となりの町のオマツリ

有巣結夢

マツリノヨル

「今日はとなりの町で大きなオマツリがあるから、久しぶりに家族三人で出かけようね」

 

 めずらしくパパが、ニコニコしながら話しかけてくれた。

 

「オマツリ……?」

「君のような子どもがいっぱいいる、楽しいイベントだよ」

「なつかしいね。ママも子どもの時、よくみんなといっしょにオカシをもらいに行ってたわ」

 

 この村は“オトシヨリ”ばかりだから、わたし以外の子どもに会ったことがない。

 “みんなといっしょ”も、知らない。

 

「オカシが、もらえるの?」

「子どものためのオマツリだから、他の子について行けば、いっぱいもらえるよ」

「そういえば、となりの町に連れて行くのも、初めてになるね」

「ここよりもずっとニギヤカな、いい町だよ」


 パパとママ以外の人と喋ったことがないから、ちょっとコワい。

 でも、家族三人で出かけたこともないから、やはり行きたい。

 でもでも、夜になると、オバケが……


「ほら、これを着なさい。ママがこの日のために作ったわ」


 わたしのヘンジを待たずに、ママがもう、お出かけの服をヨウイしてくれた。

 ベッドのシーツでできた、変なワンピースだった。


「はぐれないように、ちゃんとお手手を繋ごうね」

 

 そう言ってママは、わたしの手をギュッとにぎってくれた。

 あたたかい。

 

 そしたらパパも同じように、手をギュッとにぎってくれた。

 すっごくあたたかい。

 やはり今日のパパは、今までで一番、キゲンがいい。


 二人はサイキン、いっつもケンカしてるから、やっとナカナオリができたみたいで、私も嬉しくなった。

 三人で手をつないだまま、家から出た。

 なんだか、変な感じ。

 

 初めて歩く山みちに、初めての町。

 大きな“モン”をくぐったら、子どもたちのはしゃぎ声がいっぱい聞こえた。


「「「トリック、オア、トリーーート!」」」


 初めてきく、変なコトバ。


「せっかくだから、あなたももらってきなさい。トリックオアトリートって、一緒にとなえるのよ」

「いい、オカシなんていらない」

 

 知らない人から食べ物をもらっちゃダメって、いつもママは言ってるのに。


「あんた、カボチャなんかかぶって、クサくないの?」

「クサくねぇよ!お前こそ、ホウキなんか持って、汚くないの?」

「汚くないもん!いつもマホウでキレイにしてあるもん!」


 さっきとは別の、変なカッコウをした子どもたちが、ケンカしながら町に入ってきた。

 

「ほら、せっかくのオマツリだから、お前も行ってこい」

「いいの。パパとママがいっしょにいれば、いいの。」

「もう、ガンジョウな子だね」


 なぜかママがいつものようにフキゲンになって、ちょっとコワイ。

 ムリヤリ手をひっぱられて、あの子たちの前までつれていかれた。


「ねぇ、あなたたち、この町の子どもなの?」

「そうだよ、あたしがリリィで、こいつがジャック」

「オバさんたち、初めて見るカオだね、ヨソからの人?」

「そうだ。となりの町から、オマツリを見にきたの。うちのムスメ、オマツリが初めてだから、よかったらナカマに入れてくれない?

「ほらあなたも、ちゃんとアイサツしなさい」


 きゅうに二人の前に推し出されて、わたしはなんだかコワくなって、何も言えなかった。


「あらぁ、かわいいシーツオバケちゃんね、あなた、お名前は?」

「わ、わたしは……」

 

 トガったボウシの女の子が両手で手をにぎってくれた。

 ちょっとつめたい。

 

「そんなの、あとでもいいから、早くいかないと、オカシがぜんぶ取られちゃう」


 カボチャあたまの男の子が反対の手を掴んだ。

 やはりつめたい。


「これであんたも、あたしたちのナカマだから、いっぱいあそぼうね」

「その前に、まずはオカシだ、オカシ」


 やはりこの子たちも、わたしのヘンジをきいてくれないまま、町の中へ走り出した。

 二人にひっぱられたまま、わたしもついて行くしかなかった。


「うちの子をよろしくね」

「コロばないように、気をつけるんだぞ――」


 うしろから、パパとママのやさしい声がきこえた。

 ――この世でサイゴにきいた、かぞくの声だった。

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