真夜中の踏切

 ■真夜中の踏切


 カンカンカン……


 真夜中の踏切前に立っている。

 終電もなくなっていく時間、俺は飲み会帰りだ。

 今日は上司の送別会だった。


 上司にはお世話になったが、それ以上の気持ちはない。

 お礼を言ってさようなら。

 もう二度と会うこともないだろうな。


 みんなの前で笑えていたかな。

 お酒が各テーブルに行き渡っていたかな。

 盛り上げるための大げさなリアクション……誰かに不快に思われなかったかな。


 繰り返し頭に浮かぶ。


『お前はいつも笑ってていいな?』

 いいよ、俺を笑っていいよ?

 それでよければ。



 今は何時だ?

 ポケットにあるスマホを取り出す。

 手が滑る。


「あっ」


 やってしまった。

 コンクリートに叩きつけられたスマホは無事か?


「別に……」 


 腰を曲げて拾い上げる。

 スマホの画面を確認する。

 暗い画面に映った顔。


「この顔ウケるな」


 この踏切はいつ上がるんだ。


 スマホは壊れなかった。

 仕事があって、仲間がいて、たまに会う恋人もいて、すごくいい。


 真夜中の踏切、赤いランプの点滅は終わらない。


 あぁ喉が渇く。


 お前は俺で笑えるの?


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