第29話 メープルVSマグマ男

「順当と言ったところかしら」


各試合の結果を確認したメープルは僅かな笑みを浮かべた。怪盗カメレオンにヨハネスが負けてしまったことは残念だが、李は引き分け、これまで負けが多かったムースが勝利した。


自分たちが戦いに来た意義があったと思い、改めて自分の敵に向き合う。

ピンクのベストに赤のナポレオンコ―ト、水色のスカーフの上衣に白のキュロットスカートと黒のストラップシューズのメープルの衣装は本気の戦闘の時にしか着ない特別なものだ。己の力を完全開放した状態で敵と向き合う。今回の戦いはメープルにとっても手の抜けないものだ。なにしろ人員が圧倒的に不足している。


急に異世界なんぞに旅行へ旅立ったスターたちを恨みながらも地球を守るために敵の打倒を思案する。


オレンジ色に輝く全身。光彩のない無感情な瞳。筋肉質の巨体は山の如き大きさ。

存在しているだけで猛烈な熱気を浴びるマグマ男にメープルは表情を歪めた。

意思をもったマグマなど聞いたこともないのだが、目の前に存在している。


額から流れる汗は暑さか恐怖か。非常に遅い動作で怪人は迫ってくるのだが、彼の動きひとつひとつが恐怖だった。


触れた時点で灼熱のマグマにより骨まで溶けるだろう。

液体状のボディには打撃も関節技も通じない。厄介な相手が当たったと思った。


けれど、彼女にとって唯一の幸いなのはリングが設置されているのがスイスのアルプス山脈だということだった。


リング内は燃えるような暑さだが、外は冷気の真っただ中だ。

恥も外聞もなく狭いリング内を回って時間を稼ぐ。掴まったら終わりなのだ。スピードでは勝ってはいるが精神的な圧迫感がものすごい。精神を削ってくる相手だ。


加えて言葉を発しないため会話による挑発もできず、得意の魔笛による自滅を狙おうとしてもマグマが衝突したところで意味はない。

メープルにとって最悪の相手だった。


李が引き分けムースが勝利した手前、ここで自分が負けたら彼女たちに合わせる顔がない。極限状態に追い込まれながら、最善の策を探る。と、マグマ男の動きが鈍くなってきた。吹き荒れる吹雪の影響で少しずつ身体が凍ってきているのだ。

金髪を吹雪に揺られながらも強い瞳で見返し、フッと笑う。


「神様は私に微笑んだみたいね」


凍っている太い腕を掴んで引っ張り後方に倒れながら巴投げを繰り出す。

マグマ男は勢いでリングから真っ逆さまに落ちていく。

やがて大爆発が轟いた。


メープルの勝利に終わったが長居すると雪崩が発生するので、メープルは瞬間移動で離れるのだった。


メープル=ラシックVSマグマ男 勝者 メープル

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