21.再びアウリィ商会へ(2)

「まずは、前回と同じものをいくつか作ってきた」


 シオンさんがそういうと、私はアイテムボックスから装飾品を取り出した。どれも前回同様、丁寧に作り込んだものだ。


「あぁ、こんなに作ってきてくれたのね。じゃあ、一つずつ検品していくわね」


 その装飾品を見たリネアは嬉しそうな顔をして、チェックを始めた。チェックをする表情は真剣で、この人なら任せられるという期待が膨らんだ。


「うん、どれもいいわね。牙には綺麗な模様が掘ってあるし、しっぽは変わらずにふわふわ、もちもち。良い商品な上に絶大な効果のある能力も付与されている。低級素材でこれだけの商品が作られるのは素晴らしいわ」


 凄く称賛されている……。こんなに誰かに称賛されるのは初めてだから、どうしたらいいか分からない。


 だけど、嬉しい気持ちがある。私が一生懸命に作った物が誰かに認められる。それはとても凄いことだって思った。


「……はい。全部のチェックが終わった。どれも完璧で、小言をいう隙がないわ。これも、前回同様に……いえ、前回以上の値段で買わせて」

「えっ!? ぜ、前回と……その……同じに作った、んですけど……。値段、上がるんですか?」


 思わず驚いて声をかけてしまった。前回と同じように作ったのに、前回よりも値段が高くなるなんて……。


「これは人気商品だからね、確実に売れると分かっている物よ。少し値段が上がったぐらいで、買われないことはないわ」

「ヒナ、これは実績をかわれた結果だ」

「じ、実績って……私、まだ一回しか商品を卸してないです」

「その一回で十分だっていうことだろう。な、そうだろう?」

「えぇ、一回目であれだけの反響があったんだもの、売れないはずがない」


 ひぇぇっ、凄い自信だ。だけど、そう言ってもらえると、私も少し自信を持つことが出来る。


「あの……どれくらいの値段で、買い取って……もらえますか?」

「そうねぇ……。十万フォルでどうかしら?」

「十っ!? ば、倍に……なってます!」

「それだけの価値があるってことよ」


 ひええぇぇぇぇぇっ!? そ、そんなに高くして売れるの!? 私だったら、怖くて値段なんて上げられないよ! 商売人は違うな……。


「良かったな、ヒナ。倍の価値が付いたぞ。それだけ、ヒナの作った物が魅力的だっていうことだ」

「は、はいぃぃ~……う、嬉しいですけど、恐れ多いというか……」

「自信を持って。それだけの価値があるわ」


 うぅ……そんなこと言われても。


「でだ。実は新商品も持ってきた」

「えっ、新商品!? 見せて!」

「は、は、はいっ!」


 シオンさんが突発に言うから、リネアさんが凄い勢いで食いついてきた! 怯えながらも、アイテムボックスからナイフを取り出した。


「これは……ナイフ? へぇ……」


 一目見たリネアさんは嬉しそうな顔をした。手に取って、ナイフをチェックする。


「綺麗な模様が入った鞘は良いわね。持ち手は……わっ、何これ!? 手に吸いつくような感じでピッタリだわ! こ、これもヒナさんが作ったの?」

「は、はい……。木から、削って……整え、ました」

「木の加工も出来るなんて凄いわね。本当にヒナさんは何者? この手にフィットする感じ……凄いわ」


 良かった……。鞘も柄も気に入ってくれたみたいだ。それらは集中して作ったから、手間暇がかかっている。だから、喜んでもらえて嬉しい。


 すると、リネアさんが鞘からナイフを抜き取る。


「わっ……鏡? ……ナイフよね、これ。普通のナイフがこんなに綺麗に仕上がるなんて、一体どんなことをしたのよ」


 ナイフを見たリネアさんは驚いたように目を見開く。そして、色んな角度からナイフを眺めた。


「どうして、こんなに綺麗に……ん? ……まさか、そんな……」


 その時、リネアさんが驚いたように身を引いた。


「こ、これって……ゴブリンが持っているナイフなんじゃ」

「おぉ、良く気づいたな。それはゴブリンから入手したナイフだ」

「えっ!? あ、あのボロボロなナイフがこんな綺麗なナイフになるの!? ど、どんな事をしたの!?」

「ひぃっ!? ふふふ、普通に……こう……」

「ヒナさんの普通は普通じゃないわ!」


 わ、私的にはいつものようにしていただけなんだけど!


