トルニカの街

「結局何だったんだ…あの人」

ベントが疑問を口からこぼす。


「さあな…ただの変人だぜ。気にするなよ」

ベントは俺を疑っているようだ。納得していないみたいだが俺にはこれ以上何も言えない。


「とにかく街に行かないか…そろそろ毒が限界だぜ。」


「あ、そうだねごめん」

ベントははっとしてすぐ俺を担いで北に向かった。

やれやれ…とんだ疫病神だぜあの野郎

しかし殺されなかったのは不幸中の幸いだな

そうしてしばらく歩いた頃、霧に覆われた街に着いた。


「トルニカの街って言うらしいよ」

ベントが古い看板を見ながら言った。


トルニカ、聞いたことのない街だ

「なんだか嫌な雰囲気だぜ」

この街…なんか臭うぜ。魔物でも潜んでやがるのか?


「本当に嫌な気分だね。毒の治療だけしたら速く出ようか。」

ベントが問いかける。

俺はああ、と返事だけしてベントに教会に向かってもらうことにした。


街の中に入ると、霧が濃い以外は普通の街のようだった。住人もいる、店も普通にやっている。考えすぎだったか…?

そんなことを考えている間に、教会に着いた

神官に毒の治療を頼むと


「この毒の進行でここまで来られたのは奇跡に近い!貴方には類稀な毒の耐性があるようですね。」

と言った。


ベントは妙に納得したような表情を見せながら

「そうじゃなきゃ今まで一人旅で生きてこれてるわけないよ…」

と言った。

そんなベントに


「まあ俺は元"最強"だからな。」

と言う言葉を返した。


「わかったよ自称元"最強"君」

ベントに呆れたように言われてしまうのだった。


それからすぐに毒の治療は終わり、俺たちは別行動で街を巡ることになった。


そうして…人気のない路地に出た瞬間、俺は後ろを振り返り言った。

「ずっとついてきてんのはわかってんだよ。出てこい雑魚共」


そう、この街に入って来てからずっとついてきている怪しい2人がいる。害がないならいいかとも思っていたが、明らかな敵意を向けられて思わず言ってしまった。


2人は観念したように剣を取り出し、同時に襲いかかってきた。


この程度、"最強"じゃなくなったといえども俺の敵ではない。


俺はナイフを取り出し、敵に向ける。


「〈天撃〉」

俺は瞬間的に速度を上げ、致命傷にならない程度に敵2人の体を引き裂く。

まずはどうにか情報を聞き出さねば。それにベントの方も心配だ。


「さぁ、お前らの目的を言ってもらおうか。」

ナイフを向けて問いただす。

しかし2人は何も言わず、その姿は不気味さを覚えた。

よく見るとその顔に生気はなく、俺はその白い顔に見覚えがあった。

アンデットか…!こうしちゃいられない。ベントが心配だ。そう思った俺はベントを探すため路地裏を駆け出すのだった。

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