第4話


えー、まさかまさかの展開である。




明け方の部屋に飛び込んできたレスラー、否、安達のおっさんにより、俺は叩き起こされたわけだが。


現在もまだお日様が出ていない。

朝の4時くらいか?


バカか?

全員バカなのか?


ろうそくをつけてまで起床する意味ってある?

日の出前だぞ?




禅の修行とやらは嫌な予感がしたので、腹が痛いとか頭が痛いとか言って、何とか回避した。

で、安達さんに連れられて暗闇の中、謎の建物に押し込まれた。


そして、俺は今、まさに北条時宗として朝の政務に臨んでいた。

というか、臨まされていた。 





立派そうな部屋に入れられて、なぜか全員の一番前、全くうれしくないお誕生日席で、座禅を組むという意味の分からない時間を過ごしている。






というか何よりもクサイ。


動物園の臭いがする。




そんな俺の前で、えらそうな人たち、全員男、たぶん俺の家来のような人たち、全員プロレスラーみたいだ、が、ペチャクチャ喋っている。





「本日、早馬にて蒙古の使節、再来たるとの報が届いておりまする」


「先の使節を斬ったはずではなかったのか?」


「それが……なにやら、また別の……」


 



どういう仕組みなのか、現代人の俺にもこの武士たちが喋っている言葉が普通に分かる。


異世界転生物のハーレム漫画に書いてあったのは正しかったのだ。

そういう知識なら無限にあるのだが、いかんせん日本史の知識がない。


ここ、どこなんだよ。



畳の間に正座させられたまま、俺は半分意識が飛びそうだった。

まず膝が痛い。

すでに神経が麻痺してきた。



こんなの意味ないだろ!




理系の研究室に正座は存在しない。

存在してはいけない。 

ゆえに、俺の繊細な両足は初めての前時代的感覚に虐げられている。


ていうか斬るって何だよ。


ケーキとかピザの話じゃないのはなんとなく分かる。

断じて分かりたくはないが。


「時宗様、ご意見を」


こっち見るなよおおおおお!



何か言わなきゃ。

北条時宗っぽいことを。 


でも無理だ。

なにより、日本史の知識が致命的に足りない。


かといって、開き直って、


「ハ~イ、おしま~い! 斬るとか斬らないとか、物騒なことやめてさ。ラブandベリーピース。もうあとは休憩しようぜ。楽にやろうぜ。鎌倉フゥ~」


とか言ったら、確実に悪霊退散と叫ばれながら俺が斬られる。





わかっているのは、蒙古がやってくるってことと、それがやばいってことだけだ。


俺は苦し紛れに口を開いた。 




 


「お前……じゃねぇ、そ、……そなたら、……まずは落ち着いて話そう。冷静にな」



 

シィン。




それだけで、周囲の家臣たちが静まった。




「……枕を」

「は」

「枕を変えるのじゃ」

「ま、くら……でございますか?」



ウッウンッと咳払いをして言う。





「布の……布のものにせよ。今朝、ちょうど、仏からの託宣があったのだ」




偉い人たちは半信半疑のようだ。

わりと俺、というかトキムネが、この中だと、若く見えるもんな。




「木枕は松の最高級品ですが、それが何か?」


「ハッ!」


安達のおっさんがカッと目を見開いた。





「もしや、木を守れということか!? 元の進行が海岸からだとしたら、そこには木々があったほうが守りやすい」




「然り」

「なんと」

「心得た」


心得ちゃったよ。



安達のおっさんは時宗様に忠誠を誓っているようで、良いように捉えてくれる。

ありがたい。




とりあえず、木枕を廃止するのには成功したようだ。

 




座禅を組ませられながら、脳裏によぎったのは四文字の言葉だった。







(生・活・改・善)




蒙古とかいろいろヤバイのは分かった。

けど、とりあえずだ。




俺の鎌倉ライフがきちんとしなければ、防衛どころではない。





つーかさっきも言ったけど、この部屋めっちゃ臭い。


男ばっかの研究室(※工学部)でも、ここまでムワッとしてなかったぞ。




ギュルルルとおなかが鳴った。

朝飯も食べずにここに連れてこられたのだ。




この会議いつ終わるんだ?

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