ホリデーシーズンの真っ只中、寒さと陽気さ

@Lux_mundi

第1章 :楽屋の意外な魅力

「さあ、クラス。今日は体育です。体操着に着替えてください!」

その朝、体育教師の大きな声が6年生の雰囲気を壊した。


椅子がきしみ、バッグが開けられ、小さな足音が部屋に響き渡る。子供たちは慌てて体操着を取りにいった。

その中で、リュウ・ヤチはバッグを肩にかけ、落ち着いた足取りで歩いていた。彼の落ち着いた雰囲気は、賑やかな群衆から彼を隔離しているかのようだった。


彼が通り過ぎると、たちまち生徒たちの間でひそひそ声が上がった。

「あれ、あれが龍くん…」

「ええ、もう、すごくかっこいい。顔がすごく平べったいのに、やっぱりかっこいいわ。」

「シーッ、そんなに騒がないで。すごく静かなの。でも、みんな知ってるわ、彼が学年で一番人気者なの。」


リュウは振り返らず、表情も変えずにただ歩き続けた。そんなささやき声には慣れていた。まるで、気に留める必要のない日常茶飯事のように。


階段を降りていると、数人の女子後輩とすれ違った。彼を見ると、彼女たちは思わず丁寧にお辞儀をした。

「ほら、リュウ先輩よ!」と、一人がささやいた。

「どこで着替えるの?二階のロッカールームでは見たことないけど。」

「下で一人でいるのが好きだって言ってたよ。すごく謎めいた人だよね。」


リュウは振り返ることなく歩き続け、1階のロッカールームへと向かった。そこはいつも静かで、人混みから遠く離れた場所だった。彼は静けさを愛し、学校の喧騒の中で、ロッカールームはまるで自分だけのプライベート空間のように感じられた。


中に誰もいないことを確認すると、リュウはバッグをベンチに置き、制服のボタンを外し始めた。いつものように真っ白な制服が脱げ、ライトグレーのトラックスーツに姿を変えた。普段の生活と同じように、リュウは素早く、そして効率的に動いた。


スウェットパンツを履こうとしたまさにその時、ロッカールームのドアが突然開いた。


1年2組の女の子が慌てて現れた。何かを探しているようだった。本か、それともどこかに置き忘れた物か。部屋が空っぽではないことに全く気づいていない。


リュウの着替えに視線が合った途端、彼女の体は凍りついた。

視線は釘付けになり、心臓はドキドキと高鳴った。

顔がみるみるうちに熱くなった。


「ご、ごめんなさい、S先輩!!」彼女は慌てた声で叫び、すぐに深々と頭を下げ、勢いよくドアを閉めて飛び出した。


リュウは表情を変えず、数秒間ドアを見つめていた。

「……間違った場所に来てしまったようだ」と小声で呟き、いつものように着替えを始めた。


数分後、彼は教室に戻り、制服に着替えて、クラスメイトたちがすでに集まっている運動場へと歩いた。

体育教師が校庭の端にある大きな木の下でウォーミングアップの合図をした。明るい雰囲気で、そよ風が優しく吹き、クラスメイトたちの笑い声が響き渡っていた。


一方、庭の少し人目につかない隅では、1年2組の少女がベンチに座っていた。顔はまだ真っ赤だった。

彼女は激しく動く胸を手で押さえていた。

彼女は先ほどの出来事を何度も思い出した。冷淡なことで有名な龍先輩が、目の前に立っていた。あの瞬間がどれほど恥ずかしかったか、全く気づいていなかった。


そして、なぜか、それを忘れようとするたびに、頬が熱くなるのを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る