第5話
さぁて始まりました、検証のためのモンスターハウスRTA!
おぉっと!?そして終わりました!ミニガンで瞬殺です!
はい。
<レベルアップしました>
<レベルアップしました>
……………………
…………
<レベルアップしました>
レベル:24→30
さて……単騎+高速殲滅の結果は如何に?
時間にして前回同様、10秒ほどで静かになり、凄惨な屍達はドロップへと変化した。肝心の宝箱は……銅箱だった。
1ランク下がったけど、まぁそれでも十分レアリティの高い宝箱なので、結果オーライと言った所か。最初に銀箱見せられてると、ちょっとこう、なんというか。
微妙な気分にならざるを得ないと言いますか。
まぁ兎も角、開封してみます。
「おぉ……」
渋みのある金色をした古めかしい懐中時計。チェーンも付いていて骨董店に並んでいても違和感ない。背面には何らかの紋章が刻まれている。ゼンマイ式や電池式では無さそう。
つまりアーティファクトか。
アーティファクトとは、魔法やスキルの様な特殊能力が封入された道具の事で、主にダンジョンからのみ産出する特殊アイテムにカテゴライズされる。
似たような物で魔道具というものがある。
スキルで魔法などを付与された道具の事だが、アーティファクトと比べると2段階近く劣る性能差がある。
スキルレベルが高まれば逆転できそうだが、その時が来るのは更に未来だろう。
さてこの懐中時計だが、時間を示す針が不規則に動き回っている。早まったり遅かったり、反転したりと実に無秩序であり、この時計は自分が正確な時を知らせる道具であると忘れているようだ。
「用途不明だね…これどう使うの?」
手にとって見ても使い方が解らない。
神様のお詫びによる異世界転生ボーナスでお馴染みのスキル【鑑定】があれば用途が判明するのだけど、そんな便利なスキルは持ってない。
パッションでやってみるか……念じるとか?
懐中時計さん、日本時間で今何時?
不規則だった針が11時43分29、30、31……秒を指した。スマホでも確認するとピッタリ。そして10秒経つと、また不規則に動き出す。
マジかよ……念じれば今の時間を10秒間表記するアーティファクト、と判明した。
うーん……コレならアーティファクトじゃなくても良いよねってくらい用途が地味。売っても高くはないだろう。コレクターなら高値つけてくれるかも。
ただまぁこの懐中時計の雰囲気が好きだから売らない。
【重装展開】のドレスアーマーと見た目の相性が良いから、胸ポケットに入れておこうと思います。
ドレスアーマー姿で時間を確認するときに懐中時計を取り出す……って良くない?なんか癖に刺さる気がする。
ちょっと違うけど、エヴァーガーデン風味を感じる。
総括すると、銅箱と考えるとショボい内容だった。しかしまぁドレスアップ装飾品が入手できた、と考えましょうか。
はい。
「さて……ドロップ回収してっと」
結果としてゴブリン・オークの魔石多数。皮も多数。メインのオーク肉は5個ドロップ。家に2kg残ってるから全部売ってしまおうと思う。
レートが昨日と変わらずなら約200万円の利益になる。
オークマジで美味いなぁ……
と、一人で出てきた私に向けられる好奇の視線を無視し、ダンジョンを後にした。
*****
「飯田さーん」
「あ、はい」
受付で呼ばれたので赴く。
「査定結果ですが、ゴブリンの魔石59個で29,500円、オークの魔石41個で41,000円、皮が12枚で15,600円、オーク肉が5kgで2,012,550円の、合計2,098,650円になります。買取額が10万円を超過したので、自動的に振り込みとなりますが問題ありませんか?」
