第6話 経験値稼ぎ
丘の奥、洞窟への入り口は薄暗く湿った空気に包まれていた。足元は滑りやすく、天井からは水滴が絶えず落ちる。日高は鉄の剣(攻撃+14)を握り直し、無限バックを腰に巻きつけて奥へ進む。外の草むらよりも明らかに敵の気配が強く、洞窟の空気が警告しているかのようだ。
洞窟内に入ってすぐ、前方で素早い影が揺れた。全長二・五メートルほどの巨大オオカミ型モンスターだ。鋭い牙と爪、俊敏な動き。見るからに戦闘スキルは日高より上だ。普通なら隙を突かれれば一撃でやられる相手だが、日高はゲーム知識で立ち回ることを決める。
「ふむ……こういうパターンか」
敵の動きを観察し、前回の戦闘で得た波流やステップの感覚を最大限に活かす。敵が前足を振りかざした瞬間、ステップで横に滑る。波流で衝撃を受け流しつつ、剣を投げて牽制。戻令で手元に戻す。相手は確かに上手い。だが、日高には“ゲームで培った攻略知識”がある。
数分間の激しい駆け引きの後、日高は相手の攻撃パターンを完全に把握する。遠距離魔法生物の攻撃は、距離と角度を計算してステップで回避。剣の投擲と戻令で間合いをコントロールしつつ反撃する。何度かピンチに陥ったが、瞬間的に判断して対応する。これがゲーム知識の強みだ。
戦闘後、敵は洞窟奥へと去る。倒せずドロップもない。しかし日高にとっては十分な成果だった。スキル操作の精度、距離感、攻撃タイミング、環境の利用——すべてが身についた。
丘を抜けた洞窟の安全地帯に移動する。岩陰やくぼみを利用して休息しながら、体力と魔力を回復。息を整え、戦闘の反省と次の計画を頭の中で整理する。
「……さて、次は何を手に入れようか」
洞窟内の隅に、小さな光を放つ宝箱を見つける。土に半分埋まった古い箱だ。慎重に開けると、中には巻物と光る小さな宝石が入っていた。巻物には【飛斬撃 Lv.10】の文字が浮かぶ。飛び上がりながら斬撃を繰り出す、高速攻撃系スキルだ。ゲーム時代でも破格の威力で、戦術の幅が大きく広がる。
次に宝石――**【経験のネックレス】**を取り出す。装備すれば経験値獲得量が1.5倍になる、ぶっ壊れ級のアイテムだ。日高は思わず目を見開き、胸の前で宝石を握りしめる。
「これだ、これだよ……!」
ゲームで夢見たアイテムが現実になった瞬間、胸の中に高揚感があふれる。巻物を腰に巻き、ネックレスを首にかける。鉄の剣を握り直すと、冒険心と期待がさらに膨らんだ。
安全地帯で休息しながら、日高は次の計画を練る。今回の探索で戦闘力は確実に上がった。スキル精度も向上し、無限バックや経験のネックレスの力で遠征の効率も格段に高まった。
「よし……次はここに来た目的の一つだ、経験値稼ぎの場所だ!」
◆
洞窟の奥深く、日高は鉄の剣(攻撃+14)と無限バック、経験のネックレスを装備して足を進める。安全地帯で体力と魔力を整え、今回の目的を再確認した。
「ここに来た目的の一つ……経験値稼ぎだ」
洞窟内は薄暗く、湿った空気が足元を冷やす。先に進むほど、敵の気配が濃くなる。宝石の秘境――ゲームではクリア後のDLCでしか入れなかった、ぶっ壊れ級の隠しエリアだ。出現する敵はマイン系のみ。攻撃力は低いが、防御力が極めて高い。通常攻撃だけではほとんどダメージを与えられない、長期戦必至の相手だ。
最初に遭遇したのはマインロック。攻撃は単純だが防御が固く、剣で叩きつけてもびくともしない。日高は波流で攻撃を受け流し、ステップで位置をずらす。通常攻撃は効きにくいと判断し、腰の無限バックからピッケルを取り出した。
「よし……これで防御の固い相手も削れる!」
ピッケルに魔力付与Lv.3を施し、投げつけて戻令で手元に呼び戻す戦法を繰り返す。マインロックの硬い防御を少しずつ削り、効率的に経験値を獲得する。倒すと得られる経験値は高く、長期戦の手間を差し引いても十分に価値がある。
しばらく進むと、ブロンズマインが現れる。希少ドロップの聖銅インゴット狙いで慎重に攻撃。硬い防御を波流で受け流し、飛斬撃で隙を突く。戦闘中、日高はゲーム知識をフル活用して敵の行動パターンを把握し、複数のマイン系を効率よく倒すことで戦闘スキルの精度も向上する。
洞窟奥を進み、安全地帯で休息を挟みつつ再び奥へ。すると空気がひんやりと変わる瞬間、地面が微かに震えた。巨大な影――エクストラマインが姿を現す。
体長5メートルを超える巨体、漆黒の岩のような体。防御力はマイン系最強、出現率は0.1%。日高は一瞬息をのむが、迷わず構えた。
「来い……エクストラマイン!」
長期戦を覚悟しつつ、波流で攻撃を受け流し、ステップで距離を調整。魔力付与+飛斬撃で隙をつき、ピッケルを投げて牽制、戻令で手元に呼び戻す。鉄の剣で連続攻撃を加え、硬い防御を攻略する。時間はかかったが、日高はゲーム知識で攻撃パターンを完全に把握し、ついに巨体を崩すことに成功した。
戦闘後、エクストラマインの体から光る宝箱が出現。中身を開くと、眩い光を放つ武器――【聖獣の太刀】。
手に取った瞬間、日高の胸に懐かしい感覚が蘇る。
「……これか。ゲーム時代に、何度も振った武器だ」
重さや握り心地、刀身から伝わる力の感触――すべてが記憶の中の感覚と一致する。固有スキル【聖獣斬】、獣系モンスター相手で攻撃力2倍という追加効果も手に入れた。
•攻撃+61
•追加効果:獣系モンスターに対して攻撃力2倍
•固有スキル:聖獣斬
日高は軽く刀身を振り、感触を確かめる。
「なるほど……この武器なら、獣系相手でも俺なら完璧に扱える」
胸に力強さを感じ、これまでの修行と戦闘経験が確実に自分の糧になったことを実感する。次の探索、次の戦闘への胸の高鳴りを抑えつつ、日高は洞窟奥へ一歩を踏み出す。陽だまりの丘の冒険は、まだ始まったばかりだ。
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