫画で培ったファンタジー知識によって、異世界アニメの世界観をスっと理解できるように、異世界育ちのルカも、異世界アニメが馴染むのかもしれない。
『これからもお供します! 魔王様!』
主人公の魔王がヒロインから好意を寄せられながら、本編が終了。
エンディングが流れ出す。
ルカと一緒に見ていたが、結構面白かったな。
「ん。喉乾いた」
ルカは俺の膝から降りると、冷蔵庫を開けて麦茶のポットを取り出し、グラスに注ぐ。
ゴクゴクと、細い喉に冷たい麦茶を流し込むと、ルカは満足そうに戻ってきた。
「そういえばルカの世界の魔王ってどんな感じの存在なんだ?」
令和に突入した現代日本では、魔王が諸悪の根源だったのは昔の話。
今では主人公だったり、ヒロインだったり、良い奴だったりで、ラスボスというイメージは年々薄れている。
ドラゴンクエストのナンバリング新作が、8年近く出ていないのも原因の1つかもしれない。
8年て……ドラクエに一切触れずに育ったガキがいてもおかしくない年月だ。
スクエニには是が非でも12の開発を進めて欲しいものである。
「ん。1度だけ見たことがある……とても恐ろしい存在だった」
――ぷるぷる。
ルカは全身を震わせる。
それだけ恐ろしい存在なのだろう。
「あまりの恐ろしさに、おしっこを漏らしちゃった……でも、その瞬間ぼくの足の間に仰向けになってきたマルガレーテが、口を開けて、受け止めようしたときの方が……怖かった」
目の前に魔王が出現してるのにルカのおしっこ飲もうとしてるマルガレーテの胆力どうなってんだ。
魔王より
ルカはさっきより激しく全身を震わせ始めた。
尋常じゃない震え方だ。
相当なトラウマだったのだろう。
ルカはしばらく震えていたので、肩を抱いて慰めてやる。
しばらくすると落ち着いたようで、魔王について教えてくれた。
「ん。この世界の人にも分かるように説明すると、大きさはリンゴ1000個分くらい」
「なんでキティちゃん換算なんだよ。可愛くしようとすな」
「ん。東京ドームだと0.5個分」
「もっとピンとこねぇよ!」
「ん。この世界の長さの単位、まだ把握できてない」
「なのになんで東京ドームの大きさは把握してるんだよ」
「ん。この世界では、東京ドーム何個分かでサイズを現わすのが主流と聞いた。だから、頑張って覚えた」
確かに日本人は「なんと東京ドーム〇個分!」みたいなフレーズを好むが、実際の所それでピンときてる日本人はいないと思っている。
スマホで検索をかけると、魔王のサイズはだいたい100メートルくらいなのが分かった。
意外とデカいな……。
「魔王が腕を振るうと、それだけで数百体の魔物が召喚される。魔王を倒さないと、魔物は増え続ける。だから、魔王を封印する必要がある。それに、魔王が一声命令するだけで、魔物は一糸乱れぬ隊列で人類に襲い掛かる」
「ふむふむ……そりゃ怖いな……」
「顔は、鬼に似た恐ろしい形相。羽は、コウモリみたいな形。声は、大塚明夫似」
「渋いな!?」
確かに大塚明夫の声で命令されたら魔物も言うこと聞くわ。
カリスマ感凄いもん。
「ん。魔王は人を誑かすのもうまい。人類の重鎮も魔王軍に寝返ったことがある。それで都市が1つ陥落した。武力だけでなく、謀略にも優れた存在」
確かに俺も、CV大塚明夫に「俺の仲間にならないか?」と言われたらクラっと来ちゃうかもしれないわな。
「魔王の声カッケーな、ちょっと会ってみたくなってきた」
「ん。たいようの声も松岡禎丞に似て恰好いいよ」
「え? そう……なんか照れるなぁ……いや俺も結構良い声してるんじゃないかと思ってんだよなぁ……配信者とかやってみようかなぁ~」
「ん。悪役やってる時の松岡禎丞に似てる」
「そっちか!?」
いや、悪役演じてる時の松岡禎丞も良い声してるけどね?
つーか、松岡禎丞、主人公声も悪役声も出来るの本当凄いと思う。
是非ともアニメ化の際はご本人様にオファーを出したいものである。
「ん。書籍化すらしてないのにアニメ化の想定をするのは……不毛」
「うぐっ……耳が痛いぜ……」
「ちなみにマルガレーテは茅野愛衣に声が似てる」
「茅野さんにあんな変態を演じさせたら怒られるわ」
……いや。
……割とやってたな。
どのキャラかとは言わんが……。
いつの間にか声優トークになっている。
まあ、いつの間にか話題がそれで別物になっているのは、雑談あるあるだけども。
「ん。ちなみに、ぼくはどの声優に似てると思う?」
「え? あー、そうだな…………」
「中田譲治?」
「渋いな!? な訳ねーだろ! 序盤の性別詐称トリック成立しないだろそれじゃあ」
「ん。確かにちょっと似てる気がしてきた」
「お前と中田譲治さんの共通点ちんぽの有無だけだわ」
「ん……『令呪を以て命じる、自害しろランサー』」
「めっちゃ似てる!?」
「ん。これは声を変える魔法」
「そんな魔法もあるのか!? すげーな!?」
「ん。聞いたことのある声なら出せる。日本の永住権とれたら声優で食べていくのも悪くない、かも」
「なんで永住する気なんだよ」
魔力溜まったら元の世界に帰れよ。
それに声優の仕事舐めるな。
既存の声優の声が出せるだけで食っていける程、優しい世界じゃないんだぞ。
知らんけど。
「ん。たいようの好きな声優さんの声を出してもいいよ」
「え……そ、その……誰でもいいのか……?」
「ん。おっけー。久野美咲でも門脇舞以でも丹下桜でもいいよ」
「なんで全員ロリキャラに定評がある人選なんだよ。俺のことなんだと思ってんだよ」
「…………」
「なんだよその目は!? まるで俺が、お前の見た目が可愛い幼女だから引き取ったとでも思ってんのか」
「…………違うの?」
「違うわ!」
俺をなんだと思ってるんだ。
「ん。遠慮はいらない。日頃のお礼。ふくりこーせー」
「あー、いや……それでもいいわ。俺は、ルカの声が一番好きだからな。魔法なんか使わなくても声優になれるくらい、良い声だと思ってるからよ」
「…………ん///」
そう言うと、ずっとノリノリだったルカが急に黙り込み、こそばゆそうに頬を染めた。
「たいようがそういうなら……やめる」
……。
…………。
………………嘘です。
本当は小倉唯のボイスで「お兄ちゃん♪」と耳元で囁かれたいです。
でもそんなお願いをしようものなら、ルカに俺の趣向がバレてしまう。
ふーん、結局ロリキャラに定評のある声優さんが好きなんじゃん――って思われてしまう……!!
俺は小倉唯が好きなのであって、ロリコンという訳ではないのだ……!!
頼れる大人の保護者としての信頼を損なわせる訳にはいかない……!
まあつまりは――強がりだ。
いや、ルカの声を良い声だと褒めたことも、心からの本心だけどね?
「…………ん」
ルカは再びスマホを手に取ると、先ほどのアニメの続きを見始めた。
ただしポジションは俺の膝の上ではなく、畳んだ布団の上だ。
けれども、その日は寝るまで事あるごとに、意味もなく「ん……たいよう」と俺の名前を何度も呼んでくるのであった。
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【おまけAIイラスト】
ルカ「ん。ちなみに、本当はぼくの声、誰に似てると思ったの?
太陽「み……水瀬いのりさん」
ルカ「うるさいですね……」
https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139841695105983
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