第40話 俺の考えた最強のダンジョン

 ラーシュとのを使った熱い夜を経て、俺のハーレムにはまた一人、個性的で強力な『技』を持つメンバーが加わった。


 剣のベリアス、智のロシエル、目のウェリネ、そして技のラーシュ。

 ……役者は揃った。


(これでようやく俺が理想とする絶対に死なない快適ハーレムダンジョンの建設に取り掛かれる!)


 これまでは場当たり的に防衛強化に終始していた。

 だがロシエルによるソフトウェア開発、ウェリネによる環境整備、そしてラーシュによるハードウェア製造の目処が立った今、俺がゲーマーとして培ってきた知識――すなわち、プレイヤー視点から見た『俺の考えた最強のダンジョン』――を実現する時が来たのだ。


 俺は玉座の間にアザゼル、ベリアス、ロシエル、ウェリネ、ラーシュ、そしてリリアを集め、ダンジョンの構造図を空間に投影した。


「さて、皆の者。これより、我がダンジョンの大改装計画を発表する!」


 俺の宣言に全員が真剣な表情で図面を見つめる。


「目的は二つ。第一に、侵入してくる冒険者どもから効率的に魂と装備を回収すること。第二に、いかなる強敵もこのダンジョンコアに到達させない、完璧な防衛網を構築することだ」


 俺は図面の第一階層を指し示した。


「まず、第一階層。ここは誘い込みのステージとする。配置するのはスケルトンやゴブリンといった低級モンスターのみ。あえて攻略しやすいように見せかけ、駆け出しから中堅までの冒険者を積極的に誘い込み、リソース回収の狩り場とするのだ」


「なるほど……。罠を警戒させず、油断させるわけですわね」


 次に第二階層を指す。


「第二階層は自動迎撃のステージ。ここからは本格的な排除にかかる。ラーシュとロシエルが共同開発した新型トラップ――落とし穴、毒ガス、回転刃、隠し毒矢などを複合的に配置し、モンスターに頼らない完全自動の防衛ラインとする。ここで大半の侵入者は脱落するだろう」


「へへん! アタシの仕掛けとロシエルの制御があればハエ一匹通さねえぜ!」


 続いて第三階層。


「第三階層はアンデッド地獄だ。ロシエルの魂リサイクルによって生み出された高位アンデッド――リッチ、デュラハン、デス・ソルジャーなどを主力とする。生前の戦闘経験を持つ彼らは、連携も巧みであり、並のパーティでは突破できまい。ここで精神的にも絶望を与える」


「私の研究の成果……存分に発揮させてみせます……!」


 そして第四階層。


「第四階層は鉄壁の門番。ラーシュとロシエルが生み出した最高傑作――魂搭載型・鋼鉄ゴーレムをボスとして配置する。物理・魔法双方に高い耐性を持ち、多彩な武装と自己修復能力を備えたこのゴーレムは勇者クラスでなければ単独での突破は不可能だろう。ここまでが、我々の手を煩わせない完全自動防衛ラインだ」


「ふふん! あのゴーレムはアタシとロシエルの自信作だからな!」


 俺は一度言葉を切り、第五階層を強調する。


「ここから先は、手動での迎撃となる。第五階層は最後の砦。ベリアス、お前が率いるアンデッド騎士団の精鋭による最終防衛ラインだ。第四階層を突破するほどの猛者に対しては、お前の『剣』で確実に仕留めてもらう」


「はっ! 御意! このベリアス、必ずや陛下をお守りいたします!」


 このところ一人でダンジョンを守り通したベリアスは、出会ったころよりもはるかに成長している。

 もはや俺が助けに向かうことなどないだろう。


「そして第六階層。ここは魔王の間。万が一、第五階層が突破された場合……我とアザゼルが自ら迎え撃つ決戦の場とする。ここまで到達できる者は勇者レオンハルト以外には考えられん。ここで俺たちの全力をもって奴を叩き潰す」


「ふふふ……陛下と共に戦えるとは光栄ですわ」


 俺は図面を下層へとスクロールさせる。


「第七階層はラーシュの工房とする。もちろん、不法侵入者へのおもてなしとして最高級のトラップを満載しておく」


「おう! アタシの仕事場に土足で踏み込む奴はミンチにしてやるぜ!」


 ラーシュ自身の戦闘力も並みの冒険者では太刀打ちできないだろう。


「第八階層はロシエルの研究室だ。ここは彼女が生み出したアンデッドたちによる厳重な警備体制を敷く」


「私の研究を邪魔する者は実験材料にしてあげます……」


 忘れがちだが、帝国仕込みの魔導士という一線級の戦闘職であるロシエルの魔法技術なら、大抵の魔法使いは敵わないだろう。

 

「第九階層はウェリネのダンジョンの森。美しい森だが、獰猛な魔獣や植物モンスターも生息させる。癒やしの空間であると同時に天然の要害とするのだ」


「はい。森の精霊たちも、ヴァエル様のために喜んで力を貸してくれるでしょう」

 

 ウェリネは争いを好まないタイプではあるが、エルフ譲りの魔法技術に弓術が合わされば大陸一の弓取りと呼んでも差し支えない。

 

「そして最下階、第十階層がこの玉座の間だ。ここには俺の命そのものであるダンジョンコアがある。ここを破壊されれば、俺は完全に消滅する。ゆえに、ここは最後の聖域であり、何人たりとも足を踏み入れさせてはならない」


 俺は全員を見渡し、改めて宣言した。


「以上が、我がダンジョンの全貌だ。上層で効率的にリソースを稼ぎ、中層で徹底的に消耗させ、下層で確実に仕留める。異論のある者はいるか?」


 俺の完璧な計画に、一同は感嘆と納得の表情を浮かべていた。


「「「異論ありません!」」」


「よし、ではこれで決定だ! 早速作業に移れ!」


 俺は満足げに頷き、早速、各担当者に具体的な指示を出し始めた。


 俺の理想とする、安全かつ快適で美女たちと永遠に堕落した日々を送れるハーレムダンジョンの完成はもう目前なのだ……!

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