赤い悲雨

第48章 孤独

「タケル……つ、つらいの……むねが……ぎゅーって……いたい。」

「大丈夫だ！　しっかりしろ！」

少女の声は細く、今にも途切れそうだった。

その身体は震え、赤い雨が肌を濡らすたびに色を失っていく。

遠くで、ゴゴゴ……と地割れの音が響いた。

崩壊は、確実にこの場所へ迫っていた。

だが、シュンは動けなかった。

タケルと少女——この二人の絆に、

この世界の命運すべてが懸かっていると直感していたからだ。

「タケル……」

少女が、ゆっくりと手を伸ばした。

「ああ……」

タケルはその小さな手を、ためらわずに握りしめる。

まるで、最愛の妹の手を握るかのように。

その瞬間——

空気が鳴った。

少女とタケルの間に、見えない光が奔る。

世界が一瞬だけ静止したかと思うと、

すべての色が白く、激しく、弾けた。

（……なんだ、これは……）

タケルの意識が急速に白に染まり、

記憶の断片が泡のように浮かび上がっていく。

声、笑い、抱擁、後悔——。

それらが混ざり合い、溶けていく。

そして、やがて——“赤く染まった”。

目の前の白が、一瞬で血のような紅に変わる。

光ではなく、熱。

優しさではなく、痛み。

すべてを呑み込む孤独の色。

タケルの心臓が跳ねた。

次の瞬間、彼は——“彼女の世界”にいた。