第51話・異世界人事情01


【……って事をアーノルド様から聞いたん

 ですけど~、


 何か心当たりっちゅーか、何で

 そうなったのかわかりますか?】


都会のボロアパートの一室で、

俺はメルダから報告と同時に、

質問を受けていた。


「う~ん。


 話を聞くに、召喚自体は

 成功だったんだな?」


【だと思いますよ?


 覇道はどうを後押ししたって言ってましたし、

 実際に召喚されて活躍したのは間違い

 なさそうで】


それで人口が1/3減るって

どういう……。

まあ、思い当たる理由が無い

わけじゃないが。


「多分―――

 病気だな、それ」


【??

 疫病えきびょうって事ですか?】


彼女が聞き返して来る。


まあテンプレだと化学・技術レベルは

中世っぽいし……

そうでなければ召喚する意味も無いか。


「ああ、そうだ。


 本来、その地方や世界にいない

 生き物を受け入れるっていうのは、

 すごく危険な事なんだよ」


そこで俺は説明し始めた。


外部の人間が持ち込む病気の事、

それに免疫が無かった場合、どれだけ

感染していくかって事などを。


【おぉう―――

 じゃあワタクシ、かなりヤバい事を

 しようとしてた?】


「そういう事だな。


 今、そちらの世界はそれぞれ国と国の

 距離が離れていて、往来する人間も

 ほんの一握りだから、あまり影響は

 無いんだろうけど。


 風土病とか、その土地独特の病気とか

 聞いた事は無いか?」


【あ、あります!


 な、なるほど。

 そんなリスクがあったんですか】


この手の物語では軽視されがちな

設定だが、


実際に地球でも大航海時代……

ペスト・天然痘・おたふく風邪などは、

当時のヨーロッパが各地に持ち込んだ

病気だ。


日本も黒船来航以来、コレラが

大流行したし―――

ましてや別世界からの召喚者・

転移者など、どんな病気を持っているか

わかったものではない。


クラスまるごと召喚なんて、未知の病原菌や

ウイルスの詰め合わせセット。

存在するだけで脅威のバーゲンセールだ。


【でも、そんなに強力な病気でも

 全滅はしなかったんですよね?】


「それに気付いた召喚者が、徹底した

 対策を行ったか……

 もしくは免疫を獲得した人だけが

 生き残った、とかかな」


【あ、じゃあ―――

 バラン皇国はもう異世界人を召喚しても

 問題ないのでは?】


さらりと恐ろしい事を考えるなコイツは。

まあ今は旦那の母国でもあるし、人脈も

出来たからなんだろうけど。


「病気の元……

 菌やウイルスだが、コイツら進化

 するからな?


 俺の世界だって、つい最近まで

 世界単位で流行っていた病気が

 あったんだ―――


 こっちでも克服こくふく出来ていないものに

 わざわざ手を出すのは、考え物だぞ?」


【むむぅ~……】


そこまで言うとさすがに彼女の声の

トーンが落ちる。


【チッ……

 せっかくオッサン、食料チートが

 出来るようになったから、いつか

 呼ぼうと思っていたのに。

 そして馬車馬のように働かせようと

 していたのに―――】


「そりゃあ残念だったな諦めろ。


 ていうか俺、いつまでお前のおりを

 してりゃいんだよ」


【え?

 だってお仕事は決まったし、しばらくは

 サポートしてくれるって言っていたじゃ

 ないですか】

(■40話 お茶会アフター参照)


「まあそうは言ったけどな……」


そこでしばらく俺とメルダは、

取り留めのない会話を続けた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る