03 ちんちんが生えていた件

「ちんちん生えてるから、たいようと一緒に入れる」


「……冗談だろ?」


「ん。ほんと」


 ルカはそう言うと……膝丈まであるポンチョの裾に手をかけて、持ち上げる。



https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139841012301595



「ワ、ワァ……!」


 びっくりしてちいかわみたいな声が出てしまった。


 驚いたことに、ポンチョの下に肌着をつけていないようで、下着も履いていなかった。

 つまりポンチョを持ち上げたことで、その下にあるルカの股間が丸出しになる。


 そしてそこには……ぷりぷりとした可愛らしい……ちんちんが生えていた!


 なんということだ!

 つまり男って……コト!?!?


 ぼくっ娘は伏線だったのかよ!?


「ん。これで一緒に入れるね」


「ぶっ!?!?」


 そして俺と一緒にルカの挙動を見ていた番台ギャルは、ルカのちんちんを見たことで鼻血を噴きだしていた。

 しかもめちゃくちゃ目をかっ開いて、眼球を充血させながらルカの股間をガン見している。

 この光景を脳裏に焼きつけようとするように。


 もしかして……ショタコン系の癖の方?


「ん。これでいい?」


「あ、いや……もうちょっと見て見ないと分からないっスね」


「あんたが見たいだけだろ!」


「ちょっとちんちんのサイズが条例を満たしてるか分からないんで、とりまサイズ測りますね」


「条例にちんちんの大きさは関係ねーだろ!」


 緩くなった口元から涎を垂らしながら、ルカの下半身に手を伸ばそうとするギャルの間に入りルカを守る。

 このギャル思ったよりやべーぞ!


「あっ! こらやめろ! ルカのちんちんに手を伸ばすな! ルカ隠せ! もういいからちんちん隠せ!」


 普段ダルそうな顔してとんでもねー性癖隠し持ってやがる!

 学校ではキラキラさせた長い爪で、退屈そうな顔でスマホぽちぽちしながら、脳内では「あー、ショタのちんちん見てぇ」とか思っていた訳かよ。


 絶対銭湯で働かせちゃいけないタイプだろ!






***



 ――かぽーん。




 暴走するギャルをなんとか落ち着かせ、俺達は無事、男湯への入場を果たした。


 ジャグジー風呂と水風呂だけのこじんまりとしたオーソドックスな銭湯だ。

 ちゃんと壁には富士山の絵もある。


「ん……お風呂……広い!」


「床滑るから気をつけろよ」


 そして隣には全裸のルカ。


 顔は絶世の美少女だが、確かに首から下は少年のそれであり、油断すると脳がバグってやらしい気分になってしまうが、必死に「ルカは男だ……ルカは男だ……」と唱えることで、反応しそうになる下半身をなんとか沈める。


「たいよう……もしかして、ぼくが男で……がっかりした?」


 ビックリはしたが、がっかりはしていない。

 俺は別に下心からルカを預かった訳ではないからな……。




 …………本当だぞ?





