第二章 金の瞳の青年

「ようこそ、マイ。」


青年――ソウは草の上に座り、白いシャツの袖を風に揺らしていた。

金木犀に似た香りが、空気の中を流れる。


「ここは……どこですか?」

「君が“痛み”から解き放たれた場所。言葉にすれば、“異世界”ってところかな。」


マイは指先で草を触れた。

柔らかく、あたたかい。

確かにここは、生きている。


「……お姉ちゃんが心配なんです。」

「君の想いは、まだ現世に残っているんだね。」


マイは頷いた。

「一度だけ、戻りたいです。お姉ちゃんに、ちゃんと伝えたい。」


ソウは小さな袋を差し出した。

中には淡く光る金貨。


「一度きりの“通貨”だ。

 現世とこの世界の境界を渡るための代償。」


「……戻ったら、もうここに帰れないかもしれない。

 それでも、行くのかい?」


マイは唇を噛んだ。

「行きます。一度でいいから、会いたい。」


ソウは静かに頷いた。

「君が通る“門”は北の橋の向こうだ。気をつけて。

 未練が形を持つ場所だから。」


金貨を胸に抱き、マイは北へ歩き出した。

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