「はい」
「……はい、振り込みました。それでは、またのご利用をお待ちしています」
よし、コレでタワーシールド予算500万円の目処がたった。これを元本に特注しよう。
まだ面会までに時間があるので、家に帰ってオーク肉でも食べますか。丁度お昼ご飯だし。
という事で、帰宅した菜々は昼食を取り、約束の時間までのんびりしましたとさ。
*****
ダンジョンからほど近い街の一角。マップの案内に従い歩く、私服姿の菜々の姿があった。
「こんな所に喫茶店なんてあったんだ……」
裏路地に足を踏み入れると、夕日の影に隠れる様にひっそりと佇む喫茶店。
からんからんと鈴が鳴り入店すると、モダンな雰囲気のある穴場的な空間デザイン。コーヒーの芳醇な香り漂うゆったりとした場所だった。
「いらっしゃいませ。飯田様ですか?」
「え、あはい。そうです」
ごち◯さのお父さんの様な、白シャツに黒いベストの如何にもtheバリスタなイケオジが声をかけてきた。渋い声が素敵です。
「お連れ様がお待ちしています。ご案内いたします」
付いていくと、そこは個室。入室した瞬間、その人物―――辻さんが、ガバッと立ち上がって頭を下げた。
「あ、あの!鍛冶師の辻有紗です!本日はよろしくお願いいたします!」
彼女はフリル満載のピンクブラウスと黒のスカート。いわゆる地雷系という、菜々には縁のなかったファッションを着こなす可愛らしい女性だった。
ただ性格は病み系ではなく、元気よりのおどおどっ子というアンバランス感。
間違っても鍛冶師には見えない人物である。
まぁスキルで鍛冶を行う場合は炉などの設備が不要なので、作業着でなくとも問題はない。汚れるかもしれないけど。
「探索者の飯田菜々です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします!それで……えっと、そのご依頼内容はタワーシールドで、仕様は縦150cm幅60cm厚さ3cmの魔鋼を使用。重量は210kg相当でお間違いないですか?」
ここらへんは武具店で送ったメールと同じなので、頷いておく。
しかしとても早口で緊張していることが伺えるが、それもそうかと勝手に納得。この人にとっては初のご依頼獲得として、漸く巡ってきた実績を積むチャンスだ。
逸っているのだろう……落ち着いてほしい。私は逃げないよ〜
「それで、お打ち合わせの内容がデザインに関してですが、どういった感じに仕上げますか?」
「私の戦闘服と同じ雰囲気のデザインで仕上げてほしいんです」
菜々は席を立ち【重装展開】を発動した。
「おお〜可愛い!!」
おや?一瞬でおどおどしさが消えた。可愛いものに目がないタイプの人らしい。ゴスロリ系の服に身を包むのもそういう理由かな?
似合っているので良いと思います。
ゴスロリとは系統が異なるが、辻さんにはこのドレスアーマーのデザインが刺さったの様で、インスピレーションを刺激したのだろう。何やらメモ帳を取り出して文章を書き連ねている。
「因みに武器は何を使ってますか?」
「これです」
そして登場するミニガン。ダンジョンという環境化に置いては駆逐されつつあった現代火器の登場に、流石の辻さんも目を丸くする。
タワーシールドなんて盾職が使う物を注文するのだから、メイン武器はメイスなどの鈍器を想像していたのだう。
辻さんは妙に納得のいった表情で頷いた。
「あ〜…だから軍服風なんですね?」
「スキルが判断したので私からは何とも……」
こいつミニガン持ってるし……せや!軍服風のドレスアーマーにしたろ!
