第二十二話

 と私があらためてヒラメを釣ろうと決意したところで、イアサさんの家での夕食は終わった。そうして「今日は小舟こぶねを貸してもらって、ありがとうございました」、「いえいえ。こちらこそアジをいただきありがとうございました」とお礼を言い合って私はホテルにもどった。


 ホテルに戻ると私はすぐに、ふかふかのベットに入った。明日は早起きして、ヒラメを釣るためだ。でもヒラメを釣ったら、このエルフの国から自分の国に帰らなければならないのか。この居心地いごこちがいい、エルフの国から。


 でも、仕方しかたが無い。私には魚を釣ってお金をもらってお城を建てるという、目標がある。だから明日、ヒラメを釣ったら残念だがこの国から自分の国に帰ろう。そう考えていると、いつの間にか眠っていた。


 次の日の朝。私はこのホテルにあるレストランで朝食をすませると、魚の図鑑ずかんでヒラメのことを調べた。するとヒラメは海底かいていにいて、砂浜すなはまから釣れるようだ。なるほど、砂浜か。それなら昨日きのう行った、砂浜に行こう。そうして私は、砂浜に向かった。


 砂浜に着くと釣りばり竿さおで投げ入れ、魔法をとなえた。

「魚たちよ、このにおいを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」


 すると少しして、竿に手ごたえがあった。お、早速さっそくきたか。ヒラメかな、ヒラメだと良いなあと思いながら私は竿を振り上げた。すると六十センチくらいの大きさのへらべったい、全体的に茶色の魚が釣れた。うん、魚の図鑑で見た通りのヒラメだ。


 よし、早速釣れたー! あとはこれを、国王に持って行くだけだ。そうすれば三○○万ゴールドは、私のモノだ! でもヒラメを見ていると、考えた。このヒラメには、三○○万ゴールドの価値があるんだろうと。つまり、とても美味おいしいんだろうなあと。


 すると私は、このヒラメを食べてみたいという欲望よくぼうに負けた。ちょっとくらいなら、良いよね。私はナイフでヒラメのシッポの方の身を切り出して、刺身さしみで食べてみた。お、美味しい……。


 シッポの方でこんなに美味しいのなら、腹部の方はもっと美味しいはずだよね。と私は腹部の身をナイフで切り出して、食べてみた。するとやはり上品じょうひんで味わい深く、美味しかった。あまりに美味しかったので、気づくと私はヒラメを半分を食べていた。


 なるほど。こんなに美味しいのなら、国王が食べたくなる気持ちも分かるなー。そこまで考えた私は、思い出した。はっ、こ、国王! し、しまった! 国王に持って行くはずのヒラメを半分、食べちゃった!


 な、何てことだ! 国王に持って行けば、三○○万ゴールドをもらえるヒラメなのにー! どうして私は美味しそうな魚を見ると、食べたくなっちゃうんだろう?……。


 と、落ち込んでいても仕方が無い。食べてしまったモノは、仕方が無い。なので私は再び魔法を使って、ヒラメを釣った。そして今度はそれを食べないように、慎重しんちょうに金属製のバケツに入れた。


 よし。今度こそ確実に、このヒラメを国王に渡そう! そう決心した私は、考えた。それはつまり、このエルフの国から自分の国に帰るということだ。そう考えると、イアサさんのことが気になった。


 イアサさんも、魔法で魚を釣ると言っていた。どうなったのかな? 気になった私は、イアサさんの小屋に行ってみた。すると小屋の前に、小舟があった。つまり今、イアサさんは小屋の中にいるということだろう。


 なので私は、小屋のドアをノックしてみた。するとすぐにドアは開けられて、笑顔のイアサさんが顔を出した。

「あ、リーネさん、おはようございます。すごいですね、『絶対に魚が釣れる魔法』というのは。今朝けさ使ってみたら、アジがたくさん釣れましたよ。でも精神的に、疲れました……」


 なので私は、注意した。

「そうなんですよ。この魔法は古代こだい魔法のせいか、魔力をたくさん使うんですよ。なので使いすぎると、精神的に疲れるんですよ」

「そうでしたか……」


 するとイアサさんは、聞いてきた。

「リーネさんも今朝、魚を釣ったんですか?」


 私は金属製のバケツからヒラメのシッポをにぎって取り出して、イアサさんに見せた。

「はい。おかげさまで国王に渡す、良いヒラメが釣れました」


 イアサさんはヒラメをまじまじと見て、つぶやいた。

「おお。これは確かに、良いヒラメです。なるほど、ヒラメも釣れるんですね。今度私も、釣ってみますよ」

「はい、是非ぜひ!」


 するとイアサさんは、再び聞いてきた。

「元々ヒラメを釣りにこの国にきたリーネさんがヒラメを釣ったということは、もう人間の国に帰ってしまうんですか?」

「はい、そうです」

「そうですか、それは残念です。せっかく、仲良くなれたのに」

「そうですね……」


 でも私は、断言だんげんした。

「でも私はまたきっと、この国にきますよ。この国は居心地がいい、良い国ですから!」


 それを聞いたイアサさんは、微笑ほほえんだ。

「きっと、またきてください。リーネさんとはもっと、色々な話をしたいので」

「はい、私もそうです。それじゃあナエミさんとノリタ君にも、よろしくお伝えください。私はまたきっと、この国にくると」


 と私はイアサさんの小屋から、ホテルに戻った。

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