第22話 小麦畑の林



 林のすきまからのぞいてみると、ぱっと見は異常ない。モンスターもいないし、獣道があって、端から端まででも、ほんの数メートルの距離だ。


 が、なぜか、なかに入ると、やたらに広大なダンジョンと化すんだよね。少なくとも、見ための十倍は広く感じる。おんなじとこグルグル歩かされてんのかなぁ?


「ちなみに双子。おまえら、これまでにダンジョン入ったことあっか?」

「ある。おれ、アルタイル。タイルでいいよ」

「ある。おれ、アンタレス。タレスでいいよ」

「……」


 区別つかん。


「どこのダンジョン?」

「どこって、街んなかにあるFクラスを何個か。なぁ、タレス」

「二人でちゃんと奥まで行って帰ってきたもんな。なぁ、タイル」


 どうでもいいけど、ややこしいな。顔そっくりなうえに、なんで名前まで似てんだ。兄妹みんな星の名前で、そろってるし、カッコいいとは思うけどさ。


「てことは、腕前的にはFには達してるってわけか。いいね」

「でも、適性とかわかんなくて」

「だよなぁ」

「魔法は使えんのか?」

「うーん?」

「うーん?」

「いっつも回復はどうしてんだよ?」

「そのへんの野原で薬草つんできて使ってる」

「ポーションなんか高くて買えねぇし」


 たくましい! さすが十一人兄妹!


「よし。じゃあ、行ってみようか。EクラスはそこまでFクラスと変わんないから大丈夫だ。敵がちょっと強くなるだけ。マスターもいないか、いたとしても、ザコモンが二、三匹まとめて出る」

「うす!」

「うす!」


 最初は小生意気かと思ったけど、意外と素直だな。よっぽど強くなりたいんだと見た。


 林のなかへわけいってくと、ダンジョンだってのに、春の花が咲いてて、いい匂いがした。のどかだな。でも、こういう原っぱっぽいダンジョンは気をつけないと、毒虫がよく出るんだよな。


 ——っていつてるそばから出たよ! デッカいデッカいイモムシだ。ビッグワームってモンスター。たまに毒液吐いてくるんだよね。


「よし。敵は一匹だな。まず、おまえらがふだん、どんな戦いかたしてるか見てやるよ。やってみな」

「おー!」

「おー!」


 この前のピヨピヨ戦法で、二人ならんで両側から同時攻撃するんだと思ってた。が、なぜか途中でタレス(もしくはタイル)が一歩前に出た。タイル(あるいはタレス)が片割れのかげに隠れるようにして近づいていく。


 何する気なんだ? あれじゃ、モンスターの攻撃が前のやつに集中するだろう。

 と思ってたら、


「やー!」


 前のタレス(もしくは略)が大声を出し、ビッグワームが彼に狙いをさだめる。そのすきにサッと背後からとびだしたタレル(あるいは略)が、すかさず、棒切れで敵をフルスイングした。


「ギャオーン!」


 叫び声をあげて、ビッグワームはのたうちまわる。かなり、きいてる。あ、でも、ヤバイ。まだ戦闘不能にはなってない。最後の力をふりしぼって、毒液噴射のかまえだ。


 あたしは急いでニーハイくつしたにさしこんだナイフをぬくと、ビッグワームにむけてなげつけた。トスンとキレイに眉間に刃が沈む。すまん。イモムシ。成仏してくれ。


「あっ、ちぇっ。おれたちだけでやれたのに」

「そうだ。そうだ。あと一撃だった」

「毒液かけられたら、このあと特訓になんねぇだろ? でも、なかなかよかったぞ」


 さすが双子だな。口ゲンカばっかしてるかと思いきや、いいコンビネーションだ。


「じゃあ、適性わかった?」

「おれは? おれは何?」

「まだわかんねぇよ。けど、二人とも太刀筋も悪くないし、とりあえず戦士でいいんじゃないか? 魔法が使えるかどうかは才能関係するしなぁ」

「ふうん」

「ふうん」


 妙に不満げ。


「なんだよ?」

「うちってさ。兄ちゃん僧侶だろ? 姉ちゃん、魔法使いなんだよ」

「母さんの実家がみんな魔法使いだったらしくてさ。ひいばあちゃんはA級魔法使いだったんだ!」


 へぇ。A級はスゴイね。世のなかにA級戦士は数多い。剣術は努力すれば、誰でも強くなっていけるもんだからだ。けど、僧侶や魔法使いは努力ではどうにもできない。それはもう生まれつきの素質があるか、ないか、なんだ。


 魔法使い一家に生まれたから、自分にもその才能があってほしいってことなんだな。


「わかった。じゃあ、次から魔法を使う訓練してみよう」

「えっ? どうするんだ?」

「呪文は? 呪文?」

「あたしはシーフだ。魔法は使えない。けど、兄貴が魔法使いだから、話には聞いてるんだ。兄貴が最初に魔法を使ったのは二歳のときらしい。一人でヨチヨチ歩きしてたら、こけかけた。あっと思った瞬間、クッションが下にすべりこんできて助かったんだそうだ。浮遊の魔術だな」

「スゲェ!」

「浮遊系はハーピーが使うやつじゃん。人間で使えんの、すごくめずらしいって聞いた」


 そうなんだよな。兄貴、天才ではあるんだ。頼りないけど。


「つまり、魔法を開花させるのは危険だ。生命の危機を感じたとき、人は身を守るために無意識に魔法を発動する」

「うん」

「うん。それで、どうすんの?」


 ニヤリ。


「モンスターが出ても、攻撃しない。呪文だけ唱え続けるんだ!」

「ああ……」

「毒液、受けちゃうんじゃ?」

「だからいいんだよ! 必死になったら、できるかもしんないだろ? ほんとに危険なときには、あたしが片づけてやるからさ」


 ふふふ。修行っぽくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る