みたいな感じに決まったのかどうか。真相はダンジョンの中である。
要点を纏めたメモと、私の姿を交互に見る辻さんがラフスケッチを書き始める。
集中しているのか会話が途切れてしまったので、彼女の作品をスマホで眺めながら完成図を予想してみた。
アニメの魔法少女が持つようなファンシーな物から、ゴテゴテのゴシック調デザインの物まで実に様々なラインナップであり、装飾に関する引き出しがとても多いことが伺える。
この参考作品の中から、私のドレスアーマーに似合いそうなものを探すと、やはりゴシック調の物だろうか。
参考作品では深い青色の剣だが、コレを黒色に置き換え、構えている姿を想像すると……意外と似合っている気がする。
ただゴシック過ぎると、軍服風ドレスアーマーに似合わなそうだ。
「できた!こんな感じでどうでしょうか?」
手渡され、拝見する。
「おぉ……」
目の前に現れたのは、まるで戦場の象徴的シーンを描いた一枚のスケッチ。
黒を基調とした重厚な矩形の盾。その表面には、有紗特有の繊細な筆致でゴシック模様が簡単に描き込まれている。蔦のように絡み合う紋様は中央で一つの紋章を形作り、当に漆黒の鉄薔薇と言ったところだろうか。
かっこいい。
盾の縁には、現代的な軍装備を思わせる滑らかなカーブと補強リブ。無骨でありながら儀仗兵が持つような、不思議な美しさとの調和を感じられる。
ただちょっと、この構造はいらないかな。
「こののぞき窓は無しで。あくまで防御を優先でお願いします」
まぁあっても良いんだけど、現状透明で盾に使える鉱石は発見されていない。だからアクリルとかジルコニアだろうけど、魔法素材じゃないから如何せん強度確保に課題があると言うか……
菜々がそう言うと、有紗はぱっと笑顔を見せる。
「やっぱりそうですよね!見た目を損なわずに強度を確保するなら、ここを全面装甲にした方がいいと思ってました!」
なら最初にそれを出しなさい、と思ったけどデザインで面会兼打ち合わせを頼み込んだのは私なので黙っておく。
辻さんはページをめくると、のぞき窓無しバージョンの盾を装備した際の全体イメージが現れる。
そこには、ご丁寧に私が黒い軍服風ドレスアーマーを纏ったシルエットが描かれており、盾と衣装が一体化するような、統一されたデザインラフ。完成品のイメージが付きやすい工夫が成されていた。
う〜ん……これは良き。美的センスが余り無い私でも高評価を提示せざるを得ない映えた出来栄えだ。
「かっこいい」
思わず零れた言葉に、有紗の頬を指で掻く。
「あ、あはは……デザインは自信があるのに……自分でもどうしてコレで売れないのか解らないんですよね……自信も無くなっちゃいますね」
「それは単純に、辻さんのデザインを求めてる人が居ないからですね」
「え!?」
武具は大体無骨。可愛さ美しさよりもモン◯ンの武具みたいな格好良さ。探索者の男女比率等をカクカクシカジカと、実際に見てきた探索者達の姿を思い浮かべつつ、昨日思っていたことをオブラートに語る。
「…………なる、ほど。そういう事だったんですか……」
「ただ私は辻さんのデザインが好みだったので、ご依頼に来たんです。刺さる人には刺さりますから、自信はなくさないでください」
「ありがとうございます……」
考え込んでしまう辻さんを見て、内心ちょっと焦る。
ここで自信無くされたら私のタワーシールドがおじゃんになっちゃう。
それだけは止めてほしい。
因みに辻さんに助言をしてまで肩入れする理由としては、初の依頼人ということで印象づけしつつ、今後の成長を見越した伝を獲得することにある。
今後の探索者トレンドが変化するかもしれないし、それで有名になっても一見さんじゃないからスムーズにやり取りできそうだし。
謂わば投資だね。
将来の利益はオーダーメイド品などを直接依頼できる立場を手に入れられると考えると、この人に頼むべきでしょ。
って考えも持ってます。
短い沈黙のあと、辻さんは深く息を吸い込み、力強く頷いた。
「……ようやく原因がわかりました。ありがとうございます……」
「あくまで一探索者の考えなので、真に受けないでくださいよ?」
今まで見てきた……まだ3日目だけど……装備の傾向は極少数の探索者達のデータベースでしかない。精度はお察しだ。
「それと中央の薔薇なんですが、百合に変えることってできますか?」
「出来ます!修正しますね……はい!如何でしょうか?」
OKを出す。
個人的に百合の花が好きでしてね。
「では、このデザインで進めますね。盾素材は総魔鋼製。装飾は刻印彫り、仕上げは黒色マット仕上げ……ご要望の盾、必ず作ります!」
「よろしくお願いいたします」
こうして私のタワーシールド計画が動き出した。
因みに手付金として100万円を振り込みましたとさ。
――――――――――――――――――――――
お久しぶりです。
いやーだいぶ時間が経ってしまいましたね。
執筆時間を確保したいところですが……最近、緊急案件で二徹しまして。
久しぶりでしたこんなの。終わった朝に寝たら、起きて深夜ですから。
次の日が休みで良かった……と心底思いましたね。
今は落ち着いたのでゆっくり書いてます。
尚、生活バランスは壊れた模様。
やっぱ人間は夜行性にならないとダメですね!(錯乱)
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