23話~村は街道より疲れます~
村に着くと、馬鹿達――海賊B・Cと僧侶田吾作は、山賊から剥ぎ取った備品を売りに行った。
スティアナと海賊Aは酒場に入り、またもや酒を飲み始める。
(結局ずっと飲んでるだけじゃん!!)
エナと獣Aは村の様子を見て回ることにした。
村人は皆、楽しそうに暮らしていた。
犯罪に巻き込まれたくないなら、村や街を出なければ良い――。
スティアナのこの主張は、どうやらフォーランド国内では本当に浸透しているようだ。
一緒にいるとどうしようもない王妃だが、国民の信頼や決めた事への徹底ぶりは確かに感じられる。
もしかしたら、王としてはジールド・ルーンのダレオスよりも優秀なのだろうか――。
規律や道徳に関して誰よりも自他ともに厳しく、厳粛に政治を務めている本当の主の姿を思い浮かべながら、エナは“本当の正しさ”について考えさせられた。
それほどまでに、フォーランドの国民は笑顔だった。
(……馬鹿ばっかだけど。)
ふいに、怪我をしたまま遊んでいる子どもが目についた。
「その怪我、どうしたんですか?」
エナはその子どもに近づいて話しかける。
「さっき、暴れ牛に体当たりされた! 痛かった!!」
子どもは笑いながら答え、周囲の子どもたちも腹を抱えて「ドジだ!」と大笑いする。
(いや……暴れ牛に体当たりって、大事じゃん!)
エナは男の子の体に触れ、治癒魔法を施した。
「ををを!!」
みるみるうちに傷が癒えていく様子に、子どもたちは沸いた。
「ねぇちゃんすげぇ!! 俺もここ怪我してるんだ!!」
「私もこの傷、跡が残りそうなの!!」
「俺もここ痛い!!」
次々とエナに群がり、治癒を求める子どもたち。
エナは一瞬怯んだが、一人ずつ丁寧に手当てをしてやった。
「ただでこんなことしたら損じゃないですか? 金取れますよ?」
獣Aが心配そうに言う。
「私はジハドに仕える聖騎士です。ジハドの加護を借りるのに、お金を要求するわけにはいきません」
きっぱりと答えるエナに、獣Aは納得したように頷き、手伝い始めた。
* * *
日が暮れ始め、エナと獣Aは共に宿への帰路に着く。
「結局最後まで付き合わせてしまいましたね。ありがとうございます」
エナはニコリと微笑んで礼を言う。
「い……いや、ねぇちゃんがいつもお人よし過ぎるから……」
獣Aは照れながら答えた。
エナ自身も疲れはしたが、聖騎士らしい仕事ができた満足感があった。
* * *
カランカラン。
宿屋の扉を開けると――そこには大勢の男たちが溢れ返っていた。
「おお! エナ!! お前どうしてくれんだ!!」
宿屋で酒を飲んでいた海賊Aが、遠くからエナに気づき声を上げた。
(何があったの!?)
人込みをかき分け、海賊Aの元へと急ぐ。
「どうしたんですか? なんでこんなに人が……?」
「あ……あなたがエナ様ですか!?」
近くにいた青年が食い気味に声を掛けてきた。
「はい。そうですが……」
「俺、初めてなんですけど……癒してもらっても良いですか?」
(癒す?)
「どこを怪我されているんですか?」
エナは怪訝そうに尋ねる。
「えっ? いや……あの、“させてくれる”って……」
「……何をですか?」
狼狽する青年と混乱するエナの間に、海賊Bが割って入った。
「あほか!! てめぇら! ふざけんなよ!! エナは俺が目を付けてんだ!!」
(はぁ!?)
「そんなわけでお願いしやす! 俺からやらせてくだせぇ!!」
海賊Bがエナに振り返る。
「はぁ!? 何を言ってるんですか!?」
「村のガキどもが“エナに癒してもらった”って言ってたらしくてよ……」
「それは傷の手当ですよ!! 村人含めて馬鹿なんですか!?」
「馬鹿もここまで来ると哀れよの」
その声とともに、場の空気が一変した。
スティアナの機嫌が、明らかに悪い。
次の瞬間、宿屋全体を圧するような威圧感が広がった。
普段は飄々と酒を飲んでいる女王が、本気で怒ったときの“重み”――その存在感は、王としての威厳そのものだった。
「お主らの傷を純粋に心配してくれる娘の気持ちを、くだらぬ下心で踏みつぶして……それが人の道として正しいと思っておるのか?」
低い声に、宿中の男たちが息を呑む。
視線を向けられるだけで心臓を掴まれるような恐怖に駆られ、誰も動けなかった。
「お主ら全員、いね!! 酒がまずくなるわ!! 海賊Bも、今夜は宿に足を踏み入れるでない!!」
怒声が轟いた瞬間、男たちは一斉に蜘蛛の子を散らすように宿屋から逃げ出していった。
静寂。
クイッ――ゴクッ、ゴクッ。
スティアナは黙って杯を傾けた。
ただそれだけで、先ほどまでの怒気がまるで幻のように掻き消える。
「いいか、エナ。この村の連中に今後、治癒をすることは許さぬ」
「えっ……でも、スティル。怪我している人も――」
「ダメじゃ!!」
スティアナは振り返りざま、エナを射抜くように睨んだ。
その迫力は、普段どれだけ豪放に振る舞っていても、この女が確かに“王”であると実感させるに十分だった。
「海賊A! エナが勝手にこの村のアホ共を治癒せんよう、しっかり見張っておけ!」
「了解しやした!」
それだけ言い残し、スティアナは足音高く二階へ上がっていった。
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読んで頂き、ありがとうございます!
今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。
これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、
「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。
もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、
ぜひ応援・コメント・レビューで教えてください!
それが次の執筆の大きな力になります✨
※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです💦
そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!
(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)
この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。
(時間は固定ではありません)
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