「別にお前が女だと思ったから引き取った訳じゃねーよ。子供が変なこと気にすんな」


「…………ん」


 という訳で。

 気を取り直して、ルカに現代日本の銭湯のマナーについてレクチャーする。


 まだ夕方という時間帯もあり、他に利用者は見当たらない。

 多少大きな声で喋っても問題ないだろう。


「まずそこのシャワー台で体と頭を洗うんだ」


「ん!」


 てきとうな風呂椅子に、ルカと並んで腰かけ、シャワーの使い方を教える。


「凄い……お湯が沢山出てくる」


「使い放題だ。遠慮なく使え」


「ん。まるで恵みの雨」


 ルカは巫女という身分で、身なりも綺麗なので、結構高い身分であると思われるが――それでも無制限にお湯が使える事は、かなりの贅沢にあたるらしい。


「俺は先に頭洗ってるから、先にボディタオル使っていいぞ」


「ん……?」


 ルカにボディタオルを渡して、俺はシャンプーで頭を洗う。

 そしてシャワーで泡を流してから隣を見ると……ルカは先ほどと同じ格好で、両手で不思議そうにボディタオルを抱えたままだった。


「どうした?」


「使い方……分からない」


「あー、だよな……これは俺が悪かったわ」


 親戚のガキを預かってるのとは訳が違う。

 ルカは異世界人。


 こっちの世界の常識は殆ど通用しない。

 悪いことをしてしまったと、反省しながら、ルカからボディタオルを受け取る。


「まずタオルをお湯で濡らして、ボディソープをつける、こっちのボトルな。この上の部分をプッシュすると出てくる。んでこれを擦って泡立てる。ほら、これで体を擦り付けるんだ」


「ん……たいよう、やって」


「流石に1人でできるだろ」


「ん。いつも神官にやって貰ってた……自信がない」


「そりゃ結構な御身分なことで」


 神官……まあ、使用人みたいな存在のことだろう。

 確かに昔の貴族令嬢は、メイドに体を洗って貰ってたイメージあるし、ルカもその類いなんだろうな。

 巫女の体は神聖なものだから、丁寧に洗うべし……とかなんとか。


「しゃーねーな。最初だけだぞ」


「ん。痛い……!」


 褐色の狭い背中にタオルを擦りつけた途端、ルカは小さく悲鳴をあげる。


「あ、悪い。痛かったか」


「マルガレーテはいつも、泡立てた石鹸を使って……手で洗ってくれた」


「はいはい、素手で洗えってことな」


 文明は日本より遅れてるようだが、やっぱ身分高い奴は俺よりいい生活してるなぁ。

 確かにこのボディタオル、買ってからもう結構長い間使ってるし、元々安物なので、かなりくたびれている。

 普段素手で優しく洗って貰ってる、甘やかされた柔肌ボディのルカには、刺激が強すぎたかもしれない。


「つか……マルガレーテってルカの護衛騎士だろ? 神官も兼任してんのか?」


 バッサバッサと、トイレから湧き出る魔物を次々に屠っていく、金髪ポニーテールの凛々しい女騎士の姿を思い出す。


「ん。マルガレーテは、代々巫女の神官長を務める家系。そしてぼくの近衛隊長。あと、対魔物兵団の総指揮官もやってる」


「兼任しまくりじゃねーか」


 そりゃ過労でストレス溜まってルカのうなじによだれ擦りつけるわ。


「でもこのタオルは便利。ぼくの世界にはこんなのなかったから、いつもマルガレーテがマン毛で石鹸を泡立ててたけど、ちょっと嫌だった」


「それはちょっと嫌かもな……」


 過労でストレス溜まってるというよりも、シンプルにあの女騎士もショタコンなんじゃねーか?


 俺の中にある凛々しい女騎士像が崩れていく……。

 巫女の護衛させちゃいけないタイプだろ。


「ほい、こんなもんか。んじゃ次は頭洗うぞ。どうせ頭も洗って貰ってるんだろ」


「ん」


 ルカの肌は日頃から些細な摩擦から守られ、甘やかされているだけあって、かなりスベスベとしていた。

 男だと分かっているのに、変な気を起こしてしまいそうになったが、番台ギャルや女騎士のような変態と同列になる訳にはいかないので、必死に耐えた。


 ルカはどんなに綺麗な顔をしていても、肌がスベスベでも……男なんだ!

 勘違いしてはいけない……!



