第14話 CST

 ――2073年6月


 ミユが実戦デビューしてから早一年が経過した。もう彼女はCSTのエースの一人である。


 定例ミーティングが始まった。フィッツロイがCSTのメンバーを見回す。参加しているメンバーだけでMS(ミュータントソルジャー)が二十人はいる。


 現在活動中のMSは遠征先にいるものも含めると総勢五十人程度に増えている。CST創設から一年以上が経過して戦死した者はまだ一人もいないが、怪我を負ったり戦意を喪失したりなどでリタイアした者はそれなりにいる。


 それでも今年採用したMSは、遅発性の細胞変化を起こして能力を発現し探し出された者達で、デビュー時の能力は一期のMSと比較すると段違いに優れていて、わずかな訓練で即戦力になる者が多かった。


 中にはリックやアイルトンなど元々現地連合軍の兵士だった者もおり、彼らはシャドーの生態にも精通していた。今では彼らは作戦立案に欠かせないメンバーとなっている。


「諸君、日頃の君たちの活躍にはたいへん感謝している。既に君たちは通算で十万体以上のシャドーを排除してくれた」


 フィッツロイはもう一度全員を見回してから続けた。


「しかし、知っての通りやつらの繁殖力は留まることを知らない。現在でもおよそ五万体のシャドーが暗躍し増殖し続けている。いずれ彼らの存在が一般市民に知られることはもはや避けられない。そして君達の存在も然りだ」


 ミユもアイリもやや深刻な面持ちだ。フィッツロイは左右に歩き始めた。


「数もさることながら、シャドーの一部は今までにない高度な対応をするものが出始めた。今や、バイロン兵士の単純コピーの段階を超えて、我々の行動を学習し模倣し、より高度な戦いをしてくるようになった」


 ミユ達は初期の戦いに比べ、簡単にやられなくなっているシャドー達の姿を思い浮かべた。彼らはX1を跳ね返す盾を開発し、常備するようになった。CST側もX1だけではなくレーザーソードを始めとした新しい対シャドーの武器を開発してきているが、いたちごっこの様相は否めない。


「アイリ、お前達一期生から見て今の状況をどう思う?」

「はい。技術的にはおっしゃられる通り一進一退が続いていますが、中期的な問題は私達の持久力にあると思います」

「と言うと?」

「私達はミューロン、いえiセルのおかげでほとんどの戦いで傷つくことなく勝利していますが、相手が次々と新しいコピーを投入して来るのに対して、こちらは同じメンバーが毎日対処しています。一年半近くこの状況が続いていますので、最近は一期のメンバーもさすがに疲弊してきております。この戦いを今後も長く続けるのは厳しいのではないかと」 


 その点に関してはフィッツロイも同じことを感じていた。このまま戦況が長期化すれば、連合軍側がじり貧になっていくことは容易に想像がつく。


 iセルとはミュータントに特有の万能細胞で、まるで知能を持っているように自在にその性質を変化させる。例えば体が傷つきそうになった時には防弾服をしのぐ防御物質に瞬時に変化する。

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