第二十八話

 するとドワーフの国王は、フンと鼻を鳴らした。

「ほう。そんな魚が美味うまいのか?」

「はい。食べていただければ分かります」


 そう言って私は森の中かられ枝を、たくさんかかえて持ってきた。そして一匹のヤマメに口から枝をして、枯れ枝を燃やしてヤマメを焼いた。ヤマメが焼き上がると私は、ドワーフの国王に差し出した。

「さあ、ドワーフの国王。これを、食べてみてください」


 ヤマメを受け取るとドワーフの国王は、それをまじまじと見た。

「ふん。魚なんぞったことは無いが、まあ食ってやろう」


 そしてヤマメを食べたドワーフの国王は、おどろいた表情になった。

「な、何じゃこれは?! う、美味いぞ!」


 そうしてドワーフの国王は、あっという間に一匹のヤマメを食べた。そして、感想を言った。

「う、美味うまかった……。魚が、こんなに美味いとは知らなかった……」


 それを聞いた私は、思わずガッツポーズをした。よっしゃー、作戦成功! ドワーフがシカやイノシシしか食べないと聞いて、私はドワーフの国王に魚を食べさせてみることにした。


 私は『絶対に魚が釣れる魔法』を覚えてから、魚を食べる機会きかいが増えた。そして、あらためて気づいた。魚は、美味おいしいと。だからシカやイノシシしか食べたことが無いドワーフの国王に食べさせたら、きっとその美味しさに驚くに違いないと考えたのだ。


 そして私は、ドワーフの国王に聞いてみた。

「どうですか、まいりましたか?」


 するとドワーフの国王は、豪快ごうかいに笑った。

「がっはっはっはっはっ! まいった! この勝負、わしの負けじゃ! がっはっはっはっはっ!」


 それを聞いた私は、すかさず聞いてみた。

「それじゃあ私がこの国でアユを釣ることを、許可していただけますか?」

「うむうむ、かまわん。好きにしろ。がっはっはっはっはっ!」


 そうしてドワーフの国王は、大声でドワーフたちに告げた。

「お前たちも食ってみろ! 美味いぞ!」


 国王にそう言われたドワーフたちもヤマメに枝を刺して、焼いて食べてみた。するとあちこちから、歓声かんせいが上がった。

「な、何じゃこりゃ?! う、美味い!」

「ひょっとすると、シカやイノシシよりも美味いぞ!」

「俺にも一口ひとくち、食わせろ!」


 と広場に集まったドワーフたちは、盛り上がった。ドワーフたちがヤマメを食べ終わると、ドワーフの国王は大きな声で告げた。

みなしゅう! うたげじゃ! 新しく魚という美味い食い物を発見したいわいの、宴じゃ!」


 するとドワーフたちは、それぞれ大きな木製のジョッキを持った。そして大きなびんから、何かの液体を入れ始めた。あれは何だろうと考えていると、私も一人のドワーフから大きな木製のジョッキを持たされて何かの液体を入れられた。


 そうして私も含めたドワーフの皆がジョッキを持つと、ドワーフの国王は宣言せんげんした。

「それじゃあ今日は、この人間の小娘のために乾杯かんぱいじゃー!」


 それをきっかけにドワーフたちは、ジョッキに入っている何かを飲み始めた。えーと、何だろう、この液体は? でもこの流れからすると、私も飲まないわけにはいかないよね……。


 なので覚悟かくごを決めて私は、ジョッキの中の液体を一口ひとくち飲んだ。するとそれは口当くちあたりがよくて深い味わいの、ワインだった。うん、これは美味しい!


 と私がワインに満足していると、ドワーフの国王がやってきた。

「どうじゃ、このワインは? これはわしら、ドワーフが作ったワインじゃ。美味いだろう?」

「はい、とっても!」

「そうじゃろう、そうじゃろう」


 そうして上機嫌じょうきげんになったドワーフの国王は、一人のドワーフに声をかけた。

「タキマ! ちょっとこい!」

「はい!」


 と一人のドワーフが、私とドワーフの国王の元にやってきた。私はそのドワーフに、見覚みおぼえがあった。私がこのドワーフの国に入った時に、不審人物ふしんじんぶつとしてドワーフの国王に会わせた人だ。へー、この人、タキマさんって言う名前なのか。


 するとドワーフの国王は、話し出した。

「人間の小娘。儂はお前に、この国でアユという魚を釣っても良いと許可を出した。だがその前に、儂らドワーフのことを知って欲しい」

「はい」

「具体的には明日、このタキマの一日を見て欲しいのじゃ」

「はい、分かりました」


 私はこのドワーフたちが、蛮族ばんぞくと呼ばれることに疑問を持ち始めていた。確かに少しあらっぽいところはあるが、ドワーフの国王は私との約束を守ってくれた。


 ドワーフの国王に『まいった』と言わせれば、この国でアユを釣ってもいいという約束を。だから私は、このドワーフたちに興味きょうみを持ち始めていた。


 なので明日、私はタキマさんの一日を見てみようと決めた。そうしてジョッキに注がれたワインをすべて飲んだ私は、そのままこの広場で眠りについた。


 次の日の朝。私は、ゆさゆさと体をゆすられて起こされた。起こしたのは、タキマさんだった。私は寝ぼけながらも、挨拶あいさつをした。

「あ、おはようございます、タキマさん……」

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