第一章

第1話

 朝の光が、カーテンの隙間から細く差し込んでいた。

 まぶたを焼くような白さに、俺はゆっくり目を開ける。


 …頭が重い。

 ああそうだ、昨日はヘッドギアを外さずに寝落ちしたんだった。首が痛いな。

「ん…ふぁ…」

 寝ぼけたまま上体を起こした瞬間、何か違和感が走った。

 ――胸が、重い?

 寝巻にしていたTシャツの胸元がぱつぱつに張っていて、俺の動きに合わせて何かが揺れる。

「え…?」

 視線を下に向ける。そこにあったのは、胸の谷間。しかも、結構大きい。

 俺は震える手でTシャツの襟を伸ばして上から覗き込む。ピンク色の乳首が、ぷくりと主張していた。持ち上げると、意外と重たく感じる。

「な、何だこれ…⁉」

 慌てて両手を下半身トランクスの中へ突っ込む。しかし長年連れ添った俺のモノがない。代わりに、ぷにぷにした割れ目が存在していた。太ももに肉が付き、お尻が丸く張ってる。短髪だった髪は肩まで伸びていた。その艶やかな黒髪が視界の端にさらりと落ちてくる。

 俺はバランス感覚の狂った体で洗面所に立つ。鏡の中には、赤い瞳で俺を見つめる少女が居た。

 混乱が頭を埋め尽くす。しかしこの体には何処か見憶えがある。

 これは俺がこだわりにこだわって、二週間掛けて作った渾身のマイ美少女アバター、『レン』の姿だ。

 混乱、疑問、放心――全てが俺に襲い掛かり、脳がショートする。


 だが、それでも――。

 俺は震える手で自分の胸をそっと触り、そっと押し返し、そっと確かめ――


「……おっぱいって、マジで柔らかいんだ……!」

 心から叫んでいた。

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