第10話 現在の学校ランクは?
私はレーチェル。
世界魔法学会の査察官としてラレンティアにやってきた。
そんな私は校長室で少女に出迎えられている。
「せ、世界魔法教会からようこそいらっしゃいました! 私は校長のアルフィフィです!」
「俺は使い魔のバーちゃんだ。ちなみにこいつはアルフィミィな。フィフィじゃねーから」
やはり幼い。幼すぎる。
魔法学校の校長の平均年齢は五十過ぎで、これまでの校長の最年少も41歳だった。
だが目の前の少女は15歳と聞く。
いくらなんでも若すぎる……が、彼女は校長の資格を得ている。
ならば相応の礼儀を持って挑むべきだろう。
魔法使いに重要視されるのは、年齢ではなく魔法を使う力量だ。
「私はレーチェルと申します。早速ですが査察を行いますがよろしいでしょうか?」
「もちろんです! あ、あの、すごく真っ白で綺麗なローブですね!」
「世界魔法学会の制服ですからね。我々はこの白きに誇りを持ち、一点の汚濁なく査察を行っております」
世界魔法学会の制服は、ホワイトシープという希少な羊の毛から作られている。
他の毛では出せない白さこそ、我々監査官の誇りであった。
アルフィミィ校長は笑顔で私を案内し始めた。
さっそく校舎の中を見回る。少し古くてボロいがそれ以外は普通の校舎だ。
――ただし見た目だけは。
な、なんだこの校舎は!? 凄まじい魔力に満ちている!?
これほどの魔力を満ちさせるなど、超一流の魔法大工でも不可能だぞ!?
「あ、あの。この校舎はいったいどうやって建てられたのですか?」
思わず声が上ずってしまった。
どうやら私も動揺しているようだ。だが仕方ないだろう。
これまでに多くの魔法学校を見て来たが、このラレンティア魔法学校の校舎は異常すぎる。
他の学校に比べて三倍以上の魔力濃度だ。これほど魔力に満ちた校舎で暮らしていれば、生徒の魔力は凄まじく伸びるに決まっている。
「精霊のドワーフにお願いしました」
「アルフィは精霊使いだからな!」
そ、そうか。
彼女は世界で唯一の精霊使いだ。精霊の建てた校舎ならば、これほどの魔力に満ちているのも納得できる。
……もはやこの校舎は聖域に近いな。末恐ろしい。
「あ、ありがとうございます。では次は現状の施設を見せて頂けますか?」
「は、はい!」
そうして私は校舎の外に出て査察を続けて、
「この学校は神話の聖域ですかね?」
と思わず呟いてしまった。
おかしいだろう!? なんで精霊の工房や精霊畑があるのだ!?
特に精霊畑は反則過ぎるだろう!?
魔力を注いだら種子なしで発芽し、信じられない速度で育っていくだと!?
いや校長が精霊を扱えるならあってもおかしくない。だがその性能が反則すぎるだろうが!?
もう魔法学校というより神々の修練場と言った方が適切では???
「い、いえ。普通の魔法学校です」
「貴女の普通と私の普通では、隔絶的な違いがあるようですね」
「普通って難しいよなあ」
使い魔の鳥がクチバシを開く。
いや普通が難しいのではなくて、お前たちが普通ではないというだけだろうが!?
