第4話 スキル

 スキル、それはモンスターを打倒するための特別な力。


「スキルの発動方法は技名を唱えて、指定の動作をすればいい。ソードスキルなら発動後は体が勝手に動くし、特殊技能系の技なら即時発動される。他にも発動方法はあるけど……初心者にはこれが一番いい」

「わかりました」


 目を瞑りスキルのことを思い浮かべると、自然とその使い方を理解できた。

 ちょうどよくミニモンチーを発見した。どうせなら、モンスター相手に試してみよう。


(スキル……集中……)


 ミニモンチーは僕に気がついて、奇声をあげて飛び掛かってきた。敵がジャンプすると同時に、発動の予備動作———左手で十字を結び、掌を敵に構えて叫んだ。


「ヘビー・スパーク!」


 ———バリバリバリィ‼


 雷が落ちたのかと錯覚するような白い閃光が炸裂した。網膜を焼き切るほどの鮮烈な光だった。


「むきゃぁぁ!」


 一瞬の閃光。

 それが収まると、目を抑えて地面でのたうちまわるミニモンチーがいた。


 「これは……目潰し?」


 ド派手な光だったから、てっきり凄い攻撃かと思ったのに。ちょっと拍子抜けだ。事務的にザクっとシミターでミニモンチーにとどめを刺した瞬間だった。

 

「凄いっモブ、今日一番の驚きだよ!」

「えっ、えっ!?」

「こんな常識外れのスキル、初めて見た」


 何故か顔を紅潮させるユキノさん。予想もしていなかった反応に僕は目を瞬かせた。


「た、ただの目つぶしだよ?」

「何を言ってるの、ほとんどのプレイヤーはあの技を見たことあるでしょ。チュートリアル戦闘でボスが戦闘を強制終了させるときの技だよ」 


 それって……僕の職業と同じ名前だ。


「もしかしてチュートリアルを飛ばしたの?」

「分かんないです」


 チュートリアルは知らないが、ボスは知っている。強力なモンスターの総称だ。


「どう説明したらいいのか。ニュー・エリシンオンではプレイヤーは様々なバフやデバフを覚えることが出来る。けれど、目つぶしはどの職業でも覚えない」

「どうしてですか?」


。一定時間行動を縛る『スタン』や、詠唱を封じる『沈黙サイレント』は既に存在する。けれど、目つぶしは五感の一つを完全に奪えてしまう。特定のボスしか使えない最強のデバフよ」


 これが最強のデバフスキル?


「間違いなく、モブの職業は未発見のものだ。この情報を売れば報奨金リアルマネーだってもらえる。もちろん秘密にしたっていい。モブはどうしたい?」


 興奮したユキノさんがそう問いかけてくる。

 だけど、僕は天界リアルは行けないし、そもそも制限によって自分の職業を口にだすことが出来ない。まあ、例え出来たとしても、きっと答えは変わらないけどね。


「僕はお金よりも冒険がしたい。だからこの力の秘密は自分で解き明かします」

「ふっ、わかった。ニュー・エリシオンに勝利に直結する課金要素はない。私も誰にも言わないと約束しよう。モブがどんな冒険者になるのか楽しみだよ」

「僕もユキノさんみたいなトッププレイヤーさんになれますか?」

 

 ただのNPCである僕がプレイヤーさんの頂点を目指すなんて夢物語かもしれない。不安から顔をあげると、彼女はまっすぐに僕を見つめた。


「ニュー・エリシオンは、プレイヤー人口、3億人を超える覇権コンテンツよ」

「さ、三億人!? そんなにいっぱいプレイヤーさんが……」

「トッププレイヤーは天才ばかり。生半可な努力じゃ絶対にたどり着けない。だけど、私はモブの能力が彼等に劣っているとは思わない」


 ユキノさんは口の両端をつりあげて、彼女らしい控えめな笑顔を咲かせた。


「だから待ってる。モブがいつか私を倒せるくらいに強くなるのを。そのために私ももっと強くなる。お互い頂点を目指して競い合おう」


 差し伸ばされた手を、僕は眺めた。

 憧れの人に認められた気がして、ジンジンと目頭が熱くなる。つんと鼻の奥が痛くなって、感情がこみ上げてしまう。


 ユキノさんの手をギュッと握りしめて、宣言する。


「……ユキノさんっ、約束します! 僕は絶対に貴女よりも強くなりますよ!」

「じゃ今日からライバルだね」


 きっとこの先、僕に待ち受けているのはとんでもない冒険だ。見惚れるような絶景や、強大な敵。それら全てを乗り越えて、いつか必ずユキノさんに超えてみせる。


「じゃモブ、そろそろ帰ろう……か!?」

「ど、どうしたんですか?」


 突然、顔を真っ青にしたユキノさんが狼狽える。慌ててストレージから謎の平べったいクリスタルを取り出して操作する。


 「ま、まずいっ、モブ緊急事態だ。頼むから一緒に来てほしい、このままじゃ私がぶっ殺される!」

 「!? あわわ!!」


 一体何が起きているんだ!?


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