***



「ふにゃあ……」


 数分後。

 無事ルカの全身を洗った後、湯舟に浸かる。


 表情が乏しい印象があったルカだが、湯舟の魔力には抗えなかったのか、人形のような顔が至福の表情で蕩けている。


 分かる。

 湯舟って浸かった瞬間全身が〝ビリビリ〟ってきて、その次に〝ふにゃあ〟ってなるよな。



 ――ぽわぽわ。



「ん? また……なんか……」


 ルカの上気した褐色肌が、ほんのりと輝き始めた。

 確か、ルカの頭を撫でた時も、似たような現象が起きていた。


「ん……魔力、溜まった」


「風呂に入ると魔力が溜まるのか?」


「ん……違う。お風呂、気持ちいい。幸せ。だから、魔力溜まる」


「あー。そういや幸福を感じると魔力が溜まるって言ってたな」


 あの全身がほんのりと光る現象は、魔力の奔流ほんりゅうのようなものなのか。

 ということは……ルカの頭を撫でた時も……嫌な気持ちにさせた所か、本心で喜んでくれていたってこと?


 つまり俺は、今後もルカの機嫌がよくなることをしていけば、魔王を封印する魔法を発動出来るようになり、目的が達成されるという訳か。


「ふにゃ」


「おい、ルカ」


 湯舟に浸かって脱力したのか、俺の膝の上に乗り胸板に背中を預けてくる。

 ルカの体躯では、浴槽の床に尻をつけるには深すぎたが、俺の膝を使うことで丁度首から上が、湯舟の外に出る位置になっていた。


 そういうことなら仕方がないと、大人しくルカの椅子になる。


 しかしこれ……結構不味いな……。

 何がまずいかっていうと……例のブツが反応した瞬間、ルカの尻に隆起したブツを押し付けることになってしまうからだ!


「ルカは男だ……ルカは男だ……ちんちん生えてるから……よし、ちんちん生えてるな……」


 背中越しにルカのちんちんをチェックし、バグりそうになっている俺の脳を正常化させる。


 情報を更新します。


 接触対象:男。

 性的興奮:不可。

 男性器の隆起:中止。


 性興奮プロセスを中断します。


 ……。

 …………。

 ………………ふぅ。


 なんとか落ち着いたぜ。


「ん。さっきのお姉さん」


「そうだな」


 しばらく湯舟に浸かっていると、浴室にハーフパンツとTシャツと裸足という恰好で、番台ギャルが入ってくる。

 湯舟の水温とか水質のチェックとかで、従業員が浴室に出入りするのはよくあることだ。


 しっかし、男湯に女性スタッフが入ってくるのは、男としては落ち着かないものがある。

 だって男女逆なら普通に警察案件だろ。


 番台ギャルはルカをちらりと見てから、細長いフラスコのような容器にお湯を汲み、ルカをちらりと見る。

 そしてなんか粉みたいな薬を容器に入れ、ルカをちらりと見る。

 すると容器の水の色が変色する。

 その色の変わり具合で、水質を確認しているのだろう。

 そしてルカをちらりと見――――



「いや見すぎだろ!! 早く出てけよ!!」


「いや、これしないと保健所がうるさいんで。怠ると営業停止になるんで」


「別の罪状で営業停止になるだろ」


 やっぱダメだあのギャル。

 男女逆なら警察呼ばれてるって。

 男従業員が女湯に入って幼女めちゃくちゃチラ見してたら一発で営業停止になるだろ。


 歴史ある下町の銭湯が、従業員による淫行行為で潰れる未来は見たくない。

 自宅に風呂がついていない手前、ここが潰れるのは勘弁してほしい。


「いやまた来たよ」


 出て行ったと思ったら、再び浴場に入ってくるギャル。

 その後も彼女は、客が使った風呂桶を定位置に戻す作業や、床に流されずに残っている泡を流す作業をするという言い分で、めちゃくちゃルカをチラ見してきたので、なかなか落ち着いて体を温めることが出来なかった。


 ルカは女騎士マルガレーテで馴れているのか、あまり気にした様子はなかったが……。



 という訳で――次回に続く。


 次回――フルーツ牛乳編。


==============================

【あとがき】

今回のおまけAIイラストは銭湯に入るルカです。


https://kakuyomu.jp/users/nasubi163183/news/822139841012374598

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る