第三十話 大永四年、武蔵の戦況
氏綱は、二月に岩槻城を攻撃して落城させ、扇谷兵三千を討ち取る勝利を収めた(岩槻城の戦い)。三月には蕨城も攻略し、上杉朝興は追い詰められ、藤田の陣へと移った。扇谷上杉朝興は山内上杉憲房の支援を受けて、関係が悪化していた古河公方足利高基と和睦し、さらに甲斐守護武田信虎とも結んで北条包囲網を形成した。
六月、北条方に付いていた太田資頼が裏切り、七月には武田信虎が岩槻城を攻め落とした。この時、農民兵の犠牲が多くなり、やむなく撤退。氏綱は朝興と和睦を結んだものの、毛呂城の引き渡しを余儀なくされた。
撤退に関連して、別働隊が武田信虎への攻撃を実施した。周辺の警護の者や側近を死傷させ、信虎の腹部への銃撃で、今回はヤバいかもしれない。
アサガオ柄のノリタ〇風ティーカップで紅茶を飲みながら、幻庵(高橋是清)と戦況を聞き、今後の戦を考える閣下、そして新作スイーツを食べる氏康が突然。
「直道殿、火力が足りないです」と話し始める。なんだ?
「おっと失礼。管理官より依頼され、参上した。某、石原莞爾と申す。儂は、『協調性に欠ける』と言われ、陸軍内部での孤立を招いたが、敗戦が濃厚な時の軍や政治家は狂っていた。それは歴史が証明している。今は、この北条をどう生かすかに儂の人生をかけようと思う」
驚いた……。
二人目の閣下、世界が認めた「戦争の天才」。隊でも尊敬された伝説の人物だ……。しばらくフリーズした。
氏康(石原莞爾)は、武器や地理情報、人員情報など軍関係の情報がインストールされ、「勇者であり賢者でもある」状態だ。銃火器の話に戻った。
「次回あたりから中隊に百二十ミリ迫撃砲(射程八キロ)を導入しますか?」
「百二十ミリ迫撃砲よりも八十四ミリ無反動砲の方が良い。迫撃砲は急がなくても良い。出来れば自動車と無線機を!」
などと会話して、常備軍の拡大が急務であることと、予備役のことも考えていた。
ステンレスを作るために、今川の藤枝、市ノ瀬あたりからクロム鉄鉱の採取をお願いした。金属の錆対策と強化のためだ。アルミ製造のためには、手始めに小型のモーターを作り、その動力としてニコラ・テスラの小型ブレードレスタービンで実験し、最終的には大型のステンレス製にする予定だ。電力が足りないので融解塩電解ができないが、材料の蛍石はあるが、肝心のボーキサイトがない状態なので、焦る必要はない。
今の農民も予備役だが、訓練と規律がない。やはり、一定期間の教育が必要だ。農民にも常備軍への募集を検討してみることもありだ。識字率が低いので、それも教育しなければならず、通常の武士より時間がかかるが、衣食住と少しの給料で字も覚え、訓練で健康で強い肉体が手に入る。何より規律ある人間として生まれ変わるのだ。
それと兵学校では便宜上、苗字を与えている。例えば、平塚の山城村から来た留吉は山城留吉となる。これで、相当数の常備軍の増加になるはずだ。退役軍人には田畑を与え、退役後の生活安定のために貸与する。この内容を提案しておいた。
ちなみに、俺は伊勢を名乗っている。幻庵(高橋是清)が「貴様は、小川だったな。今は立場上、伊勢を名乗れ。これは殿の命令じゃ……」と言う次第です。まあ、芳の婿ですから。
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