第三十五話

 私はその小さなスペースに、りてみた。そこは海に近く、砂浜すなはまが広がっていた。なので私はだいの字になって、休むことにした。しばらくの間休んでいると、精神的な疲れが取れた。つまり、魔力が回復した。


 なので私は立ち上がり、考えた。さて、これからどうしようと。ふと目の前を見てみると、海が広がっていた。海か……。なので私は、決めた。よし、ここで釣りをしてみようと!


 そして海に向かって歩き出そうとすると、背後はいごで何か音がした。うん?  何だろうと振り返ってみると、人がうつせに倒れていた。私は思わず、って声をかけた。

「だ、大丈夫、君?! しっかりして!」


 だが何の反応も無かったので、私はその人の体をさぶった。

「ねえ、君! 起きて! しっかりして!」


 するとその人から、小さな声が聞こえた。

「お、おなかいた……」


 お腹が空いた?! つまり、何かを食べさせなきゃ! 私は体中を探してみたが、食べ物は持っていなかった。ど、どうしよう? 何か食べさせなきゃ、この人は死んじゃうかもしれないのに!


 すると私は、思い出した。そうだ! 魚を釣って食べさせれば良いんだ! なので私は海の近くに行くと竿さおを振って、釣りばりを投げ入れた。そして急いで、魔法をとなえた。

「魚たちよ、このにおいを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」


 するとすぐに、竿が引っ張られる反応があった。よし、魚がかかった!  なので私はすぐに、竿を振り上げた。すると一匹の魚が、私の後ろに落ちた。


 その魚は細長く一メートルくらいの大きさで、全身が銀色で黒い斑点はんてん模様もようが多く付いていた。私はすぐに魚の図鑑ずかんで、調べた。この魚は、食べられるかどうかを。するとこの魚はサワラと言って、食べることができるようだ。


 なので私はすぐに海と反対側にある森に入って、れ枝を集めてきた。そしてサワラに塩を振って、焼いた。私が一応いちおう先に一口ひとくち食べてみると、クセがなく淡白たんぱくで、少し甘みがあった。うん、美味おいしい。これなら倒れている人に食べさせても、大丈夫だろう。


 私は倒れている人を、仰向あおむけにした。そしてサワラを、口元に持っていった。

「さあ、食べて! この魚、美味しいから!」


 するとその人は、少しづつ食べ始めた。そしてしばらくすると食べるのを止めて、目を閉じた。どうやらお腹がいっぱいになって、眠くなったようだ。だが少しすると、その人は目を覚まして立ち上がった。

「あ、ありがとうございます。み、見知みしらぬお姉さん……」


 私はその人を、まじまじと見た。茶色のボロボロの服を着て、小柄こがらだった。私の身長は低く一メートル五〇センチくらいだが、この人はもっと低い。多分身長は、一メートルくらいだろう。


 そして私たち、人間に似た顔立かおだち。ま、まさか……。私は思い切って、聞いてみた。

「ね、ねえ君。君はもしかして、ホビットなの?」


 するとその人は、うなづいた。

「そ、そうです。ぼ、僕はホビットです……」


 な、何てことだ。するとここが、ホビットの国? いやいやいやいや、こんなの分かる訳ないよ! こんな小さなスペースが、国だなんて思わないよ! どうりでここに辿たどり着いた人が、数人しかいない訳だ。私も偶然ぐうぜん、見つけたようなモノだ……。


 私はこのホビットがお腹を空かせて倒れていたことを、思い出した。私はこの国にブリを釣りにきたのだが、このままこのホビットを放っておくことはできなかった。なのでまず、自己紹介をした。


「ねえ、君。私の名前はリーネって言うんだけど、君の名前を教えてくれるかな?」

「は、はい。ぼ、僕の名前はオキギと言います……」

「なるほど、オキギ君ね。ねえ、オキギ君。ここにいるホビットは、君だけなの?」


 するとオキギ君は、はっとした表情になった。

「あ、み、みんなにも食べさせなきゃ!」


 そしてオキギ君はサワラをかかえて、海と反対方向に走り出した。そして地面に開いた穴に向かって、叫んだ。

「お、おーい、皆! た、食べ物があるぞ!」


 あ、あんなところに穴があったんだ。気づかなかったなあ。そして私がその穴を見ていると、ゾロゾロとホビットが出てきた。人数は、九人。髪型や顔立ちからすると、男の子が四人。女の子が五人のようだ。


 そしてサワラから身をむしって、すごいいきおいで食べ始めた。きっと皆、お腹が空いていたんだろうなあ。そうして皆が食べ終わると、オキギ君は私に近寄ちかよってきた。

「あ、ありがとうございます、リーネお姉さん。皆、お腹を空かせていたので助かりました……」


 そんなオキギ君に私は、聞いてみた。

「いやいや、そんなに気にするこはないよ。こまった時は、おたがさまだよ。それよりオキギ君。ここに住んでいるホビットは、彼らで全員なの?」

「は、はい。そ、そうです……」


「なるほど。で、オキギ君。君は彼らの中の、リーダーなの? 彼らの中で一番、君が背が高いみたいだから」

「リ、リーダーですか?……。そ、そうですね。そうかも知れません……」

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