第2話 おばさんの話

 ピピピ、ピピピ。タイマーがなった。正直まだ寝ていたいが、おばさんとのようを思い出し、おばさんの家へ着替えて向かった。



 ピンポーン。

「はーい。あっ、湊くん。」

「おはようございます。」

「まぁ中へ入って。」

「それでその稼げる方法というのは…」

「それじぁ、今からいう話を信じられる?」

「はい。稼げるのなら犯罪にだって染めてやる覚悟です。」

「わかったわ。今からいう話は誰にも話さない事。」

「はい。」

「その方法は…」




 今俺は、ある廃ビルの前に立っている。おばさんの話によれば、どうやらここらしい。今にも壊れそうな階段が、左にかかっている。一足踏み込んだ。しかし、年代相応の音ではなかった。ギシィーという音ではなく、カンといういかにも錆びている見た目とは裏腹の音がしていた。そしてドアを開ける。いらっしゃいませ。お客さはご来店は初めてでございますね。



 おばさんが話したのはこうだった。ある廃ビルの二階にある、テナントには、自分の才能や未来、寿命、そして記憶を買い取ってくれる場所があるのだという。


「お客様、初見でここへ来られたという事は、誰かのご紹介でございますか?」

「はい。そうです。買取をお願いしたくて。」


席に案内された。そこへ座り、前にいる女店員に話しかけた。

「どのプランをお希望になさいますか?」

「とりあえず、才能の買取で。居酒屋で得た経験全部ですね。」

「わかりました。そちらですと、30円になります。」

「そ、そんなに安いんですか?」

流石に信じられない。いくらなんでも安すぎないのだろうか。すると女店員は答える。

「ええ。それだけです。それに、居酒屋でのアルバイト経験は、ごく一般的ですし、レアリティーや社会貢献度も低いですから。」

「な、なら、実家での農作業と、英検準一級も追加します。」

「それですと、農作業の方は2万円、英検の方は5000円、合わせて2万5000円ですね。」

「じゃ、じゃぁ、記憶の買取で農作業の記憶と高校までで習った、古文とか物理とか、そういう普段使わないのも全部売ります。」

「それですと、おぉ。3万円と2000円になります。」

「ふざけんじゃねぇ!」

正直、ムカついた。これぐらいしか価値がないのか。でもそうなのかもしれない。居酒屋などの飲食店でのバイトは、多くの人がやっている経験だろうし、英検だって時間をかければ誰でも取ることができる。が、家賃すら3回滞納し、とにかく危うい。とにかくとにかく焦っていた。そして俺は人生最大の過ちを起こす。

「も、もうすべてすべて売ってやる。才能も、記憶も全部売ってやる!!!」

女店員は驚いていた。いや、畏怖していたと言っても過言じゃない。



 俺の口座には1000万という大金が入っていた。俺には、寿命だけが残っていた。どうやら記憶などはすぐなくなるわけでもなく、30日後から少しずつ、けれど確実にどんどん消えていくらしい。

 家に帰ると俺はすぐ布団に潜った。そして俺は今日という日をシャットアウトした。

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