第三十話

 そうしてタキマさんのあとをついて行くと、畑があった。そこにはブドウがっていたので、私は考えた。きっとこのブドウで、昨夜さくや飲んだワインを作るんだろうと。タキマさんに確認してみたら、その通りだった。


 更に、両刃のおのよろいを作っている建物も見せてもらった。タキマさんによるとドワーフの国はどの国とも国交こっこうを持っていないので、必要なモノは全て自分たちで作るそうだ。つまり、自給自足をしているそうだ。


 そしてドワーフの国王に今日のりが終わったことを報告しに行こうとすると、ドワーフの国王が住んでいる大きな建物の前にある広場がさわがしかった。なにやら一人のドワーフと、赤い顔をしてふらふらしているドワーフが言いあらそっていた。


「お前だろう、俺の家からワインをぬすんだのは?!」

「ワ、ワイン? し、知らねえなあ? ウィ~、ヒック」

「お前が俺の家からワインを盗んだのは、一度や二度じゃねえ! だから今回も、お前が盗んだに決まっている!」

「だ、だから知らねえって言ってるだろう。ウィ~、ヒック」


 どうやらあのっぱらっているドワーフが、もう一人のドワーフの家からワインを盗んだらしい。確かに酔っぱらっているし、盗んだのは間違いなさそうだ。でもこれは、どうするんだろう? 盗んだのは間違いなさそうだが、その証拠はなさそうだ。うーん……。


 するとワインを盗まれたと言っているドワーフが、言い放った。

「ええい、それじゃあいつものように決着を着けるぞ!」


 酔っぱらっているドワーフも、それに応じた。

「おお! 望むところだ! ウィ~、ヒック」


 ワインを盗まれたと言っているドワーフは、ドワーフの国王が住んでいる大きな建物の門番もんばんに言い放った。

「聞いたでしょう! 我々は戦いで決着を着ける! だから、国王を呼んでください!」


 それを聞いた門番の一人はうなづくと、建物の中に入って行った。そして少しすると、ドワーフの国王が出てきた。

「おぬし、ワインを盗まれそうだな?」

「はい!」


「でもそいつは、盗んだことを認めていないそうだな?」

「はい!」

「うむ。それではいつも通り、戦いで決着を着けるがいい。国王のこのわしが、見届けよう」

「はい!」


 な、何てことだ。このドワーフの国ではもめ事があると、戦いで決着を着けるらしい。警察などが調べる訳でもなく、裁判をする訳でもないようだ。うーむ。さすがすべてを腕力で決めると言われる、ドワーフらしい。すると二人のドワーフは、戦いを始めた。


 だがハッキリ言って、戦いにはならなかった。ワインを盗んだと言われたドワーフは酔っぱらっているようで、足元がフラフラしている。それをワインを盗まれたと言うドワーフが、一方的に攻撃していた。


 すると酔っぱらったドワーフは攻撃を受けきれず、しりもちをついた。そこにワインを盗まれたと言うドワーフが、両刃の斧を相手のドワーフの顔面直前に振り下ろした。

「さあ、どうする?! いさぎよくワインを盗んだと認めるか?!」


 そう聞かれた相手のドワーフは、何度もコクコクと頷いた。

「み、認める! すまん! ワインを飲みたくなったが家に無くて、お前の家から盗んで飲んだんだ!」

「ふー。やはりな……」


 ワインを盗まれたと言っていたドワーフは、ドワーフの国王に頭を下げた。

「ありがとうございます、国王。おかげで、決着が着きました」


 ドワーフの国王は、頷いた。

「うむ。ならばよい」


 そうしてドワーフの国王は、再び建物の中に入って行った。私はそれを見届けると、ため息をついた。


 うわー、ドワーフの国ってすごい。こうやって、もめごとを解決するのか。まさに腕力で全てを解決する、ドワーフらしい。まあ、ワインを盗んだと認めたし、これで一件落着か……。


 そうしていると夜になり、広場にドワーフが集まった。そしてドワーフの国王は、宣言した。

「それではみなの者、うたげの始まりじゃ!」


 するとそれぞれのドワーフと私の元に、料理が運ばれてきた。シカとイノシシを、焼いたモノだ。シカはクセはほとんどなく淡白たんぱくな味わいで、イノシシもクセがなく旨味うまみくて美味おいしかった。


 そうしてシカとイノシシを味わっていると、ドワーフの国王がやってきた。

「どうだ、人間の小娘。このドワーフの国は?」

「はい。とにかく人間の国と違いすぎて、カルチャーショックを受けました。でも平和な、良い国だと思いました」


 するとドワーフの国王は、頷いた。

「うむうむ。そうか、分かってくれたか。我々ドワーフは他の国から、蛮族ばんぞくと呼ばれていることも知っておる。だが我々ドワーフには、我々のやり方がある。文化がある。我々はそれを守っているだけなのじゃ」


 なるほど、確かにそうだ。ドワーフはドワーフの文化を、守っているだけだ。そしてこうして、平和に暮らしている。それを知った私はもう、ドワーフを蛮族とは呼べない。


 そして私は、ドワーフの国王に宣言した。

「国王。私は明日、アユを釣ります。よかったら明日の宴で、食べてください」


 するとドワーフの国王は、豪快ごうかいに笑った。

「そうかそうか、明日はアユがえるか。今から、楽しみじゃ! がっはっはっはっはっ」

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