裏組織の幹部、魔法学院に逝く

海月くるいんちゅ

第1話 プロローグ

 途中から一人称。

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 大国であるカルマ王国、その王都の中心近くに堂々と建てられた王立魔法学院。


 王国内の王侯貴族だけでなく、優秀な平民、友好関係にある他国の生徒も留学に来ることもあるこの学院は、最高峰の教員機関と言っても過言ではない。



 そんな魔法学院へと向かう、大勢の人間。



 毎年この時期になると、学院の正門から多くの貴族の子息令嬢が入学してくる。

 爵位の高い貴族家は、その威光を示すために煌びやかな馬車で通学しており、そんな彼らが通る門は、馬車に負けず劣らず煌びやかな、それでいて華美でない装飾がなされている。



 天も彼ら彼女らを祝福しているのか、雲ひとつない晴れ模様だ。



 さて、入学者の多くが貴族子女で締められるが、別に平民が少ないわけではない。



 銀色のポニーテールをゆらゆらとさせながら、堂々とした足取りで、たった今門を潜ったこの男子生徒もまた、平民である。



 銀髪のポニーテールに、薄紫色の瞳、雪のようなきめ細やかな肌、整った顔立ちは平民には見えないが、間違いなく平民である。


 耳元に飾られた雪の結晶の耳飾り、紺色の制服に黒のスラックス、右手の人差し指に嵌められた黒の指輪。

 そのどれもが彼をより引き立てる。



 とはいえ。



 確かに美しくはあるが、王侯貴族であればそれなりにいる程度の美しさ。貴族の子女の多いこの学院では、特別目立つようなものではない。



 そんな彼の名前はレイン・サジタリウス。



 .........実は彼はただの新入生ではない。



(へえー、ここが魔法学院ねぇ。警備ザルじゃない? 今テロでも起こされたらどうするつもりなのかな?)



 ずいぶんと物騒なことを考えているが、それもそのはず。





 彼は世界に名を轟かす、超一級の実力者で構成された秘密結社『黄昏の塔』の一員なのだ!!





 .........結社なのに世界に名前を轟かせているのは置いておくとしよう。


 レインは、で魔法学院に潜入中である。『黄昏の塔』最年少の彼が年齢的に適切だとして、この任務に抜擢されたのであった。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 <Side:レイン・サジタリウス>



 綺麗に整えられた立派な庭園を抜けまもなく、俺はこれから3年間暮らすことになる学生寮へとついた。


 部屋に荷物を置いた俺は、早足に入学式に向かう。貴族の多く通う学院で遅刻でもしようものなら何があるかわからないからな。


 まあ、それはそれとして、何か面白いことでも起こると俺が楽しめていいんだけどな。




 ...........................

 ..................

 .........



 残念なことに、特に面白いこともなく、入学式が始まっていまった。


 お偉いさんの退屈な話を聞き流してるうちに、とうとう新入生代表の挨拶に移る。



「続いて、新入生代表挨拶、オズワルド・フォン・デ・ルクス・カルマ王太子殿下」



 壇上にこの国の王太子が出る。金髪碧眼に、スッと伸びた身長、美男子とでも言うべき姿。


 なるほどね、あれが王太子かー。なんか、爽やかって感じで鼻につくな



「今日は、記念すべき我らの────」



 観察も終わったから、話は適当に聞き流す。


 王太子に興味があるんじゃないのかって? いやいやまさか。


 俺はあくまで王家が任務に関係するから、王太子を観察したのだ。王太子自体はどうでもいい。特に脅威にもならんからな。



 そうしているうちに、入学式は終わる。


 明日からは学院生活、俺はAクラスである。


 今日は1日中ずぅっと退屈だった。これから何か面白いことでもあればいいんだけどなぁ~~。


 ───後で知ることになったが、王太子、宰相の息子、宮廷魔法師団長の息子、騎士団長の息子と、次代の王国を支える面子の揃った、地獄のクラスだった。

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