第4章 映画館デート。垣間見た、カノジョのありのままの姿。

第17話 失念の優。映画への疑問。「今日はどんな映画を観るの?」

 あっという間に、和奏と約束していた土曜日がやってきた。

 映画の予約などは、映画館の会員になっている和奏がすでに済ませている。

 僕たちが観るのは午後からの回だが、早めに準備は済ませたいということで、朝八時に来るように言われていた。

 実際に到着したのは、待ち合わせ時間十分前の、七時五十分。

 もっと早く来ようとしていたものの、スマホのアラームがなぜか鳴らず、ぎりぎりの時間を慌てて出てきたのだ。


「朝早く来てもらっちゃって、申し訳ないわね……」


 扉を開けて、出迎えてくれる和奏。

 和奏も早起きしたのか、目元がちょっと眠たそうだ。

 彼女はすでに着替えを済ませていた。

 すでに十一月に入ったこの季節。暖かそうなピンクのセーターに、ブルーのデニム姿。

 セーターを押し上げる大きな胸元に目が行ってしまい、慌てて逸らす。

 

 和奏の私室に移動。


「じゃあ、手早く着替えちゃうか……」


 和奏の前でジーパンを脱いだ僕。

 トランクスの下。

 彼女の視線が、僕の両足、毛の生えたままの足へと向く。


「……優、ちょっと剃りましょうか?」

 

 表情だけ笑顔の和奏にカミソリを渡され、風呂場に押し込まれた。


「──剃りました……」


 ──しばらくして。

 処理を終えて出てきた僕の足を、真剣に改める和奏。


「うん……完璧ね。今度から、事前の毛剃りは忘れないようこと……あたしと遊べる時間も少なくなっちゃうし、ね」


 パチンと、ウィンクの和奏。

 ──次からは気をつけよう……。


◆◆◆◆


 すこし慣れてきたブラやショーツを身に着け、和奏から渡されたブルーのブラウスと、ミントグリーンのロングスカートを履く。

 鏡を見ながら、まるでずっと昔からのルーティーンのように、ピンクのリップを唇に塗った。

 ──和奏と本日の予定について話をする。


「……ふわぁー……」


 和奏の軽い欠伸。

 

「眠そうだね……?」

「あ、ごめんなさい……退屈だとかじゃないの」

「そう言えば、今日はどんな映画を観るの?」

「あら、言ってなかったかしら? ……これよ」


 ローテーブル上に置かれていたアニメ映画のチラシを和奏が見せてきた。

 ──チラシには、3人の女子が並んで描かれている。見覚えのある絵柄……。


「……これ、もしかして『岬トライ&アングル』?」

「そうよ! 以前、あたしのシャワー待ちの時に読んでもらった、百合マンガ。ついに待望の映画化なのよ!」

「あれ、すごい面白かったよね!」

「もう、楽しみでなかなか寝付けなくてね。しかも、あたしたちが見る回は、舞台挨拶のライブビューイング付きなのよ」

「ライブビューイング?」

「舞台挨拶を、色んな劇場に配信してリアルタイムで見られるの。実は優の分も合わせて舞台挨拶に申し込んだのだけど、抽選にはずれちゃって。配信で見られるから助かったわ」

「僕も楽しみになってきたよ」

「よかったわ! さぁ、遅くならないうちに早めに出ましょ?」

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