第十二話

 そうしてカウンターに座っている女性職員は、金貨を数え始めた。数え終わると、私に確認してきた。

「五〇万ゴールドでございますね」

「はい、そうです」

「それでは少々、お待ちください」


 と女性職員は、ペンで書類を書き始めた。書き終わると、私に手渡した。

「どうぞ」


 私はその書類を、確認してみた。それには、『リーネ様から、五〇万ゴールドをおあずかり ヅキミ銀行』と書かれていた。うん、これでいい。これでこの書類があれば、いつでも五〇万ゴールドを引き出せる。


 そうして私は一旦いったん、家に帰ることにした。お母さんに、五〇万ゴールドは銀行に預けたと言うためだ。さーて、そしたら今日は何をしようかなー? また、アオマさんの魚屋さんに行こうかなー? そしてまたカツオを釣ってくれって頼まれたら、釣ろうか。


 そう考えながら家に帰ってみると、ドアの前に黒塗りの馬車が停まっていた。あれ、お客さんかな? でも馬車でくるお客さんって、だれだろう? と思いながらドアを開けると、家の中に見知らぬ人がいた。


 よく見てみるとその人は、精悍せいかんな顔つきで銀色のよろいを着ていた。あれ、って言うことはこの人はお城の兵士さんかな? でも、お城の兵士さんがなんでウチにいるの? と思っていると、お母さんが説明してくれた。

「リーネ。この人は、お城の兵士長へいしちょうさんなんだって。あなたに用事ようじがあって、きたんだって」


 そうして兵士長さんは、笑顔で話しかけてきた。

「やあ、探しましたよ、リーネさん。私は城の兵士長の、イホリ。よろしく」


 へ、兵士長?! 兵士長さんが、何でここに?! それに私を探してた?! ど、どうして?! と私は激しく動揺どうようしたが、とにかく頭を下げた。

「あ、あの、リーネです。よろしくお願いします……」


 するとイホリさんは、とんでもないことを言い出した。

「実はリーネさん。今日はあなたにお城にきていただきたくて、お邪魔じゃましました」


 え? お城? な、何で私がお城に呼ばれるの?! とビビっていると、イホリさんは話を続けた。

「リーネさん。あなたは、この国で一番の釣りのようですね。王立大学院の、ヘイテから聞きました。するとその話を聞いた国王が、ぜひあなたに魚を釣ってもらいたいそうです」


 な、こ、国王が私に魚を釣ってもらいたい?! ど、どうしよう……。私はもちろん、国王に会ったことは無い。でも、悪いウワサは聞かない。なので多分たぶん、国王は良い人なんだろう。だったら、話だけでも聞いてみようか。


 なので私は家の外に置いてある黒塗りの馬車にイホリさんと一緒に乗って、お城に向かった。馬車には初めて乗ったが、ガタゴトという振動が心地ここちよかった。


 お城をグルリと囲んでいる城壁じょうへきまで着くと、大きな門があった。すると門番もんばんが馬車に近づいてきて、イホリさんと話をし出した。話が終わると門番は、大きな門を開けた。そして馬車は門を通って、お城に向かった。


 お城に着くとイホリさんが馬車から降りたので、私も降りた。そして目の前にそびえたつ、お城を見上げた。お、大きい……。お城はおそらく、五階建て。そして左右に、広がっていた。


「さ、どうぞ、リーネさん」とイホリさんがうながしたので、私はイホリさんの後をついてお城に中に入った。中は白い正方形のような大理石だいりせきを積み上げて造られていて、太い柱が奥に並んでいた。

 

 その柱に沿って進んで行くと、玉座ぎょくざがあった。それには白いローブを着て金色の髪を肩まで伸ばして、かんむりを被って優し気な目をした人物が座っていた。おそらくこの人物こそが国王、ヅキミ十五世。するとイホリさんが、私を国王に紹介してくれた。

「国王。この方が、リーネさんです」


 なので私は、あわてて頭を下げた。

「は、初めまして国王。リーネです」


 すると国王は、落ち着いた声で聞いてきた。

「おお。そなたがリーネか。ウワサは聞いておる。何でもどんな魚でも釣ることができる、この国で一番の釣り師だそうだな?」


 ひ、ひええええ、お、恐れ多い。こ、ここで『はい』って言っちゃっていいのかな? でも『違う』と言ってしまうと、話が進まないような気がする。なので私は答えた。

「はい。確かに私は、この国で一番の釣り師と呼ばれています」


 私がそう答えると、国王は満足そうにうなづいた。

「なるほど、なるほど。やはりそうか」


 そして国王は、話し出した。

「この城にきてもらったのは、他でもない。ある魚を、そなたに釣って欲しいのだ」


 や、やっぱりね。そうだよね、話の流れからするとそうなるよね。と考えて私は、緊張した。それなら国王は私に一体、何の魚を釣って欲しいんだろう? すると国王は、続けた。

「実はな、リーネ。そなたに、時鮭ときしらずを釣ってもらいたいのだ」


 え? 時鮭? 何それ? 聞いたこと無いなあ……。すると国王は、説明してくれた。

「時鮭とはつまり、若いさけのことだ。漁でれる量も少なく、一日で数匹しか獲れないらしい。そして普通の鮭よりもはるかにあぶらがのっている、高級魚だ」


 な、なるほど。確かにそれは、高級魚だ。と私が納得していると、国王は話を続けた。

「以前は私も食べたものだが、最近は魚自体が獲れなくなっているせいか時鮭も獲れなくなった。そこでこの国で一番の釣り師と呼ばれるそなたに、釣ってほしいのだ」

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