第3話

それから私達は、たくさんのことを話した。毎日、この公園で、夕方の四時まで。集まる時間は決めていない。決めたら、堅苦しい学校みたいだから。

 実を言うと、エマにあまり興味はない。会話はするが五割は聞いていない。時々、おばあちゃんとの思い出を掠る話になるのでその話だけ聞いている。


私は、エマの香りにおばあちゃんを見ている。


ひどいって?でも、同じ香りだ。おばあちゃんの香りだ。それに、所詮一時の関係だ。どちらかが学校に行くようになったらあっさりと絶たれる関係。

おばあちゃんの香りと思い出に浸れるのなら何でも良かった。勿論、このことをエマに言うつもりは無い。あなたを通して違う人を見てました、なんて、言われていい気分になる人はいないだろうから。


しかし、公園で話すこと四日目。ついに私は口を滑らせてしまったらしい。


 「ね、もしかして、私の事おばあちゃんだと思ってる?」

無自覚だった。そのように言われる事をしてしまった自覚もないくらいに、私は無自覚におばあちゃんを重ねていた。

「…うん。ごめん。ずっと、エマを通しておばあちゃんを見てた。ほんとにごめん」


最低なことをしていた自覚はある。許してもらおうとも思っていない。ただ、せめてもの誠意を表したかった。

しかし、ことは私の想像とは別の方向へ進む。

「あぁ、謝らなくていいよ。…そっか。じゃあ、私と一緒なんだね」

「…え?」

「ふふ、あのね、私も、ユズハのことは見てないから」

驚いた。私と一緒だったなんて。

「じゃあ、私で誰を見てるの?」

その場の空気が変わる。


「私はね、ユズハの香りに友達を見てるの」

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