次の人生では、絶対に死にません。

真夜中20時

最初から異世界転生終了。

毎日夢を見る。

いつも私は死ぬのだ。


いつも、馬車の中から断頭台まで歩いて、首を飛ばされて処刑される。


いやらしいのは夢の中では、行動を強制されることだ。

つまり、毎回殺されるとわかっていながら、

ギロチンの刃がおろされるのをおとなしく待つというわけだ。


ちょうど二年前の高二の時くらいから始まった。

頭を打ってからだ。

やっぱり人間は不思議である。


もちろん、これを言うと「こいつなにか持っているのだろうか」と思われるかもしれないので、なにも言わない。


最初は、首が斬られたということがあまりにも新鮮で、毎日のように吐いていた。

夜が来ることが怖くて、寝ることを拒んでいた。


だが幸いなことに、夢の中の痛覚は現実に帰ってきたらなにも感じないのだ。


夢の中で痛覚を感じるのが吉とは言えないが、ギロチン即死はほかの処刑方法に比べたら、ずいぶん優しいだろう。


今ではすっかり慣れた。

朝、目を覚ますときに首がつながっているか軽く確認するだけである。


しかし、どれだけ時間がたってもこの癖は治らなかった。

生物の性であろう。


だが、その日は違った。


ちょうど、トラックにひかれそうになった子供がいた。

ボールを追って、道路に飛び出したのだ。


その瞬間、三十代半ばのような男が

反対側の歩道から駆け出した。


子供を突き飛ばしたが、男はひかれた。


しかし、死んではいなかった。

男は重体。ここで助けなければ死ぬ可能性がある。

助けなきゃ。


私の体はとっさに動いた。

男のほうへ、まっすぐ。


車が横から来ていた。


あ、これ死ぬやつだ。


その瞬間、なにかに押されたような感じがした。


痛い。痛い。痛い。痛い。


これが死ぬってこと?

死ぬってもっとさくっとじゃないの?


死にたくない。


音も光も次第に遠ざかっていく。

体の指先の感覚がしびれて、先端からすこしずつ使えなくなるのがとても怖い。


時間がたつにつれて、死ぬまでのタイムリミットがせまってくるのを感じる。

本当の死が私をわからせるように誘っていた。


そして、私は静かに息を引き取った。


いや、死んだはずだった。


なのに、なんで目を開けたら夢の中とおんなじ景色が始まってんの?

おかしいでしょ。


最悪の事態が脳裏をよぎる。

これが、異世界転生で夢の中ではないということだ。


これで死んだら次こそマジで死ぬのか?

握りしめたこぶしの中は、汗がにじんでるのが伝わってくる。


落ち着け。大丈夫。

まさか今から処刑なんて――そんなはずはないよね? ね?


兵士がいきなりドアを開ける。

「オリビア・フェルセン。馬車から出ろ。」


……はい。終わった。


神様、仏様、ご先祖様。

私はなにか変なことをいたしましたでしょうか?

なぜわたしにこのような試練を。


などとパニくって考える始末。


さて、どうしようか。

馬車の扉の外へ、一歩踏み出そうとしていた。

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