第二十五話

 そうして私とイホリさんは黒塗くろぬりの馬車で、お城に向かった。城壁じょうへきの門を抜けお城に入ると、玉座ぎょくざを目指した。そこにはやはり、私を待っていた国王がいた。

「おお、リーネ、きてくれたか。実はそなたに、頼みがあるのだ」

「はい」

「イホリから聞いたかも知れぬがドワーフの国、イワブ王国に行ってアユを釣ってきて欲しいのだ」


 うーん、やっぱりそうか……。でも私は、疑問を聞いてみた。ドワーフの国はこのヅキミ国の北にあり、海に面していない。つまりドワーフの国に行っても、魚は釣れないと思うのだ。そう聞いてみると、国王は笑顔で答えた。


「確かに、その通りだ。ドワーフの国に、海は無い。だがドワーフの国には、たくさんの豊かな川が流れている。アユというのは、川にんでいる魚なのだ」


 うーん、なるほど。そういうことか。そして私は、もう一つ聞いてみた。

「でも国王。ドワーフと言えば、蛮族ばんぞくとも言われる種族です。この仕事は、危険なのではないですか?」


 すると国王は、うなづいた。

「うむ、その通りだ。我が国とドワーフの国には、国交こっこうも無い。だが私は昔食べたアユを、もう一度食べたいのだ。だからそなたがドワーフの国から見事にアユを釣ってきたら、五○○万ゴールドを渡そうと思う」


 ご、五○○万ゴールド?! そ、それは大金だ! ぜひとも欲しい! でもそのためには、危険なドワーフの国に行かなければならない。うーむ、どうしたものか……。


 考えた私は、結論を出した。取りあえず、行ってみようと。もし無事にアユを釣れることができたら、もちろん万々歳ばんばんざい。でももし釣りなどできない状態だったら、すぐにやめて帰ってくればいいと。とにかく、ドワーフの国に行ってみようと。


 なので私は、国王に答えた。

「分かりました、国王。私はドワーフの国に、行ってきます」


 すると国王は、表情をほころばせた。

「うむうむ、楽しみに待っておるぞ」


 玉座から離れて城を出て家に帰る時、私はイホリさんに黒塗りの馬車で送ってもらったが、やはりイホリさんは心配そうだった。

「リーネさん。やはりドワーフの国に行くのは、危険だと思います。今からでも国王に、やはり行かないと言うべきなのではないでしょうか?」


 うーん、やはりイホリさんは私のことを心配しているようだ。なのでその心配をやわらげるために、私は答えた。

「いえいえ。大丈夫ですよ、イホリさん。私もちゃんと、考えています」

「え? 何を考えているのです?」


「はい。まずは私は、ドワーフの国に行きます。そしてアユを釣ることができたら、釣ってきます。でもそんなことができないほど危険な国だったら、すぐに帰ってきます」

「うーむ、なるほど……。でもリーネさん。くれぐれも、無理はしないでください」

「はい」


 そうして私は、家まで送ってもらった。家の外で竿さおと金属製のバケツを背負せおい、準備はできた。でもお母さんに、ちゃんと言わないとな……。なので私は、そう決心して家の中に入った。するとやはりお母さんは、昼食の準備をしていた。私はお母さんに、話しかけた。

「ちょっとお母さん。話があるの」


 お母さんは昼食の準備をしながら、振り返らずに聞いてきた。

「なあに? リーネ?」

「私、これからドワーフの国に行くの」


 するとお母さんは、おどろいた表情で振り返った。

「ド、ドワーフの国?! い、一体いったいどうして?!」

「国王に依頼されて、アユという魚を釣るためよ」

「そ、そうなの……。でも、ダメよ、リーネ。行っちゃいけません。ドワーフの国は、危険すぎるわ」


 やっぱり、そう言うと思った……。なので私は、説明した。取りあえず、ドワーフの国に行く。アユが釣れる状況だったら、もちろん釣る。でもそんなことができない危険な状況だったら、すぐに帰ってくると。するとお母さんは渋々しぶしぶ納得なっとくした。


「分かったわ、リーネ。ドワーフの国に、行ってらっしゃい。でも危険を感じたら、すぐに帰ってくるのよ?」

「うん、分かった! それじゃあ、行ってきまーす!」


 そうして家の外に出た私は、ほうきにまたがって魔法をとなえた。

「風の精霊せいれいよ、おどり出せ! ウインド!」


 私はまず、三〇メートルほどの高さまで上昇じょうしょうした。そしてドワーフの国がある、北を向いた。私は危険なドワーフの国に行くのに、どこかワクワクしていた。


 アユの他にもきっと、色々な魚がいるだろうからだ。そしてそれを釣って、食べてみたいと思ったからだ。なので私は、気合きあいを入れた。

「さあ、待っててね、ドワーフの国のお魚ちゃん! これから釣って、食べてあげるから!」


 そうして私は意識を、ほうきの後ろに集中した。するとほうきに乗った私は、ドワーフの国に向かって全速力で向かった。


 この国とドワーフの国の間には、広い森がある。その上をしばらく飛んでいると、広場と大きな建物が一つ見えた。お、あそこがドワーフの国かな。そう考えた私は、ゆっくりと森の中に下りた。


 エルフの国のようにバリアは張ってないだろうが、空中からの入国をふせぐ何かがあるかも知れないからだ。それを警戒けいかいした私は、森の中に下りた。

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