「まぁまぁ。切れ味を試してみろ」


 そう言って、シオンさんは太い木を差し出した。


「えっ……? この木を切れと?」

「面白い事になるぞ」


 それを見て驚くリネアさん。信じられなさそうな顔をしつつ、太い木に向かってナイフを振り下ろした。すると、スパッと太い木が二つに切れた。


「は? 何、この切れ味……。ただのゴブリンのナイフ、よね?」

「……はい。これくらいが、妥当かな……と」


 ナイフだし、これくらいの切れ味しか出せなかった。私の精一杯の加工だけど、気に入ってくれたかな?


「これぐらいが妥当ですって!? ヒナさん、これ、常識じゃありえないわよ! なにこの切り口! 鏡みたいに滑らか! しかも刃こぼれゼロ!? どうやったらこんな仕上がりになるの!」

「え、えっと……砥石で、研いで……」

「たったそれだけで、この切れ味!? 工房の職人が泣く仕上がりね! こんなナイフを簡単に作り出せるなんて、怖い!」


 えぇ!? ど、どうして私が怖がられるの!? 私の方が怖いのに!


 だけど、そんな絶叫してナイフを称えるリネアにシオンさんが――。


「それには能力が付与されているぞ」

「えっ!? か、確認してみ――はああぁぁぁぁぁぁっっっ!?」

「ひぅっ!」


 なんで、鋭い眼光でこっちを睨みつけるの!?


「な、な、な! なんなの、この能力!?『使用者の保護』っていう未知の能力が付いているんだけど!?」

「それはその名の通り、使用者が傷つかないために付けられた能力だ」

「てっきり、切れ味補強とか状態保存とかの能力付与だと思ったのに! 全く違う能力がついていて、ビックリしたんだけど!? ってか、その能力なしで、この状態をキープ出来るってどれだけ凄いナイフなの!? い、いやいや……それはそれで凄いけど、『使用者の保護』って、一体どんな難しい魔法を使えば、そんな能力が付くのよー!」


 ひぃぃっ、そんな迫力のある顔をして怒涛の勢いで語らないで欲しい! こ、こ、怖いぃぃっ!


「ほら、ヒナ。実演してやらんと、どれくらい凄いのか分からんぞ」

「えっ、あっ、はい」


 ビクビクしながらナイフを受け取ると、そのナイフを思いっきり自分の手首に向けて振り下ろした。


「ひっ!」


 リネアさんの悲鳴が聞こえた後、ナイフは私の手首に触れるとピタリと止まった。


「こ、こんな感じで……その……使用者が、傷つきません。なので、家事……とか、便利だと、思い……ます」

「ほ、本当ね……。この能力はとてつもなく便利ね」

「ヒナはこのナイフを家事用に使って欲しくて加工したらしい。家事の時に何に気を付けるかって考えた時に、傷つかないことが大事だと思ったらしいな。だから、体を守るためにこの能力を付けたみたいだ」


 あっ、シオンさんが説明してくれた。た、助かる……。


「このナイフ……どうですか?」


 控えめに聞いてみると、リネアさんは満面の笑みになった。


「とてつもなく、良いナイフよ! 切れ味も良いし、綺麗だし、能力が付与されている。十分に売れる素質を持っているわ」


 よ、良かったー! 売れないって言われたらどうしようかと思った! 自分の作った物が認められるのは、やっぱり嬉しい!


 で、でも……やっぱり人と対面するのは苦手だ。

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