第4話 多勢に無勢
「ゴホッ! ゴホゴホッ! 何だこりゃ!」
ネルの繰り出した
そんな
首や目、胸などの急所に矢を受けた
「うげっ!」
「ぎゃあっ!」
一方、足や腹に矢を受けた
下り坂に横一列で隊列を組んで行く手を
「オラアッ!」
そしてまだ立っている数人の
ネルの強力な脚力で
そのままネルは下方へ突破する。
上から追いかけてくるデクスターらはその速度についてこられない。
「へっ! ノロマどもが!」
そう言って足を速めようとしたネルだが、前方を見て思わず足を止めた。
ネルは
「チッ。まだいやがったのか。クソ
ネルは周囲の状況をすばやく確認する。
前方に下り坂、後方に上り坂。
道幅はどちらも5メートルほど。
右側はほとんど
左側は正真正銘の
そうなれば命を落とすか、運が良くても足を折るなどの致命的な負傷を負うだろう。
(八方
ネルが持っている武器は弓矢の他には
身軽さを武器とする彼女は出来るだけ軽装であることを心がけているのだ。
ネルは弓を肩に掛けると矢筒の口を閉じる
そして腰帯に差した
☆☆☆☆☆☆
「大変だ……彼女、デスクターの一味に襲われている」
ナサニエルは
彼は赤毛の弓兵を必死に追いかけて山道を登ってきたのだ。
彼女の弓の腕を見込んで、どうしても頼みたい仕事があるからだ。
一度はにべもなく断られているが、きちんと事情を話せば分かってくれるはずだと、ナサニエルは
赤毛の女の弓の腕前はまさに離れ
走りながら数十メートル先の
それも木々が林立するその合間を
あれほどの弓の使い手は見たことがない。
ただ弓の
今、ナサニエルが抱えている問題を解決できるのは彼女しかないと思い、必死に追いかけてきたところ、この
「あんな大人数じゃ いくら彼女の弓の腕があっても殺されてしまう」
元兵士であることから武芸に
首都シスタリアであれば兵士の数も多く治安は保たれているが、この辺境の田舎町になると
おかげで田舎ほど
シスタリスは東側諸国の中でも下から数えたほうが早いくらいの貧しい国だった。
そのためこの辺りでは住民たちが自警団を組んで自分たちの暮らしを守ろうとしているが、デクスター
今もまさに赤毛の女は前後を
ナサニエルは顔を引きつらせながらも決然と立ち上がる。
「何とかしないと……彼女を助けないと!」
そう言うとナサニエルは
赤毛の弓兵を助けるために。
ナサニエルは見てくれ通り、貧弱な貴族の子息であり、運動は苦手で戦闘などとても出来なかった。
だが、彼にはこの山の知識があったのだ。
☆☆☆☆☆☆
「
ネルは
足首をザックリと斬り裂かれた
「うぎゃあっ!」
弓兵のネルだが、祖国の軍に所属していた頃に体術や他の武器の訓練も一通り受けてきた。
その
だが敵の数は多く、ネルを取り囲もうと
「捕まえろ! 一斉にかかれ!」
手を伸ばしてくる
しかし
ネルはそうはさせまいと軽快な足取りで後方に下がるものの、背後の上り坂からもデクスターを先頭に
ネルは即座に決断が必要なことを悟った。
(チッ。さすがにまずいな。一か八か、
一方、
だが……。
「迷っている
そう吐き捨てるとネルは
だが、その時だった。
右側の
ネルが顔を上げると、何かが上から
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