第三十八話

 さっき教えてもらったホビット国の森の中にある広い場所にりると、ホビットたちがそこに集まっていた。おそらくオキギ君が、集めたのだろう。うーん、さすがオキギ君。仕事ができるなあ。


 私は集まったホビットたちに、説明した。

「それではこれから、小麦こむぎを作ります。美味おいしい、パンという食べ物を作るためです。大丈夫、私が手本てほんを見せるから」


 と私は広場に、クワを入れた。一〇センチほどの高さの、うねを作るためだ。私はそれを、一列いちれつ作ってみた。それからまた、ホビットたちに説明した。

「こうやってクワで、うねを作るの。さあ男の子たち、クワを渡すからやってみて!」


 そうして私はホビットの男の子たちに、クワを渡した。始めは戸惑とまどっていたが私が手本を見せたので、見よう見まねでうねを作り始めた。そうして一時間程で、うねはできた。


 ハッキリ言ってグネグネと曲がったうねで、見た目は最悪だ。でも初めてやってみて、一応いちおうできたのだ。そう考えるとこれは十分、合格点だ。


 それから私は今度は、ホビットの女の子たちに小麦のたねを手渡した。

「それじゃあ、うねに小麦の種を二、三つぶづつまいてね。あ、その上に土をかぶせるのを忘れないように」


 するとホビットの女の子たちは早速さっそく、種をまいた。その上に土をかぶせるのも、忘れなかった。うんうん。上出来じょうでき、上出来。


 さてと次は水をくんだけど……、とそこまで考えた私は、あせった。こ、ここに水はあるの? 水がなきゃ、小麦は育たないよ! 私は焦りながらも、オキギ君に聞いてみた。

「オ、オキギ君! こ、このへんに水はあるかな?!」


 するとオキギ君は、冷静に答えた。

「えーと、川ならあります。僕たちはいつも、そこで水を飲んでいます」

「ホ、ホント?! やったー! ラッキー! さあさあオキギ君! その川に、連れてって!」

「はい」


 そう答えてオキギ君は、この広場の向こうの森の中に入って行った。私もそのあとを追うと、一〇メートル程離れた場所に川が流れていた。私は思わず、ガッツポーズをした。よし、これで小麦に水を撒ける!


 だが次の瞬間、私は絶望した。一〇メートル離れた川から、どうやって小麦に水を撒くの?! そんなの、無理だよー! でも私は、必死に考えた。何とか小麦に、水を撒く方法を。すると、あっさりとひらめいた。そうだ! おけに水を入れて、運んで小麦に撒けば良いんだ! 私は意気込いきごんで、オキギ君に聞いてみた。


「オ、オキギ君! この国に、桶は無い?! 水を運べるような、桶は無い?!」


 するとオキギ君は、あっさりと答えた。

「いえ、ありません。皆、水を飲むときはここにきて直接ちょくせつ飲むので」


 だああああ! そうか、忘れてた! ここは何もない、ホビットの国だった! なので私は今度こそ、絶望した。水を撒かなきゃ、小麦は育たないよ……。


 と私が絶望していると、オキギ君が聞いてきた。

「あの、リーネさん。ひょっとして、さっきまいた小麦に水を撒きたいんですか?」

「うん、そうなの。でも水を運ぶ桶が無いと、できないの……」


 するとオキギ君は、とんでもないことを言い出した。

「あの、魔法を使えば良いんじゃないでしょうか? 水の魔法を」

「え? ど、どういうこと?」

「あの。水の魔法を使えば、ここから小麦に水を撒けるんじゃないでしょうか?」


 な、なるほど! その手があったか! 私は思わず、オキギ君を抱きしめた。

「て、天才だよオキギ君! そうか、その手があったね!」


 するとオキギ君は早速、ためしてみた。小麦の種を植えた広場に向かって立ち、川に右手を入れて水の魔法をとなえた。

「水よ、が意思にしたがえ! ウオーター!」


 するとオキギ君の手元てもとの川から、たくさんの水滴すいてきが飛び出した。それは向こうの広場まで、飛んで行ったようだ。それが終わると私とオキギ君は早速、広場に向かった。するとホビットたちは、さわいでいた。


「急にここだけ雨が降った?!」

「ど、どうなってるの?!」

「不思議~」


 私が広場を確認すると、小麦の種を植えた広場一帯に水が撒かれていた。よし、いいぞ! これで小麦が育つはずだ! あと、数カ月もすれば! そして私は再び、絶望した。ダメだ! 数カ月なんて、待ってられないよ!


 でも私は、必死に考えた。どうしてもホビットたちに、美味しいパンを食べさせたかったからだ。うーん、そのためには一体、どうすればいいんだろう?……。


 私は思わず、隣にいるオキギ君を見つめた。あー、オキギ君はすごいな。まさか魔法を使って、水を撒くとは。オキギ君はホントに、頭が良いなあ。あー、私もオキギ君くらいに頭が良かったら……。


 と考えていると、ひらめいた。そうだ! 魔法だ! 植物を成長させる魔法なんて、聞いたことが無い。でもそれは、現在の話だ。ひょっとしたら古代こだい魔法なら、植物を育てる魔法があるかも!


 そこまで気づくと私は、ほうきに乗って人間の国に飛んだ。そして王立図書館の入り口にほうきを置いて、その中に飛び込んだ。絶対、植物を育てる魔法を探してやる。オキギ君も、がんばったんだ。次は私が、がんばる番だ!

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