い、いや落ち着こう。
査察官が感情を荒げて主観的になってはいけない。
査察官になるには血の滲むような努力が必要だ。
血反吐を吐きながら勉学に励み、魔法の訓練を行い続けた。
そこまでして就任した査察官だ。私にとって査察官という肩書きは、自分の人生の代名詞に等しい。
神に賜った純白のローブを丁寧に扱わない者はいない。
ゆえに私も私情という汚れは排除し、査察官の名は絶対に穢さない。
「で、では次は寮を見せてください。調理場や食事も確認します」
「はい!」
そうして私は寮へと案内された。
寮も濃密な魔力に満ちているが、もはや何も言わないぞ。
そうして寮にある食堂に行くと、
――フライパンがひとりでに飛んでいた。
「あ、シルキー。この人に料理を作ってあげてくれないかな? 普段の生徒と同じやつ」
「し、シルキーが料理を作っているのですか?」
「はい。ここの寮長をやってもらってます」
そ、そうか。精霊は目に見えないから、持っている道具だけが動いているように見えるのか。
……か、家事精霊が寮長とはなんて豪華な。
仮に王城だろうとあり得ない話だ。
そしてそんなシルキーはフライパンなどを使って、手慣れたように料理の盛った皿を出してきた。
パンにスープだ。だがこれまた凄まじいまでの魔力が溶けている……。
試しにスプーンですくってみると、凄まじく美味しかった……。
「どうでしょうか? お口に合いますか?」
「も、もちろんです」
……私、ここに再入学できないかなあ。
この学校で三年間過ごしたら、魔力が何倍にも跳ね上がりそうだ。
「え、ええと。では生徒たちの力量を見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「はい!」
そうして私は生徒たちを遠巻きに観察し、彼らの大雑把な能力を把握できた。
どうやら生徒たちは普通の魔法使いだ。少なくとも今は。
流石に入学してすぐでは過剰に伸びたりはしないだろう。
……この子らが卒業する時はどうなっているか知らないが。
そうして査察が終わった後、私たちは校長室へと戻る。
「では査察結果を報告します。このラレンティア魔法学校をGランクに認定します。ランクの説明をいたしましょうか?」
「大丈夫です。……でも念のために合ってるか確認してもらってもいいですか?」
少し不安そうになるアルフィミィ校長先生。
見た目は年頃の可愛らしい少女だ。やっていることは神話級のことばかりで、可愛げの欠片もないが。
「もちろんです」
「ありがとうございます。魔法学校にはG、E、D・・・A、Sとランクがあります。最初はどの学校もGランクから始まり、各ランクの魔法大会での結果でランクが上がっていきます」
「全て合っています。半年後にGランクの大会が行われますので、そちらに出てもいいかもしれませんね。生徒たちの実績や経験になりますし」
「いいのですか? 最初の入学生が最高学年になるまでは、大会には出ないのが通例と聞いていますが」
「あくまで通例ですので」
ここは普通ではないので問題ない、という言葉を飲み込んだ。
この環境で育った生徒ならば、一年目でもそれなりに通用するのではないだろうか。
流石に優勝までは無理だろう。今の生徒たちは全員がGランク相応の魔力量だ。
この環境なら凄まじく伸びるだろうが、 それでも半年間では限界がある。
そもそも魔力が増えたとしても、使いこなせないとそこまで強くなれない。
いくら筋力があったとしても剣の腕に直結しないのと同じだ。
剣術を短期間で伸ばすならば優れた師匠が必要だ。
魔法だって同じで優れた教師が必要不可欠。
もしこの魔力を凄まじく伸ばせる環境に、教えるのが天才な教師がいれば話は別だろう。
だが天才教師はそうそう転がってはいない。
こんな恵まれた環境で、教師まで恵まれているなんて美味い話はない。
「では頑張ってください。半年後に大会で見れるのを楽しみにしています」
「ありがとうございます!」
査察官として私情を挟むことはない。
ただこのラレンティア魔法学校の将来性は、すごく楽しみであった。
なにせ……。
「さてと……査察官を辞退する手続きを始めないとな」
私も来年は生徒として入学するのだから。
査察官は私情を挟んではならない。ならば私情を挟むには査察官を辞めればいいだけの話だ。
監査官になるための血反吐を吐いた努力も惜しくはない。賜った神の如き白いローブも、今ではただの白い布にしか見えない。
この神域がごとく場所で学べるならば、自分は間違いなくもっと優れた人間になれる。
今までの人生を捨てても惜しくはない。
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