第20話 ヨハネスの髪技!

再びバックを奪ってジャーマンを放つが、今度は腕立ての要領で防がれた。

無防備な腕を使われると頭への衝突を防ぐことができる。

身を捻って技から逃れたカメレオンは服の埃を払う。


「一度目は受けても二度目はないようだねえ」


ヨハネスは内心で舌打ちをした。試合が長引くほどカメレオンは現代に適応する。

否、知らない技を吸収して強くなる可能性がある。一気に短時間で仕留めねば。

ヨハネスは自慢の長髪をゆらりと動かしたかと思うと一斉に解き放つ。

無数の髪がカメレオンを襲うが彼は涼しい顔だ。


「面白い技だけど、ただの髪だろう」

「それはどうかな?」


口角を上げるヨハネスに首を傾げるが異変は起きた。

捌こうとすると手の甲から出血したのだ。髪の毛一本一本が鋭利な刃と化している。


「さあ。君の捌きで対応できるかな?」


ヨハネスの顔に残忍な笑顔が宿る。

髪の毛に圧倒されロープ際まで追い詰められた。

あっという間に手首と足首、喉を締め上げられる。容赦なく全力で。


「ぐ……が……」


口から泡を噴き出し酸素を求めようと手を伸ばす。懸命に首から髪の毛を引き抜こうとするがヨハネスはさらに力を増して締め上げる。


「どうだい僕の髪の毛の味は」

「絶品でおかわりしたいぐらいだよ」

「お腹が破裂するまで食べたらいいよ」


髪の毛だけでカメレオンを軽々と宙に持ち上げ、何度もマットに叩きつける。

髪を鍛え続けたヨハネスだからこそできる技だ。

白目を剥き泡を噴いた様を見てヨハネスは髪の毛を外して見下ろした。


「昔は強かったのかもしれないけど、三百年のブランクはやはり侮れないよ」


ヨハネスは跳躍しフライングボディプレスでフォールを奪おうとする。

刹那、鋭い蹴りが喉元に食い込んだ。


「ゲホッ……ガハッ」


カウンターで急所を突かれて吐血し七転八倒するヨハネスとは対照的にカメレオンは口元の泡を拭ってゆっくりと立ち上がってくる。


「慢心は君の罠だね。擬態にも気づかないとは」

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