第26話

スーパーに寄った。


本当にお腹は空かないが、この世界にいて二十数年、一度もスーパー行ったことがない。


のぞいてみると、現実世界と同じ食べ物が売られている。


ただ、スーパーの名前は、同じ立地にあるにもかかわらず違っていた。炒めうどんでも作ろうか。


そう思って、ちくわと豚バラ、ニラ、ねぎ、人参、キャベツ、うどんを買う。


決済方法も、二十代の時にこの世界のデパートで作らされた、クレジットカードだ。


ちゃんと自分名義のものがある。ただクレジット会社も、現実にはない。


夢の世界は自由で、やりたいことができる。


そう思いながら、家に帰ると、炒めうどんを作った。食べてみる。


うん、味がよくわかる。味覚も現実と変わらない。この世界にいると、まるでこちらが本当の現実のように思えてくる。食べることにより、一層それを強く感じられる。


炒めうどんを平らげると、食器を洗って、クロスの見本をじっくりと見ることにした。


新しい家には、統一感が欲しい。全部屋同じクロスにしよう。


あ、でもトイレは違うもののほうがいい。一時間半をかけて、クロスを二種類選ぶ。


そして、キッチンのパンフレットを見た。


夢の中で炒めうどんを作って食べたけれど、普段は作らなくて済むならインテリアみたいな感じでいいか。


でも機能面も一応重視しておこう。あとで後悔しないように。


そう思ってキッチンも慎重に選ぶ。クロスを白に薄いグリーンの花模様の入ったものにしたから、やっぱりキッチンもグリーン系にしよう。


薄く、あまり自己主張しない色。グリーンや青系は好きなのだ。


でも青ばかりだと寒々しくなるし、赤系も体に反応が起こる。


赤やオレンジを見ていると落ち着いていられなくなるのだ。


体質的なものもあるのかもしれないが、色にやはりアレルギーってあると思う。


赤はアレルギーがあると聞くが、染料の含有物質ではなく、色そのものに体が反応してしまうなにか、をくるみは持っている。


落ち着いていられるのが、寒色系だ。暖色はアウト。


キッチンもしっかり選んで、まだ午後六時前。あ、視界が揺らぎそうになる。


木津に電話をした。クロスの番号と、キッチンを伝えた。


「かしこまりました。では、後日見本はお返しください。これから設計に入りますので都築様は大船に乗ったつもりでお待ちください。出来上がりましたら、電話を致します」


よろしくお願いいたします、と言った。何度目の、「よろしくお願いいたします」だろう。この言葉は、大人になって、もう数えきれないほど使っている。


今度は本当に、視界が揺らぎ、意識が遠くなっていった。


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