第5話
【第五話】特別クラス ―ポイントとライバル
翌日、スピナーズ学園・特別訓練棟。
そこは、回転の音と熱気に満ちていた。
壁一面にステータスが映し出され、生徒たちはそれぞれの“軸”を磨いている。
「今日からここが、お前のクラスよ」
スズハが腕を組んで言う。
「……うわ、みんな回ってる。しかも速ぇ!」
「当然よ。ここは、ランクA以上のスピナーしかいないんだから」
レンは周囲を見渡す。
みんなの身体がまるで光の駒のように、一定のリズムで回っていた。
「新入り、レン・イトウだな」
「はい!」
「昨日の暴走、記録を見た。属性スピン――興味深い。
だが、制御できなければただの危険因子だ」
「……はい、頑張ります!」
九条は無表情で腕を組み、無機質な声で続ける。
「では本日より、“ポイント実戦訓練”を開始する。
敵を弾き飛ばす、回転を維持する、仲間を守る。
それぞれの行動に“ポイント”が加算される」
「ポイント……それがステータスを上げる鍵なんだな」
レンが呟くと、スズハが頷く。
「そう。勝負で勝つだけじゃない。
技の安定、連続回転、そして――見せる美しさも評価されるの」
「美しさ!?」
「スピナーは芸術よ!」
「……お前、熱いな」
スズハが照れ隠しのようにツンと顔をそらした。
「では行け、“ペアスピン戦”開始!」
九条の声と同時に、訓練フィールドの床が光を放つ。
ペアごとに二人一組。
レンとスズハも、自然と背中合わせになる。
「スズハ、俺に合わせてくれ!」
「わかってる!」
二人の軸が揃った瞬間――回転が加速する。
風が生まれ、床のラインが紅蓮の炎に染まる。
「これが……俺の“回転炎”!」
「調子に乗るなぁっ!」
スズハのツインテが風に舞い、二人の回転が合わさってリングを描いた。
敵ペアが突進してくる
「レン、来るよ!」
「任せろッ!」
レンが炎をまといながら軸を傾け、衝突。
爆ぜる音、火花、そして――敵ペアが吹き飛ぶ。
【SYSTEM:+25 OINTS】
光の文字が宙に浮かぶ。
「おおっ、出た! ポイント!」
「ふふ、やるじゃない!」
スズハの笑顔に、レンは胸が熱くなる。
戦闘後
「よし、今日はここまで!」
九条の声が響く。
レンの周囲には小さな炎の残光が漂っていた。
スズハが息を整えながら寄ってくる。
「……あんた、本当に制御できるようになってきたね」
「スズハが支えてくれたからだよ」
「ばっ……! 変なこと言わないで!」
顔を真っ赤にしてそっぽを向くスズハ。
その時
訓練場の扉が開いた。
入ってきたのは、銀髪の青年――目つきが鋭く、背筋が一直線に伸びている。
「……あいつは?」
「上級生。名はカイ・ユグド。
“鋼の回転軸”って呼ばれてる……!」
スズハが緊張した声で言う。
カイはレンの前に立つと、静かに言った。
「炎のスピナー、レン・イトウ。
お前の回転――少し借りたい」
「借りる? どういう意味だ?」
「次の選抜戦、“俺と戦え”。
本物の軸を持つ者かどうか、確かめたい」
そう言って、カイはくるりと回転し、風のように去っていった。
「レン……あの人、ヤバいわよ」
「面白そうじゃねぇか」
「ほんと、懲りないんだから……」
スズハが呆れながらも笑う。
夕陽の中、二人の影が回りながら伸びていく。
回転する風が、静かに次の戦いを告げていた――。
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