鈍感な私と、二人の恋
凪
第1話:プロローグ
私の名前は佐藤あかり。高校2年生、普通の女子高生だと思う。朝起きて、制服に着替えて、学校へ行って、授業を受けて、部活やって、帰宅して宿題して寝る。そんな繰り返し。特別な才能もないし、目立つタイプでもない。クラスメイトからは「のんびり屋さん」って言われることが多いかな。まあ、確かに急ぎたくない性格だよ。焦ってもいいことなんてないし。
学校は、街の郊外にある共学の高校。名前は桜ヶ丘高校。古い建物だけど、校庭が広くて、春には桜が満開になるんだ。私のクラスは2年A組。席は窓際の後ろから2番目。隣の席は空いてるけど、時々誰かが座るよ。
今日もいつもの朝。目覚ましが鳴って、慌てて起きる。母親が作ってくれたお弁当をバッグに詰めて、家を出る。駅まで自転車で10分。電車に乗って、学校最寄りの駅で降りる。校門をくぐると、いつもの顔ぶれがいる。
「あかりー! おはよ!」
元気な声が飛んできた。振り返ると、クラスメイトの美咲が手を振ってる。美咲は明るくて、いつも笑顔。黒髪のポニーテールが揺れて、スポーツ万能のボーイッシュな子。バスケ部で、背が高くてスタイルいい。私の親友みたいな存在かな。一緒にいることが多いよ。
「おはよう、美咲。今日も早いね」
私は笑って手を振り返す。美咲は私の自転車を並べて歩き始める。
「だって、朝練あるんだもん。あかりは文化部? 今日は何部?」
「うん、美術部。今日はスケッチの宿題あるから、放課後すぐ行くよ」
美咲は少し頰を膨らませて、
「また美術部かあ。もっと一緒に遊ぼうよ。週末とかさ」
「いいよ。映画とか見に行こうか」
美咲の顔がぱっと明るくなる。なんか、嬉しそう。まあ、友達だし当然だよね。
校舎に入って、教室へ。私の席に着くと、もう一人の声が聞こえてきた。
「あかりさん、おはようございます」
穏やかな声。振り返ると、優花が立ってる。優花は同じクラスの子で、図書委員。黒髪ロングで、眼鏡かけてて、静かで上品な感じ。読書好きで、いつも本持ってる。美咲とは正反対のタイプだけど、私とはよく話すよ。なんか、落ち着くんだ。
「おはよう、優花。今日も本読んでるの?」
優花は少し照れたように微笑んで、持ってた文庫本を見せる。
「ええ、朝の電車で。新しい恋愛小説なんです。あかりさんも読書好きですよね? 今度おすすめ貸しますよ」
「ありがとう。楽しみにしてる」
優花は私の隣の空席に座って、ノートを広げる。美咲が後ろから声をかける。
「優花、また本かよ。もっと外で遊べば?」
優花は少し困った顔で、
「美咲さんはいつも元気ですね。私はこれでいいんです」
美咲が笑って、
「あかりはどっち派? 私のスポーツ? それとも優花の本?」
私は首を傾げて、
「え? どっちも好きだよ。美咲と走るのも楽しいし、優花と本の話するのも面白いし」
二人が同時に、なんか変な顔した気がした。でも、すぐに笑顔に戻る。私の勘違いかな。
授業が始まるチャイムが鳴る。1時間目は数学。先生の声が響く中、私は窓の外を見てぼんやりする。美咲は前の方でノート取ってる。優花は隣で真剣に聞いてる。なんか、今日も平和だな。
昼休み。弁当を広げて、三人で食べるのが最近のルーティン。美咲が私の弁当のおかずを狙ってくる。
「あかりの卵焼き、いつも美味しそう! 一口ちょうだい」
「いいよ。でも、美咲の唐揚げも分けて」
優花は静かに自分のサンドイッチを食べて、
「あかりさんのお弁当、彩りがきれいですね。私、料理下手なんです」
「優花のサンドイッチもおしゃれだよ。次は一緒に作ろうか」
優花の目が少し輝く。美咲が割り込んで、
「料理なら私も! あかりと三人でピクニックとかどう?」
「いいね。秋の文化祭の後とか」
文化祭か。もうすぐだよね。クラスでメイドカフェやるって決まって、私も手伝うことになった。美咲は実行委員で張り切ってるし、優花はポスター描いてる。楽しみだな。
放課後。美術部へ行く前に、美咲が呼び止める。
「あかり、明日体育祭の練習あるんだけど、一緒に見に来てよ」
「うん、行けたらね」
優花も、
「あかりさん、図書室で待ってます。新刊入ったんです」
「わかった。順番にね」
二人が少し睨み合ってる? いや、気のせいだ。友達同士、仲良しだよ。
家に帰って、ベッドに寝転がる。今日も疲れたけど、楽しい一日だった。美咲の笑顔、優花の優しい声。なんか、心が温かくなる。明日も学校行きたいな。
この世界では、結婚の形が少し違うって聞いたことある。同意があれば、一夫多妻制が認められてるんだっけ。同性婚も普通。ニュースで見たよ。でも、私には関係ないかな。まだ高校生だし、恋愛とか考えたことない。友達が大事だよ。
でも、最近美咲と優花が、私の周りをうろうろしてる気がする。二人とも、なんかいつもより近くにいる。私の鈍感さのせいかな。まあ、いいや。明日もみんなで笑おう。
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