第24話
夢。夢の世界にくるみはいる。
夢の中でも、実家の家は暗い。そしておなかはやはり空かない。
部屋には着替えも、現実世界と同じものがある。
そして、寝起きの感覚もする。適当に着替えると、
冷蔵庫の中を見た。冷蔵庫には何もなかった。
やっぱりこの世界ではなにも食べていないのだ。そして時刻は午前九時。
くるみはパソコンをつけて、トレードをする。
損したものはすぐに売る。そのほうが損失を最低限に抑えられる。
そして買えそうなものをすぐに買う。
利益の出たものは迷わず売る。
そんなことを繰り返し、二時間が経つ。今日の利益は、五十万といったところか。
少ないほうだ。一日やっていたいが、現実面で引っ越しが決まると、こちらの引っ越しのことも考えたくなった。家の中を見て回る。
まだ気が早いかもしれないが、引っ越す時に持って行くものを一通り頭の中でチェックしておいた。
父専用のベッド、母のベッド。リビングにあるテーブル。パソコン。箪笥。自分のベッドもだ。
そうだ、クローゼットや収納棚も、大容量にしてもらおう。そうすれば箪笥は処分できる。
そうして家から出て、ドリーム&ハウスドリームへ行った。すると笑顔で木津が迎え出る。
「都築様、いらっしゃいませ」
いらっしゃいませ、と方々に声が飛ぶ。
「土地の審査は通りました。これで、ご購入していただければ土地は都築様のものになります」
ご購入、ということはすぐに買え、ということだろう。
「お支払方法は」
「一括ということですので、現金か、お振込みをお願いいたします」
土地の値段は四千万。三十代の時に作った、現実世界にはない銀行のネットバンクから、振り込み先を聞いて、お金を振り込む。その旨を伝えると、確認してまいりますと言って、木津は応接室から出て行った。
しばらくして、戻ってくる。
「ご確認できました。これで土地は都築様のものです。土地の権利書は後日、お渡しいたしますね」
「よろしくお願いいたします」
頭を下げる。すると木津は笑顔になった。営業スマイルであることは、流石にわかる。
「では本日は、もう少し要望を細かく聞いていきたいと思います。都築様のご要望にあった設計プランを立てさせていただきますので」
はい、と頷く。バリアフリー仕様でトイレやお風呂のことはもう話してある。そして、父の車椅子のサイズを伝えた。メモをしても夢の世界に持ってこられないので、頭に叩き込んでおいた。
「ありがとうございます。サイズがわかるとこちらも正確に作れますので」
一つ一つ確認しながら、木津はメモを取っていく。
「他にご要望はございますか」
「今日思ったのですが、収納も大きいほうが便利かと思いました。箪笥がいらないほどたくさん入る、ウォークインクローゼットを両親の分と、私の分で欲しいです」
「では一階と二階に、収納スペースを取りましょう。一階部分がバリアフリーでご両親の各お部屋、二階は二部屋、都築様のお部屋にするご予定ですよね」
まあ、二階は一部屋でもいいのだけれど。二階に一部屋は寂しいので、二部屋にしておく。
両親の部屋は一階に、父専用の部屋と、母専用の部屋を設けることにした。
「そうです。全部フローリングでお願いしたいのですが」
「かしこまりました、フローリングですね」
「ええ。畳部屋だと交換しなくちゃならないので、コストがかかります。虫も湧きやすいですし」
「そうですね。確かに畳は数年おきに交換するものですので、面倒ですよね。畳を嫌うお客様も最近は増えていらっしゃいます」
やはり。和室があったほうが絶対いい、とくるみも二十代後半くらいの時までは思っていた。
実家に誰も使っていない畳部屋があるが、なくていい、と思うようになった。
使っていないのに色あせていくし、五年か六年に一度は交換する。
交換するために人が家の中に入って来るのでとても面倒臭い。
そもそも父が倒れたとき、住みながらの改築をして酷い目にあった。
朝から大工がぞろぞろと当たり前のように入って来るので、着替えを見られたりもした。
会社に行っても帰ってくるのは壊されていく家。
そして八時ころまで建築士も大工も帰らない。あの時の物凄いストレスが、トラウマとなっている。
もう、家に誰も入ってきてほしくない。今でも誰かしら来ると、気がおかしくなる。
「……都築様?」
木津に言われてハッとする。
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