第32話 図星の優。相似形のふたり。「だから、搦手から攻めてるってわけ」
「恩田、ちょっと相談があるんだけど」
昼休みの教室。
恩田麻音が友だちとのおしゃべりに一区切りついたタイミングを見計らって、声を掛ける。和奏はちょうどトイレにたったところだ。
僕の顔を見るなり、「はあ……、」と溜息をついた。
「和奏のことでしょう……?」
(──うっ……)
思い切り図星をつかれ、ドキリとするが、平静を装う。
「違うって……」
「それなら、なんの用かしら……?」
「クリスマスのプレゼント選びに付き合ってほしいんだ。……女の子の意見が聞きたくて」
先日の水族館デートでもらったストラップのお礼と、日頃の感謝を込めたプレゼントをしようと思った僕。
しかし、和奏と付き合っている以外はほとんど女子と交流がない僕は、和奏以外で僕に話し掛けてくる女子、恩田に相談を持ち掛けることにしたのだ。
「和奏にあげるつもりなら、やめておきなさい」
「……ねぇ、なんで亜桜さんだったらダメなのさ?」
ただ否定すればいいだけなのに、食い下がってしまう。
「……あたしもね、人のこと言えたような人間じゃないから忍びないのだけど……最近の和奏の様子を見る限り、彼女も殿村くんのことを憎からず思ってるのでしょう。でもね、和奏はともかく、凛……持月さんが和奏と特別に仲がいいのは見ていて分かるでしょう? あの子には、和奏じゃないと駄目なのよ」
「──なら、僕じゃなく、亜桜さんに直接言えばいいんじゃないか……?」
「和奏、あれで結構頑固なのよ……。だから、搦手から攻めてるってわけ」
(他を当たろうか……)
そう考えを改めようとすると、ふいに麻音が口を開く。
「……ほんとうに和奏じゃないんでしょうね?」
「うん……」
「いいわ、付き合ってあげる。和奏が認めてるってことは悪い人じゃないんでしょうし……。あなたには、ちょっと借りもあるしね……」
「借り……?」
「いえ、なんでもないわ。放課後でいいわよね?」
「大丈夫」
恩田はスマホを取り出すと、誰かにレインを送っていた。
「じゃあ、ホームルーム終わったら、校門で待ってるわ」
言い置き、そのまま去っていく。
(なんだかんだいいやつだよな、恩田……。
なんとなく和奏に似てる気もするし……)
──そんなことを考えつつ、午後の授業が終わるのを待つのだった……。
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