スコップ勇者、元カノとヤバい聖女に挟まれて死にそうです。
沼サーモン
第1話 元カノと、死ぬまで口喧嘩してました。
「だからさ、もうちょっと人の話を――」
「は? あんたがいつも途中で話切るんでしょ?」
放課後の帰り道。
夕焼けの中で、俺たちは“別れ話”の延長戦をしていた。
……別れたの、半年前なんだけどな。
「いや、だからさ、美月。もう終わった話を蒸し返すなって。」
「終わってないわよ。まだ恨みがあるもの。」
「恨みってお前、俺がプリン食べただけだろ!?」
「“私の”プリン!」
「賞味期限切れてたんだよ!」
「愛の賞味期限が切れたのはそっちでしょ!」
「言い返しのセンス高ぇな!?」
通行人がチラチラ見ていく。
そりゃそうだ、元恋人が夕暮れの商店街で公開口喧嘩だもんな。
誰が見ても面倒な元カップルである。
「……なぁ、美月。もうやめようぜ、こういうの。」
「なに、情けで止めに入ったの?」
「いや、信号、青になってる。」
「え?」
互いに興奮状態だったからだろうか。
俺たちは暴走したトラックに気がつかなかった。
ドオオオオンッ!!
視界が真っ白になった。
音が遠ざかっていく。
あれ、俺……轢かれた?
いや、美月も一緒に吹っ飛んで――。
「……死んだ?」
「ちょっと、あんたのせいで私まで巻き添えなんだけど!」
「俺のせい!? 止まらなかったトラックのせいだろ!」
「最後の最後まで言い訳!? サイテー!」
「幽霊になってもケンカかよ!?」
周囲がぼやけて、代わりに白い空間が広がる。
雲のような床、光の柱。
そしてその中心に――胡散臭い笑みの男が立っていた。
「ようこそ、異世界転生センターへ!」
「え、ここ転生センター!? 私ずっと来てみたかったの!」
「なにその軽いテンション!?」
白服の男は羽根ペンをくるくる回しながら、笑顔で言った。
「お二人、同時に死亡したため、ペア転生プランが適用されます!」
「はあ!? 誰がそんなの申し込んだ!?」
「元恋人限定! “愛の試練コース”です! 仲良く世界を救っていただきます!」
「やめて!? 何その地獄ツアー!?」
男は満面の笑みで言い放った。
「では、お二人に武器を授けましょう。
――田中悠真様には《スコップ》。
藤堂美月様には《聖剣クラリティ》。
ではお幸せに!」
「いや武器の格差!!」
「ふふ、似合ってるじゃない。“掘る側”と“刺す側”。」
「その言い方やめろ!」
眩しい光に包まれる。
気づけば地面の感触、熱、風――。
次に目を開けたとき、俺は砂漠のど真ん中に立っていた。
そして隣には――
やっぱり、あの女がいた。
「……ねえ、悠真。あんたのせいで異世界来たんだけど。」
「知らねぇよ! 俺も被害者だわ!」
こうして俺たちは、“転生前から続くケンカ”を持ち越したまま、
異世界に降り立ったのである。
――神様、頼む。ペア割、返金してくれ。
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