元会社の同僚に電話する

―― プルルルッ……プルルルッ……ガチャ


『もしもしー? 誰っすか?』

「おっす。俺だよ俺。久しぶりだなー」

『あぁ、なんだお前かよ。はは、久しぶりだな。最近どうよ。元気してるかー?』


 桜木山の社から出てすぐ。俺は元会社の同僚に電話した。久々に同僚の声が聞けて何だか嬉しくなる。


「それなりに元気だよ。そっちはどうだ? 汗水出して働いてるか?」

『おう、毎日サビ残しながら頑張って働いてるよ。今も会社で働いてる所だしな。土曜日だっていうのに何で働かなきゃなんねぇんだよ。全く……』

「あー、休出か。それは辛すぎるな。ま、お前の仕事が片付いたらまた飲みにでも行こうぜ」

『おう、飲み会の誘いは大歓迎だよ。それじゃあ近い内に飲みに行こうぜ。そんでせっかくだしまた近い内にキャバクラとか風俗でぱーっと遊びに行こうぜ。最近仕事ばっかで女遊び全然出来てねぇからたまにはやりたいなー』

「はは、わかったよ。それじゃあ俺の方で良さそうなキャバとか風俗とか探しといてやるよ」

『まじか。それは嬉しいな。それじゃあ来月辺りにでも飲みに行こうぜ』

「おう。わかった」


 俺は元同僚と久々に飲みに行こうと約束を交わしていった。来月が待ち遠しいな。


『それで? 今日は何で電話をしてきてくれたんだ? 飲みの誘いに電話してくれたのか?』

「まぁそれもあるけど、ちょっと暇だったから世間話でもしようかなって思って電話したんだ。でも仕事中なら切った方が良いよな?」

『いや構わねぇよ。どうせ休出手当も出ねぇんだし、ダチとの電話くらい別に良いだろ。って事で楽しく話そうぜ』

「はは、それなら良かった。最近会社はどんな感じよ」

『どんな感じも変わらずひでぇ職場だよ。あのクソ上司毎日のように俺達の事を罵ってきやがる。お前がクビになったのを見てるからもう誰も口答え出来ねぇって感じだな』

「まじかよ。やっぱりアイツ終わってんな」

『あぁ、マジでな。皆クビになりたくはねぇから必死に頑張って仕事してる感じだ。俺も今日はサービス出勤だからな。大晦日前だってのに……はぁ、マジでつれぇよ……』

「年末なのにサービス出勤を強要されるとか辛いな。体調とかメンタル壊さないように気を付けろよ」

『もちろん体調とかそういうのは気を付けてるよ。でもこのご時世会社をクビになったらかなりキツイってのわかってるのに……あのクソ上司マジで人間として終わってるわ。って、そうだ。お前会社クビになった後大丈夫なのか? 仕事は見つかったのか? 就職活動やっぱりキツい感じだったか?』

「いや、今はやりたい事があるから就職活動はあんまりしてないんだ。日雇いのバイトで金を稼いでる感じだ」

『やりたい事? なんか資格でも取ろうとしてる感じか?』

「あぁ。まぁそんな感じだな」

『なるほどな。今は就職氷河期だし、そういう資格勉強は大事かもしれないな』

「そうそう。まぁ今までの貯金もあるし、少ないけど退職金も貰えたから、しらばくの間は自分のために時間を使おうって思ってるんだ」

『へぇ、それは大人な心掛けだな。なんか取得した方が良さそうな資格とかあったら教えてくれよ』

「はは、わかったよ」


 元同僚とそんな会話をしていった。もちろん今まで資格勉強をしてた訳ではない。クソ上司をどうにかして殺す方法をずっと考えて今まで過ごしてただけだ。


 マジでこの就職氷河期時代にあんな方法で会社をクビにしてくるなんて許されざる行為だからな。絶対に報いを受けさせなきゃ気がすまねぇからよ……。


『……って、うわっ! クソ上司からメール飛んできたわ。急いで返さないとまずいから一旦電話切るわ。すまん』

「わかった。仕事中に長電話しちゃってすまんな。それじゃあまた改めて違う日に電話するわ。クソ上司の悪口で今度盛り上がろうぜー」

「はは、それ面白そうだな。わかった。それじゃあ近い内にクソ上司の悪口で語り明かそうぜ!」

「おう。それとあのクソ上司が不幸な目とかに遭ったら俺にも教えてくれよ。お前と一緒に笑ってやりてぇからさ」

『はは、もちろん良いよ。そんじゃあ何か面白そうな事件とか起きたらすぐにお前に報告してやるよ。そんじゃあまたなー』

「おう、またな」


―― プツッ……プー……プー……


 元同僚との通話が終了した。これであのクソ上司の身に何か起きたらすぐにわかる。何も起きない可能性の方が高いだろうけど、まぁ一万円だしそれくらいなら全然構わないよな。

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