第3話 自己紹介
「そんじゃー自己紹介始めるぞー。廊下側の一番手前の席から順番な。てな訳でよろしく」
ウォルド先生はそう言うと、廊下側の一番手前の席──王太子オズワルドに目を向ける。
ちなみにAクラスは30人で、原則成績上位30名がAクラスになるとされている。
とはいえこれは公然の秘密なのだが、クラス操作はされている。当たり前といえば当たり前だが。
.........いやまあ、もしかしたら本当に成績順なのかもしれないけど。
「私はオズワルド・フォン・デ・ルクス・カルマ、この国の王太子だ。学院内では身分は気にする必要はないから、気軽に話しかけてくれると嬉しい。これから1年間、よろしく頼む」
オズワルドは人のいい笑みを浮かべながら、模範的ともいえる自己紹介を終える。席に座るまでの間、教室中から拍手が鳴っていた。
俺も周りに倣って拍手をするが、なんとまあ面白みの欠片もない自己紹介だろうか。
「僕はマルネス侯爵家長男、レイモンド・フォン・マルネスだ。次期宰相として相応しくあれるよう、皆とともにこの学院で学んでいきたい」
続いて青髪メガネくんのレイモンド、いかにも真面目! って感じだな。
その後に続いた宮廷魔法師団長の息子のニクス、騎士団長の息子のガイアも、無難な、悪く言えばありきたりな挨拶だった。
.........上4人がそんなんじゃ、ほかの貴族生徒もありきたりな挨拶しかしないよな。
はぁ〜〜〜〜〜〜つまんな。
───そうこうしてるうちに自己紹介は平民の生徒へと移り、とうとう俺の番となった。
サッと立ち上がれば、それに伴い銀色にポニーテールが揺れ、耳元の雪の結晶がキラリと光を反射する。
「俺はレイン・サジタリウス、得意属性は氷だ。よろしく頼む」
人の事言えないくらいつまんない挨拶だが、これには海よりも深い、ひっじょ~~に深い理由があるのだ。
ほら、やっぱり集団の中で生活していくには空気を読むことが大切だと思うの特に俺なんかは任務があるから下手に目立つと任務に支障が出るかもしれないし人間関係を築きすぎると人付き合いで時間を使って任務の為に使える時間も減るかもしれないから少人数との付き合いが俺には合ってると思うのほらここで周りに埋もれるような印象に残りにくい挨拶をすれば無駄に人と沢山関わることもないと思うしたとえ学院の授業とかでグループを作るってなったとしても1人2人の人付き合いがあれば最低限孤立することは避けられるしそもそも隣の席のアークティア嬢とは仲良くできそうな雰囲気するからもう既に孤立する心配はないっていうかそもそも結社のみんなとはとっくのとうに仲良くなってるし今更友人関係に悩む必要はないっていうか学院には任務で来てるんだから無理してまで充実した学院生活を送る必要はないと思うんだそれに俺の気質的にあまりにしがらみが多すぎて自由に行動できないってなると全部氷漬けにしたくなるしそれやっちゃうと俺の正体がもしかしたらバレちゃってそうなると結社のみんなに迷惑かける可能性が高くなるそれだけじゃなくてせっかく仲良くなれそうなアークティア嬢にも被害が行くしこの国としても貴族家の人間や次期国王とその側近候補をごっそり失うのは致命的だろうから俺のこの行動はカルマ王国と結社の両者のための行動とも言えなくもないのだ言わばウィンウィンの関係だなそう考えると俺のこの挨拶は非常に理にかなってると言えるのではないかうんそうだな理にかなってるだから俺がこんなつまらない自己紹介をしたのは必然の結果であり人を殺したら死ぬような当たり前の事象いやこれは例外があるな例えが悪いそうだな俺たち黄昏の塔が何にも縛られないのと同じような至極当然の摂理という訳だまあそんなわけで俺がクソつまんない自己紹介をかましたのは仕方がないことだなのでどうか石を投げないでくださいお願いします。
ごめんなさい、わるめだちするかもしれないのがこわかっただけです、ゆるしてください。
まあ、冗談はその辺にしておいて。
その後もつつがなく自己紹介は続き、結局皆普通の自己紹介で終わってしまった。
なんだよ~みんな真面目ちゃんか~??
あ、でもでも、1人面白そうな奴がいたんだよな。
自己紹介はさして面白くもない、ってかつまんなかったが、彼女の立ち位置が面白そうなんだ。
ピンク色の髪に小柄な体型の彼女。
彼女──ミリア・フォン・トゥルリアって名前なんだがな、トゥルリアって男爵家なんだよ。
これだけなら、ああ、よっぽど入試の成績が良かったんだな、で終わるんだけど。
──5番目なんだよ、自己紹介。
つまり、王太子とその側近候補である上4人を除けば、序列的にはAクラス1位とも見えるんだ。
別に誰も席順が成績順だとか序列順だなんて言ってないし、なんならおおむねランダムの可能性もあるけど、そんなのは関係ない。
そう捉えることが出来る。ここが重要なのだ。
最初の4人がちょうど次期国王とその側近の順番になってしまっているのだ。そのせいで彼女の序列が上のように見えてしまう。
事実、彼女のことを睨む人も何人かいた。これはトラブルの匂いがしてきたな。
───さてさて、さして期待していなかった退屈な学院生活、面白くなりそうじゃないか。
そういやミリアってなんで俺の事あんなに観察してたんだ? 誰? とか言われても初対面だから俺のことを知ってるはずがないだろうに。
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個人的に思うテンプレみたいな名前シリーズ。家名考えるのちょーダルい。
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