第17話 脱出成功
「さて、次こそは.....な」
俺は、彼女を鑑定してレベルが99だと言うことを知って唖然としたものの、何とか自分を奮い立たせて脱出を決意した。
「はぁ、そういえば、こんな生活を続けてたら何故かレベルが上がっちまってたな」
本当に何でかは分からない。
精神面で、か?
「だとすれば、レベルが99になるまで待つか.....?」
いや、無理か。
俺が壊れてしまうだろう。
「んじゃあ、脱出するとして、この拘束具は取れないとするならば.....」
……どんな方法があるだろうか?
手段を取っている暇などない。
「......っ、まぁ、あれが一番かな」
俺は、死を覚悟しながらも作戦を練ることにした。
―――それから、二日が経った。
「今日も......皆んなが居なくて、ね。ごめんね?アルトくん.....っ、私なんかが世話しちゃって」
んじゃあこの手錠を退けてください。
―――とは、言えないよなあ。
「ああ」
俺は適当に返事をして、彼女がどこかへ行くのを待つ。というか、彼女らは何をしているんだ?
最近、レナが看護することが多くなっている。
……一体何を企んでいる?
「それじゃあ......飯作るからね?もう、逃げないでねっ?ねぇ?」
心配そうに俺に顔を覗かせてそう問う。
「あ、ああ」
俺はそう言う。
そして、作り笑顔を見せて安心させようとする。
「......っ」
彼女から見て、俺の笑顔がどう見えたのかは知らないが。
「よし、離れたな」
俺は意を決する。
……その前に。
「あそこから出て、猛ダッシュ.....か」
俺は近くにある窓を見ながらそう呟く。
……ちゃんとルートは確認しとかないとな。なんせ、鎖は解けても捕まってしまっては意味が無い。
「ふぅ.....っ」
俺は深呼吸をして覚悟を決める。
そして、ついに。
「エクスプロード」
そう、発した。
―――ドゴオオオオオオーン!!!
その瞬間、俺の腕が吹き飛んだ。
大きく、大きく、宙に舞う。
さながら、踊っているかのようだった。
「っ」
めちゃくちゃ痛え。
さすがに両腕を吹き飛ばすのは痛すぎた。
「ど、どうしたの.....っ?」
そして、彼女もまたこの轟音を駆けつけて来た。
まずい、こんな早くに来るとは。
「あ......あ......ぁ.....いやああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
甲高い声で発狂する。
さっきの轟音とはまた違ったうるささだ。
「.......は?」
俺は、恐怖が入り交じった困惑を経験する。
なぜならば……
「ぁ゛ぁ゛ぁ゛、ァルトぐんっ、アルドぐん゛........っ!」
……髪を掻きむしりながら、悲痛な顔をする彼女が居たからだ。それは、何をするか分からないといった感じで。
「まただ.....また腕が......私のぜいでっ.....私のぜ―――」
「レ、レナ?」
いきなり、バタン、と倒れた。
見てみると、完全に失神していた。
「何故だ....?」
少し、疑問に思う。
しかし、心配してはいなかった。
……ラッキーだとさえ思っていた。
「っらぁっ!」
俺は体当たりで窓を突き破る。
ガラスの破片が俺を、襲う。
「......っ」
俺は今、宙にいる。
……血がダラダラと出ている俺に対して、ガラスの破片は容赦なく突き刺さってくる。
これじゃあ、失血死してしまうな。
「まぁ、諸刃の剣よりかはマシか」
あれは、なんというか.....とにかく痛いだなんて言葉で片付けることはできない。絶対に。
「おいしょっ、と」
俺は受け身を取った。
案外、下までは高くなく、たったの7~8mだった。
「すまないな、レナっ」
その時、やっとレナに対しての申し訳なさや心配なとが込み上げてきた。
―――しかし
「逃げるか」
なによりも、もう捕まりたくないという恐怖の方が、今出てきたどの感情よりも勝っていた。
俺は、逃げる、逃げる、逃げ続ける。
そして、この森から俺は出ることを志す。
「本当に.....困ったことになっちまったよな」
レナはああだし、エリダヌスもああだし、いつの間にか、セリナもああだ。
しかも共同戦線なんか組んでしまっていて。
本当にどうしようもない。
「森を抜けた先は.....そうだな」
王都を目指そう。
さすれば、簡単には見つかったところで捕まらないだろう。―――彼女たちが本気でなければ。
「まぁ、少しでも安全性に富んだ所であれば良い。下手に隠居して見つかったら、誰も助けてくれやしないからな」
そして、人が多く住む王都に、まさか追われの身が居るとは思うまい。
その二つの理由から、俺の目的はそうなった。
「はぁっ、はぁっ!」
息が荒くなる。
それは、全速力で走ったことを意味している。
「休憩、なんか、して、られ......ない」
俺は、秘伝の薬がないことを酷く残念に思った。
せめて、あれさえあれば無限に走れたのになと。
―――ガサッ
聞きたくもない音が聞こえてしまった。
「なっ......もう追手がっ?」
レナ?エリダヌス?セリナ?
誰だ?誰なんだ?もうやめてくれ。もう、やめてくれ。本当に誰なんだ?誰、だ?
「クソっ!嫌だぞっ!俺はぁっ!」
走る走る走る走る走る走る。
嫌だ嫌だ嫌だ。捕まって溜まるか。
無我夢中、そんな言葉がばっちり当てはまるように、俺はさっきまでの疲れを忘れて走った。
ガサッ、ガサッ。
「はぁ.....っ?」
俺の走りに呼応するように、その音の出処は、近くなっている。
―――まずいまずいまずいまずい。
「あっ―――?」
俺は、転けてしまった。
あぁ、終わりなのか。ここで。
「ははっ、はははははっ」
情けない。
本当に、情けない。
「っ」
クソっ、クソっ、クソっクソっクソっ。
クソったれが。
―――クソが。
こんな所で終わりかよ。いやだ、いやだ。
「俺は、生きるぞ.....っ、絶対に」
そう発していると、その音はぴたりと止まった。
「な、なんだ?」
俺は困惑する。
さっきまで追っていたんじゃなかったのか?
「いや、あいつらのことだ」
また何か企んでいるのかもしれない。
「―――お前、久しい」
突然、声が聞こえてきた。
「お前は......」
姿は、全身を黒い革鎧で覆い、巨大な両刃の斧を担いだ人間の男.......つまり、前に俺を瀕死にさせた、―――あいつだった。
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──────次回は、「味方?」 です。
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