桜木山の頂上に到着すると
一服を済ませた後。俺は桜木山の中に入った。
30~40分ほど歩いていくとすぐに山頂に到着した。そして奥の方には古びた社が立っていた。
「メールでの話によると桜木山に呪術師がいるらしいけど、それだとあの社の中にいるって事なのか?」
―― シュボッ……
俺はそう呟きながらタバコに火を付けた。何だかうさんくせぇ気もするけど、まぁ嘘だったとしても9ちゃんのネタになるしどっちでも良いか――。
「おや。こんな山の中で人と会うなんて珍しいですね。登山客ですか?」
「ん? って、うわっ!?」
急に後ろから声をかけられた。振り返るとそこには着物を着た男が立っていたんだけど、俺はソイツを見て大きく驚いてしまった。
何故ならその男は全身包帯で覆われていたからだ。目を口以外の部分が全く見えないように全身を包帯で覆っている。まるでミイラ男のような姿だ。こんなのビビらない方がおかしい。
「驚かせてしまって申し訳ありません。昔に火事に巻き込まれてしまいましてね。その事故で全身に大火傷を負ってしまったのです。なので全身醜い姿となっているため、包帯で覆っているのです。大変お見苦しいとは思いますが何卒ご容赦ください」
「あ、あぁ、い、いや、別に構わない……」
包帯男はそう言って頭を下げてきた。何だか不気味な感じの男だ。でもこんな山頂で人と遭遇するなんて……もしかして社で働いてるヤツか?
「アンタ、もしかしてあそこの社で働いている人間か?」
「えぇ、そうですよ。見たところアナタ様は町民ではないように見受けられますが、ひょっとしてアナタ様はこの桜木山の社に用事でもあるのでしょうか?」
「いや別に社に用事がある訳じゃない。俺はとある噂を聞いて桜木山を登ってみたんだ。その噂について良かったら社で働いてるアンタに話を聞かせて貰いたいんだが構わないか?」
「とある噂ですか? もちろん構いませんよ。一体どのような噂でしょうか?」
「この桜木山に呪術師がいるという噂を聞いたんだ。俺は呪術師に依頼したくてこの桜木山を登ったんだよ」
「……ほう、呪術師ですか」
「あぁ、そうだ。アンタは呪術師を知っているか?」
包帯男にそう尋ねていくと、包帯男はふふっと笑みを浮かべながらこう答えてきた。
「はい。知っております。正確には呪術師ではなく祈祷師ですが、まぁ今の時代はどちらでも同じ意味合いですから別に良いでしょう。私がその呪術師でございます」
「……え? アンタが呪術師なのか??」
「はい。左様でございます。という事はアナタ様は私のお客様という事ですか。それは嬉しい限りです。ですがアナタ様は呪術師の事をどうやって知ったのですか? 私が呪術師だという触れ込みは大々的には行ってないのですが、それなのに県外からどうしてアナタ様は私の事を知ったのですか?」
「ネットの9ちゃんねるで教えて貰ったんだ。この町に呪術師がいるってな」
「ふむ。ネットですか。最近流行っているらしいですね。私は流行りモノには疎いのでよくわかってはいないのですが、ネットを使うとそんな事まで調べられるなんて、凄い便利な世の中になったものですね」
「あぁ、そうなんだよ。それでネットで聞いた呪術師が本当にいるなら依頼を受けて貰いたくて、それで東京からここまで夜行バスを使ってやって来たんだ」
「アナタ様は東京からやって来たのですか。それは遠路はるばるお疲れさまでした。そんな遠方からわざわざやって来てくれたお客様を無下にする事は出来ませんね。わかりました。それでは早速アナタ様のお話を聞かせて貰いましょうか。それではどうぞ。社の中へ」
「あぁ、わかった」
俺はすぐにタバコの火を消していき、その呪術師を名乗る包帯男の後を付いて社の中に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます